4-0-0.プロローグ
体が動かない。俺はいったいどのくらいここにいるのだろうか。
ここがどこかも分からない。真っ暗な闇に包まれていて何も見えない。
目が覚めても、すぐに眠りに入る。その繰り返しだ。眠っている間は何日、何ヶ月、何年経ったのかすらも分からない。
[動かないのではない。動かせないのだ]
突如かけられた聞いた事の無い女の子の声。
誰かの声を聴くなんて何時ぶりだろうか。俺を包んでいた孤独感と言う皮が剥がれて行く様な気がした。
誰……誰だ。
[お前の体はもうない……焼かれ燃えて、燃え尽きて……灰になった]
体はない……そう言われればそんな気がする。手の感覚が無い。足の感覚も無い。心臓が鼓動を刻んでいると言う事すら感じられない。
そう、今の俺は頭しかない。だからここに転がり長い時を眠って過ごしてきたのだ。
[……お前をそんな姿にした奴が憎いか?]
憎い?
それはないな……。俺が悪いのは誰が見ても明白だ。
[違う……対向車さえ飛び出してこなければお主は死なずに済んだ。心の奥底ではそう思っているのだろう]
思っていない。
悪いのは……。
[だからこそ此処に魂が留まり続けている……。相手が憎い、殺してやりたいほど憎い。そうなのだろう? 心にも無い正義感を……かざすな]
飛び出したのは対向車じゃない、俺の方だ……。
トンネルを抜けた先は危ないと分かっていたのに。あの時俺が減速して注意を払っていれば……。
[……だが、そのせいでお前は愛する妹が成長する姿を見届けることができなくなった]
それは……。俺のせいだから……仕方ない……。
[悔しいか? 寂しいか?]
後悔はある……。
寂しくないと言えば嘘になる………………。
[そうだろう、寂しいだろう、辛いだろう]
何が言いたいんだ………………。
第一お前、誰なんだよ。消えろよ……。話しかけんな。眠らせてくれ……。
いずれ俺と言う存在が全て消えてしまうまで、そっとしておいてくれ……。
[……いつまでもウジウジと殻に篭るのが本当に望みなのか? 黄泉返るがよい。そして、自分の夢を奪った人間に、この世界に復讐を……]
………………うるせぇっつってんだよ! 黙れよクソガキが!
マジで誰だ、誰なんだよ。折角大人しく寝てたのに……。このまま寝かせ続けてくれよ……。
[……]
テメェ見たいな訳の分からん奴の言いなりになると思ってんのかよ……。
[コレハ 死屍たる亡者ドモへの 命 令 だ]
うぐ……。
[サ カ ラ ウ コ トハ ユ ル サ ヌ]




