表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第1部・第三章・鬼の少女と赤マント
303/613

3-28-1.対面【陣野卓磨】

 日和坂ひよりざかが運転する車の中、影姫は助手席に、俺は後部座席で蓮美はすみの隣に座っている。


「どこヘ向かっている。話を聞くだけじゃなかったのか。話だけだったら車を走らせる必要は無いだろう」


 影姫はムスっとした口調で、誰と視線を合わせるでもなく文句を言っている。蓮美はすみはというと、まだ俺の隣で呑気に眠りこけている。


「校門前で停まったままでお前ら車に乗せてたら、誰かに警察マッポ呼ばれたら面倒だろ。お嬢が説明するっつってたから起きるまで待てよ。目的地まではまだ距離があるしな」


 走る車が向かう先が何処かなのかはまだ知らされていない。ただ、見覚えのある道ではない為、或谷邸ではないようだ。自分のスマホも家に忘れてしまったので、GPSで位置を追う事も出来ない。

 今度は何処に連れて行かれるのだろうかと不安がこみ上げてくる。危ない場所でなければいいが。


「おい、おいっ」


 小声で声を掛けながら、車のドアにもたれかかり眠りこける蓮美を拳骨で軽く小突いてみる。

 すると、それに気がついた様でうっすらと目を開けた。そのままその視線は俺の顔をしばらく見る。


「ん……? あっ!」


 そして、何かに気がついた様に車内を見回すと、俺と影姫が車に乗っているのに気がついた様で、慌てて上体を起き上がらせる。そしてハンカチを取り出し口元を拭う。


「ひよひよ! 何で起こしてくれなかったのよ! 涎たらしてみっともないじゃない!!」


 顔を赤くし、なぜかこちらを指差しそう言う。涎をたらしていたのは俺じゃないお前だ。


「いえ、何回か声は掛けたんですが、その……お目覚めになられなくて。すいやせん。どの道、行く先はわかってやすんで車は向かわせてやす」


 運転をしつつ、頭をへこへこと下げる日和坂。

 その様子を溜息を付きつつ面倒臭そうに影姫が眺めている。


「で、お嬢様がお目覚めになられて、早速で悪いんだが、話というのを聞かせてもらっていいか」


 影姫が助手席から後部座席を覗きこんでいる。

 影姫と蓮美が顔を合わせるのは恐らく初めてじゃないだろうか。偶然かどうか分からないが、今年度に入ってから今まで、校内で蓮美を見かけたことも無かったからだ。

 もしかしたら何処かで視界には入ったかもしれないが、その存在を知らない俺達は気にも留めていなかったのかもしれない。どちらにせよ、俺と行動を共にする事が多い影姫も恐らくそうではないかと思う。


「あ、あんたが影姫ね! 思ったよりチンチクリンね……あんまり強そうじゃない……写真で見たのと随分違うような……」


 この発言からしても、蓮美も影姫を見るのは初めてのようだ。蓮美は或谷あるたにの家で影姫の容姿は聞いているだろうから、見た事があるなら気がついているはず。


「初対面の相手に対して失礼な奴だな……貴様の方から呼びつけておいて、悪態つく前に先にそちらが名を名乗るのが礼儀じゃないのか」


「あっ! 私は或谷蓮美あるたにはすみよ! 霧雨学園一年だから、アンタの一年後輩になるわね。運転してるのはウチの構成員の日和坂政太郎ひよりざかまさたろうで、隣に居るのが陣野……下の名前なんだっけ?」


 俺まで紹介しなくていい。というか、日和坂も知っている。どうやら寝起きで少しボケているらしい。


「日和坂と卓磨は知っている。で、蓮美。なぜ私達を呼び出した。まさか両面鬼人りょうめんきじん討伐の手伝いをしてくれなんて言うんじゃないだろうな」


 俺もそれが心配である。

 蓮美に目を向けると腕を組み影姫の方を見ている。あの屍霊をやるのなら、できるだけ自分達だけでやってほしい。少しでも多くの面倒ごとに巻き込まれるのはごめんである。


「うーん、結果的にはそうなっちゃうかもしれないけど、厳密には違うかなぁ」


「何が違うんだ。私達がそれに関わるというのなら、そういう事だろう」


「まぁまぁ、とりあえずこれ見てよ」


 そう言うと蓮美は、ポケットから地図を取り出し膝の上に広げる。

 影姫は助手席から後部座席を覗き込んではいるものの、シートベルトで体が固定されている為に、蓮美の膝上にある地図はよく見えないだろう。

 地図には所々赤いペンでしるしが打たれている。それは線で繋ぐと一本の線になるように順々にうたれていた。ただ、途中から若干じゃっかん横にれて青いペンに変わり二箇所印が打たれている。


 恐らく今回の件に関する何らかの地図だろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ