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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第四章・暗闇の中のチキンレース
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4-16-1.喫茶おわこんにて【陣野卓磨】

「よし、よし、よぉし! おまいら、俺はやった……! やったぞ!」


 俺の隣で何かのチケットの様なものを拳で握り締めガッツポーズを決める友惟。横では二階堂がしたり顔で頷いている。


 今俺達は、学園近くの喫茶おわこんに来ている。幸い他に客はおらず、友惟の叫びにより俺達が辱めを受ける事は無かった。いるのは俺達とマスター、それとバイトの砂河さんだけだ。


「二階堂、お前の助言で助かったぜ!」


 他に客がいないとはいえ、この大声である。マスターも砂河さんも何事かとこちらに視線を向けている。やはり前言撤回、恥ずかしい事この上ない。


「いやいや、霧雨学園随一のギャルゲマスター、円盤攻略の貴公子を自称する拙者にかかればリアルの女子おなご等イチコロよ。親友の頼みとあらば、攻略法の基礎を教えるなど朝飯前」


「さすが、二階堂氏なんだな! でも、それなら何で二階堂氏には彼女が……はうっ」


 当然の如く沸いて来る疑問を口にした三島の鳩尾に二階堂の裏拳がめり込む。そしてそのまま言葉も無く机に突っ伏し崩れ落ちる三島。


「三島殿……なんだかんだ言ってもな……世の中は……顔なんでござるよ……アニメ化されたギャルゲの主人公も不細工はおらんし、濃いヲタク属性をもつ主人公も九割九部九厘おらんだろ……そういう事なんでござるよ。その無い物を持ち合わせている拙者は……」


 遠い目で窓の外を眺める二階堂。


「でも、ネット小説がアニメ化されたやつとか見てたらオタクっぽい主人公多くね?」


 友惟が鋭い突っ込みを入れるも、二階堂は首を横に振る。


「アレはもう世界が違うでござる。現実世界を見よ。現実に近い世界観を見よ。今、拙者は烏丸殿と言う主人公を巧みに操りリアルギャルゲ攻略をしているのでござるよ……」


「に、二階堂氏……」


 窓から差し込む日の光に反射した二階堂の眼鏡の隙間から、キラリと光るものが流れ落ちる。

 それに同調するように微妙に身体を震わせ二階堂を見つめる三島。


「三島殿っ」


「二階堂氏っ!」


 三島は勢いよく起き上がり、二階堂は勢いよく振り返り、お互いを慰めあうかのようにガシッと抱き合い支えあう。三島の眼鏡は熱で曇っており、とても臭そうだ。って、俺は一体何を見せられているんだ。


「友惟、お前もしかして……蘇我さんにOK貰ったのか……!?」


 そんな二人を横目に、隣にいる友惟に声をかける。

 多分、三人の雰囲気ふんいきからするとそうなのだろう。多分というか、最近の話の流れからするとそれしかない。


「ああ、OKだった……こんなに嬉しい日が……俺の学園生活に日差しが差し込む日が来るなんて……!」


 ついに俺達の中から彼女持ちが出来てしまったのか……。マジカルメイド喫茶の誓いなんてもうどうでもいい。親友を祝福してやらねば。


「よかったな、友惟! これでお前もついに彼女持ちか……。何だか感極まるな!」


 だが、俺のその言葉に三人の表情が一変した。「何言ってんの?」と言いたげな顔である。それに対して訳が分からず三人の顔を見る俺に、二階堂が指を立てて横に振る。


「チッチッチ、チチチのチ。陣野殿は早とちりでござるな。急がば回れという言葉を知らんでござるか?」


「え? 蘇我さんに告ったんじゃないの?」


「あのなぁ、卓磨君。そんなに話をした事も無い相手からいきなり告られてよ、あのクソ真面目な蘇我さんがOK出すと思うか?」


 友惟がやれやれといった感じで俺に顔を向ける。


「そうでござるぞ陣野殿。ギャルゲでもいきなり彼女なんて展開そうそうないでござろう。積み重ねと言うものが大事なんでござるよ」


 二階堂もウンウンと頷いている。

 俺はあれから貴駒峠の屍霊の事で頭がいっぱいで、こいつ等の話についていけていなかったようだ。


「ただただ告って振られたら、心に傷が出来るだけじゃんよ。それなら甘い思い出の一つや二つでも作っておいてから振られる方がいい思い出になるじゃないか。未練は残るかも知れんが」


「そうでござるぞ。物事には順序という物があるでござる。まずは攻略対象の性格や行動タイプを見極め、どういう行動を取ってお近づきになっていくかを考える事が重要でござる。フラグも立てずにいきなり告白するという選択肢が出てくるギャルゲーを見た事があるのかねっ!?」


 いや、見た事ない……というか、そんなにギャルゲー大量にやってないからなんとも言えんが、ゲームとリアルを一緒にするなと……言いたいが、言える雰囲気ふんいきではなかった。


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[気になる点] 今なら顔でも一応なんとかできるじゃない?金があれば...
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