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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第四章・暗闇の中のチキンレース
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4-9-5.老婆の姿【陣野卓磨】

「あ、ああ、そうだよ、そうなんだよ。そっちの方が大事だ」


 俺がそう言うと、影姫は机の上にあった栗饅頭の包みを手に取りながら視線を向けてくる。

 今から大事な話をしようと言う時に食い意地のはった奴だ。話に集中できんのか。


「大事、と言うと何か変わったものでも見たのか?」


「変わった……と言えば変わったものかな。何か、いつも見るのとちょっと違ってさ……」


 それから俺は自分が貰った巾着から見た風景を影姫に説明した。

 最初はなんら変哲の無い親子の会話であったが、最後に老婆の姿が徐々に恐ろしいものに変わっていった事を。それを聞いて影姫は栗饅頭を頬張りながら少し黙り込み考え込む仕草を見せる。そしてそれを飲み込み終えると、再び俺の方へと顔を向けた。


「それは……あくまで私の勘だが、やはりその老婆は、屍霊になってどこかで暗躍しているのではないか? 人知れず人を殺しているか……または、殺人と取れない状態で人を殺しているか」


 それは俺が思った事とほぼ同じ意見であった。

 やはり記憶を見るという事はこの老婆が何処かで屍霊化して人を殺めているのだろう。


「やっぱ影姫もそう思うか……でも、近所でそれっぽい事は全く起きてないだろ? だからさ、どうなのかなーって思うわけよ」


「僅かな可能性でも潰しておかねば、もしそうだった時に死人が増えるだけだぞ。とりあえずその柏木の祖母が何時何処でどうやって亡くなったかくらいは調べておいた方がいい気がするな。亡くなったのが近所で無いとすれば、亡くなったその土地で事を起こしている事も考えられる」


「柏木さんのお祖母さんか……柏木さんと連絡を取るとなると、燕に聞かないと分からないな。仮に聞けたとしても、柏木さんの生まれる前の話っぽいから、下手したら柏木さんの親御さんに聞かないといけないかもしれないし」


「燕か……ある程度の事はもう把握しているだろうが、卓磨と違って月紅石も持っておらんし、なるべく巻き込みたくはないのだが」


「柏木さんも絡んでるし、あいつが知ったら絶対に首突っ込んでくるぞ」


「困ったな……何とか秘密裏に連絡が取れないものか……卓磨、燕のスマホを盗み見できないのか? 連絡先を入手するくらいは……」


「あのなぁ、他人のスマホを許可も無く盗み見るなんて重罪も重罪だぞ。そんな事をして見つかったら俺が燕にボコボコにされるわ。仮にだぞ、影姫が盗み見たとしてもだ。今後一切口聞いてもらえなくなるかも知れんぞ」


「そ、そんなにスマホというものは重要な物なのか……弱ったな……なら、学校の連絡網とか無いのか?」


 珍しく影姫が少し動揺している。

 よほど燕に嫌われたくないらしく見える。


「最近は個人情報云々で連絡網が無いんだよ。俺が小学生くらいの時はまだあったけど、最近は皆スマホ持ってるから、SNSで一斉に連絡付くんで連絡網の作成自体ウチの学園はやってないみたいだ。固定電話がない家庭だってあるみたいだしな」


「いや、でもスマホを持ってない生徒も一人や二人くらい……これはそこそこ高価な物だと千太郎が言っていたぞ。だから無くしたり壊したりあまりしないでくれと……」


「仮に生徒にそういうのがいたとしても、親まで持ってないって事は無いだろ」


「うむぅ……」


 そう話をしていると、爺さんが玄関の方から居間へと戻ってきた。

 そういえば俺が記憶を見ていた時間も含めると十分か十五分くらいは経っているだろうか。お客さんが来ていた様だが、誰と何を長話をしていたのだろうか。


「卓磨、影姫。二人にお客さんじゃ」


 それを聞いて影姫と顔を見合わせる。こんな時間に誰だろうか。


 俺は記憶を見た後のだるい身体に気合を入れて立ち上がり、影姫と共に玄関へ向かった。

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