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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第1部・第三章・鬼の少女と赤マント
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3-28-2.蓮美の作戦【陣野卓磨】

「なんだ、よく見えん」


「近辺の詳細地図だ。何か印が打たれている」


 俺がそう言うと影姫は「そうか」と一言呟くと身を戻し、前に視線を戻す。見えない分、説明が足りない分は俺が喋れと言う事だろうか。


「ここ、ここが最初に発生したウチの場所ね」


 そう言って蓮美は、地図の一番端にある赤い印を指差す。

 蓮美が刺している場所は場所は霧雨市黒槌(くろつち)と言う場所だ。その地域の地図上に大きな敷地面積の一角がある。これが或谷邸だろう。俺が行った時は夕暮れで日も沈んでいた為、暗くて全体的な広さはよく分からなかったが、地図上で見るとかなりの面積である。


「そして、この順々に印してある赤い丸が、ウチの組員が両面鬼人を目撃した場所」


 パシッ、パシッとそれぞれの丸を順番に指で押さえていく。刺された地図上の場所はどこも特徴があるといえない場所だった。

 ただ一つ、その中でも覚えのある場所は、霧雨市霧ヶ谷付近……。俺の家もこの近くであるが、鴫野しぎの宅の……呪いの家あった場所。

 燕と爺さんが襲われた場所だ。まさか、或谷組の組員は二人が襲われている所を見ていたのに助けようとしなかっただろうか。もしそうだとしたらと思うと、俺としても或谷組のやり方と言う物に不信感が募る。


「……その先にある、赤い印の直線上から、ちょっとずれてる青い印は?」


「そう、これなのよ。これが問題。この赤い丸の間は、両面鬼人は一切人を襲ってないのよ。ウチの殺された三人は別としてね」


「積極的に人を襲わない屍霊とは珍しいな」


 前から影姫の声が聞こえてきた。蓮美もその言葉に頷いている。


「でも、隣市の門宮市に入ってから、急に道を逸れてこの青い丸の場所で人を殺し始めた。こっちの青丸は門宮市議会議員である飯塚という人物の家、で、こっちは同じく議員の宮崎って奴の家。二人の家は比較的近い位置にあるから連続で襲われたみたい」


 一切人を襲ってない? 本当か? だったら、爺さんと燕の件はなんだったって言うんだ?

 蓮美はそれぞれの場所での両面鬼人の行動を詳しく知らされていないのだろうか。日和坂は蓮美に対して忠誠心があるようだが、もしかしたら他の組員はあまり蓮美を仕事の上司として信頼を置いていないのではないだろうか。


 とりあえずはその疑問は飲み込み、今話している内容についての疑問をぶつける事にする。


「……何で議員ばっかり」


 俺がそう言うと蓮美はこちらを見る。


「今朝、あんたの助言もあったもんだから、で天正寺の家に行ったの。天正寺の家はここ」


 指された地図の場所は、赤い印や青い印からかなり離れている。


「天正寺も門宮市の市議会議員なのは知ってるよね」


「ああ、前に門宮に行った時にポスターとか見た事ある」


「そこで話を聞いてる途中に電話がかかってきて飯塚が殺されたことが分かったの。その後、宮崎からも電話がかかってきて、話によると宮崎はかろうじて逃げ延びたみたいだけど、このままほっとけば殺されるのも時間の問題。今の所それ以外に襲われた人がいるって報告を受けていない所を見ると、両面鬼人は確実にターゲットを絞って殺人を行っているわ」


「なるほどな。まだ怨霊本人の恨みが根強く残っているのか」


 前から影姫の頷く声が聞こえる。


 なら、なぜ燕と爺さんは襲われたのだろうか。偶然なのか。偶然進路上に立っていたから襲われたというのだろうか。もしかしたら、見つかっていないだけで他にも襲われた人がいるのかもしれない。

 赤マントの被害も広がっている為、それと混同されて隠れてしまっている恐れもあるんじゃないだろうか。


 影姫も爺さんと燕が襲われたことは勿論知っている。だが、それに関して何か突っ込む様子はない。

 影姫はどう考えているんだろうか。


「それでよ。この後も何件か情報入ってたんだけど、進むルートは赤印直線上に戻ってる。で、襲われた人物と辿ってるルートから、大体の目的地は割り出せた。両面鬼人が最終的に目指している場所は恐らくココ」


 蓮美が地図の一箇所に指を当てる。そこには他の文字よりも太い文字で門宮市役所とかかれいた。


「天正寺と宮崎の二人をまとめて殺すなら、こんなおあつらえ向きな場所は無いわ。天正寺も今日昼から議会があるって言ってた。何の議会かは知らないけど、こんな状況でも出席しないといけないようなよっぽど大事な議題なのかね。両面鬼人が進む速度からしても、議会の時間にドンピシャガッチンコしちゃうわけよ。例えターゲットを絞って移動しているって言っても、昼間の一般人も大勢いる場所で屍霊が姿を現して暴れたらどうなるか分かるよね」


「巻き添えを食らって大勢死ぬな。だが、それが私達に何の関係がある。両面鬼人に対して警備を敷いて一時消滅させるなり封印するなりするのは貴様等の仕事だろう。人数だけはアホみたいにいるんだから、それくらいは自分達でしたらどうなんだ」


 大勢死ぬ……。目玉狩りの時の食事処の大量殺人を思い出す。俺は直接見たわけではないが、報道などによるとよほど凄惨な現場だったらしい。そのような事件がまた起きてしまうのか……。


「それがそう言う訳にも行かないのよ。親父が石使い連れて出張行っちゃってるし、それに……」


「それに何だ」


「赤マントも門宮市役所周辺をうろうろしてるらしいのよ。さすがに厄災級二体相手は私等でもねーって。ねぇ、ひよひよ」


「へぃ……」


 そう返事する日和坂の声は何か納得できないというような雰囲気ふんいきを感じる。


「それで私達に、貴様等が両面鬼人の相手を間、赤マントが出現した場合の相手をさせようという魂胆か」


「そゆことー!」


 蓮美が元気よく笑顔で返事を返す。だが、その笑顔の奥には何か物悲しい物を俺は感じた。


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