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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第四章・暗闇の中のチキンレース
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4-8-3.澪の思いつき【陣野燕】

「でもね、ほら、この間の件もあったし本当に首なしライダーが出たんじゃないかと思っちゃうわけよ! あの話はどうせ信じてもらえないだろうと思うのもあるし、警察っぽい人達から口止めされてるのもあるから誰にも言ってないけど、こういう噂話聞くとさー、どーしても本当にいるんじゃないかと思っちゃう様になってしまった訳ですな」


 頬杖をつきながらどこか残念そうにする澪。テレビ等の報道とかもテロって事になってるから、確かにあの時の話をしても信じてくれる人はいないだろう。むしろ、そんな事を話そうものなら妄想癖の変人扱いされる恐れだってある。

 しかし「警察っぽい人達」と言うのは誰だろうか。お爺ちゃんにはあまり余計な事は言わないようにと言われたが、私の所にはそんな人達は来ていない。「警察」ではなく「警察っぽい」と言うのが少し引っかかった。


「正直、私もあれからそういう所はあるけど……」


「でしょー!? 見てみたいって思わない!?」


 私の返事を聞いて澪は鼻息荒く身を乗り出してきた。


「いや、あの峠は走り屋とかいて結構危ないらしいし、私達二人だけじゃ……それにこの間みたいに危険な目に会いたくないし……」


 私の次の返事を聞いて落胆し肩を落とす澪。本気で見に行くつもりだったのだろうか。


「だよねぇ……こんなこと親にも頼めないし、他に頼むって言っても、こんなしょーもない事で車出してくれる人もいないだろうし、知らない人に頼んで危ない輩に絡まれたらそれこそ、だよねぇ……若いって罪よね」


「うちもお爺ちゃんが免許返納しちゃって、車運転できる人いないしね……」


 若いって罪の使い所を間違えているような気もするが、それはスルーしておこう。

 なんにせよ諦めてはくれた様だ。私だってあの時は危険な思いをして死ぬ思いだったのだ。澪にだってあんな危険な思いをもうして欲しくない。

 もう、友達を亡くすのは嫌なのだ……。


 そして、時計を見るともう十六時を過ぎていた。

 朝から遊びに来てお昼までご馳走になり可愛いプレゼントまで貰ってしまった。これ以上長居して夕食まで何て世話をかけることは出来ない。とてもじゃないが気が引ける。


「あ、もうこんな時間か……私、買い物して帰らないといけないからそろそろ……」


「え? どうせなら夕食もって思ったけど……ああ。大変だねぇ、ぐうたら兄さんしかいないとやる事多そうで。あ、でもお姉さんが増えたって事はちょっとは楽になった?」


「あはは、お兄ちゃんは最近はそうでもないんだけどね。手伝ってくれるのはいいんだけど失敗が多くて。影姉かげねぇも機械の操作が危うくてちょっと、って時もあるけどね。この間も電機ケトルをヤカンと勘違いして火にかけたり、卵を電子レンジに入れて爆発させてたし……」


「それは機械以前に知識の問題では……。でも、しっかり調教しなきゃだめよー? 聞いてる話だけじゃ、しっかりしてるの燕とお爺さんだけなんだからー」


「うん、肝に銘じておくよ」


 そして玄関で別れの挨拶を終える。自転車に乗り商店街へ向かう中、澪の言っていた首なしライダーの話が頭に引っかかった。もし、実在して人を襲っているのであれば、またお兄ちゃんと影姉はそれを倒すのに向かうのだろうか。


 もしそうなのだとしたら、何の力にもなれない自分がもどかしくなった。

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