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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第1部・第三章・鬼の少女と赤マント
310/613

3-30-2.ショッピングモールへ……【陣野燕】

 門宮市へ向かう為、今は電車に揺られて移動している。

 澪はカバンから巾着袋を取り出して、更にその中から飴玉を取り出し口に放り込んだ。口の中で飴玉を転がし歯に当たるカチカチという音がこちらまで少し聞こえてくる。


「その袋、可愛いね」


「ん? これ?」


 澪が私の視線を辿り巾着袋を再び手にする。


 赤い生地に小さな花柄の模様があしらわれている巾着袋。かなり使い込まれている様で、所々汚れてはいるものの、作りがしっかりしているのか、見た感じほころびなどは無い。


「うん。手作り?」


「んだよ。私のお婆ちゃんの手作り。こういうの作るの得意だったんだって」


 私は自分のお婆ちゃんの顔を直接見た記憶は無い。

 見たのだろうけど幼かった為に記憶に残っていないのだ。見た事があるのは写真だけ。

 お爺ちゃんもお婆ちゃんの話はあまりしないので、どういうお婆ちゃんだったのかはよく知らない。だから、こういうお婆ちゃんがいるというのは少し羨ましくも感じる。


「へー、いいなぁ」


「もう死んじゃってるけどね」


「あっ……」


 そうか。「得意だった」という事は過去形だしそういう事になるのか。

 そこまで気が回らなかった。


「いいのいいの。気にしないで。交通事故で死んだらしいんだけど、死んだのって私が生まれてすぐだったらしいし、私も直接会った事ないのよ。だから、いないからっつって、そこまで悲しいとかいう気持ちもないし。見た事あるのは仏間に飾ってある写真だけだから」


 その点は私と同じだった。澪はそう言って笑顔を見せると巾着袋をカバンの中へとしまう。


「うん……なんかごめん」


「もー、何しんみりしてんのよ。気にしないでって言ってんでしょ。それにそんな顔、これからお笑いのイベント見に行く人間の顔じゃないでしょー?」


「あはは、ごめん」


 そんな他愛も無い会話をしながら電車に揺られる。その後電車を二度乗り換え、目的地へと向かう。電車の中では普段と変わらぬ会話。車窓から外を見ると晴れた空が目に入る。

 こんなに天気の良い日だ。折角誘ってくれたんだし、暗い顔なんてしてられないな。頭を駆け巡る悩みの数々は置いておいて、今日は楽しもう。


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