4-16-2.二階堂式攻略法【陣野卓磨】
「見た所、蘇我殿はギャルゲーで言う委員長キャラタイプ。こまめに積極性と真面目さをアピールして自身の印象を少しずつ植え付けて行くでござる。ああいうタイプは意外と推しに弱いでござる」
「そうそう、でも、そう言うタイプってツンデレの可能性もあるから、厳しい態度をを取られてもめげちゃ駄目なんだな。わかる? 烏丸氏」
「ああ、参考になるぜ……」
友惟は、モテない二人からの助言と言えるのかどうかよく分からない言葉を真に受けて、学生手帳にメモしている。
そんな中、注文の品が砂河さんによって運ばれテーブルの上に並べられていく。それを見て三人は恋愛話を聞かれまいとしてなのかどうなのか分からないが、話題を変えようとする。
「そ、それはそうと、烏丸殿。成功した暁には例の……」
「そうなんだな。僕等はそれが一番の……」
「ああ、分かってるさ。何枚でもくれてやるよ。ただ、成功したらだからな。成功したら」
「「イヤッホゥ!」」
二階堂と三島は約束のトレーディングカードのレアカードをもらえると思い、共に喜びの声を上げている。
まだ告白が成功するとも限らないというのにだ。
なんというか、こういう恋愛事情の話を聞いていると、ちっぽけに思えてくる。俺がモテるモテないとか言う話は置いておいて、俺が持っている屍霊の悩みに比べたら本当にちっぽけだ。こっちは命がかかっている。こっちもゲームの知識やなんやらで解決して欲しいものだ。
かと言って、とても相談できることではないと分かってはいる。
「いやぁしかし、我々の中から彼女持ちが出てくるとは、誓いの日には微塵も思わなかったでござるよ……なにかこう、複雑な思いが胸を駆け巡るでござるな。感慨深いでござる」
二階堂は、さっきは俺に「何言ってんの」見たいな顔をしてた癖に、もう成功した気でいやがる。
本当に、こいつは……。
「で、結局OKもらったって何のOKもらったんだよ」
そう言い、一人情報が遅れていて膨れている俺に気が付いた友惟は、手帳を閉じて内ポケットにしまいこんだ。
「このチケット……」
それは先程、友惟が握り締めてくしゃくしゃになったチケットであった。枚数は二枚。それは最近流行のアニメ映画のものであった。
「おい、アニメ映画なんて誘ったのかよ。蘇我さんアニメとか好きなのか?」
蘇我とは同じクラスになった事も無いし、親しいわけでもないが、蘇我がアニメ好きなんて話は聞いたことは無かった。しかも、蘇我は風紀委員で、確か部活は陸上部だった気がする。アニメとは程遠い存在なのではないだろうか。
アニ研である兵藤と親しそうに話している所も見た事は無いし、俺の知っている情報からでは蘇我がアニメが好きであるという答えは導き出せなかった。
「……は駄目だったんだがな」
駄目だったのかよ。と心の中でツッコミつつも次の言葉を待つ。
「チケットを見せる前に、今度の日曜日空いてるか、空いているんだったらどこか遊びに行かないかって聞いたんだ」
「えらいストレートに聞いたんだな……」
「モゴモゴしてても仕方ないだろ。こういう時はきっぱりハッキリ言った方がいいんだよ。な、二階堂」
そんな問いかけに二階堂が偉そうに腕を組みつつ首を縦にふる。これも二階堂の助言かよ……。まぁ、他の助言よりはマシな助言だとは思うが。
「でも、蘇我さんは出かける用事があるという。そこで俺は諦めた。いや、諦めかけたんだ。しかし……!」
「しかし?」
「そうか、そりゃ残念だ。じゃあまた今度……と言って去ろうとした時だ。蘇我さんがな、蘇我さんが『暇だったら私の行く所へ一緒に行くか、何人かといった方が楽しいだろうし』と言ってくれたんだ! こんな奇跡ってあるか!? 向こうから誘ってくれたんだぞ!」
「お、おう、そりゃ良かったな……」
友惟の気迫に圧されて気の利いた返事が出来ない。前の二人は既に知っているのかして、ウンウンと頷いている。
「で、どこに行くんだよ。買い物か何かか?」
「いや、隣県にある火徒潟人形博物館と言う所だ。蘇我さん、そう言う人形を見るのが好きらしい。蘇我さんがその施設の名前を言った時、俺は微塵も興味が無いにも拘らず『俺もそこへ行って見たかったんだ!』って言っちまったね……。卓磨も知ってるだろ。火徒潟人形博物館」
火徒潟人形博物館……。
一応知っている場所ではある。それは、去年オカルト研究部が合宿に行った町にあり、部の皆もそれで去年そこへ行ったらしい。
紅谷と金田がなにやら事件に巻き込まれたとかぼやいていたのもチラッと聞こえて記憶に残っている。二人の仲があまりよくなくなったのもその件からだそうなのだが……。当事、いつの間にか入部させられていた俺を哀れんでオカ研に所属していた友惟と、現在もズルズルと部員として残っている俺は、サボって行かなかったので、その事件の内情等はよく知らなかった。
だが、その件の話の流れで火徒潟人形博物館の名前だけは知っているのだ・




