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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第1部・第三章・鬼の少女と赤マント
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3-27-4.バチバチ【陣野卓磨】

「何してる卓磨。行くぞ」


「あ、ああ。すいません。じゃあ俺達はこれで……」


 両面鬼人りょうめんきじんについて手伝わされるかもしれないと言う事を聞いていた俺は、なるべく関わりたくないという気持ちもあり、影姫の言葉に従いその場を去ろうとする。

 チラリと見ると、ポカンと口をあける日和坂。


「お、おう、そうか。嫌ならしかたねぇな……」


 そして、にこやかに俺達を見送る日和坂。何事もなく帰れそうだ。


 ………。


「じゃねぇよ!! おいおいおい! ちょっと待てい! 拒否権はねぇつってんだろうが! しょうもねぇ漫才してる場合じゃねぇのはテメェらも分かってんだろ!」


 俺は影姫の後を追いかけ……ようとしたが、日和坂に腕をつかまれ引き止められてしまった。


 日和坂のその声に反応して、既に五メートル程先まで進んで行っていた影姫が足を止めた。

 そして振り向き、腕をつかまれどうしようもなくなっている俺を見ると、面倒臭そうに溜息を付く。再びこちらに近づいてくると、俺の腕を掴む日和坂の手をパシッっと払った。


「どうせ屍霊退治の話だろう? 両面鬼人の出現は、卓磨が関わっていたとはいえ明らかに貴様等或谷組の失態だろう。自分らの不始末位は自分等で何とかすると思っていたが、ここまで腑抜ふぬけたのか貴様等は。鬼の家系が聞いて呆れるぞ」


 それを聞く日和坂の顔は少しピクピクとひくついていた。

 口元は笑っているが、額には血管が浮き出ており、心の中は笑って居なさそうだ。見ていると、基本的に日和坂は或谷家の誰かを叩くと怒りが沸いてくるようだ。

 そして日和坂は心を落ち着かせるかのように一息深呼吸を入れる。


「今日はこらえる。堪えてやるよ……。お嬢がお待ちだしな。だがな、俺の事は何と言っても構わねぇが、組長御家族の事を悪く言うのだけは許さねぇ。次から気ぃつけろや」


 強めの口調で話しかける日和坂に対し、影姫はそ知らぬ顔をしている。よほどに或谷組の事が嫌いのようだ。


「とにかくだ、話を聞くだけでも聞け。お嬢はあっちの車の中で待ってっから。ここで俺と長話しても、他の生徒に先公とかを呼び出されたら面倒だろ。早くしろ。それとも、チンタラチンタラ時間引き延ばして被害者増やしてぇのか?」


 日和坂の指差す先には黒塗りの高級車が停めてあった。

 振り返り校舎側を見ると体育教師が職員用玄関から出てくる所であった。既に他の生徒に呼ばれていたようだ。

 他の生徒からすれば、白スーツに丸グラサンのいかつい顔をした日和坂が、校門前で挙動不審に辺りを物色している姿など、不審者以外の何者でもないだろう。それに影姫も気がついた様で、再び溜息を付く。


「分かった。話を聞くだけだぞ」


「最初っから素直にそうしてりゃ良いんだよ。余計な時間食わせやがって」


「それが人に物を頼む態度か?」


「……つくづく俺を怒らせてぇみてぇだな……影姫さんよ……」


 二人の眼と眼の間に火花が散る。このままではどちらからか手が出てしまいそうだ。

 教師も近づいてくるし、ここでもたもたと小競り合いをしている時間はない。


「日和坂さん、早く行きましょう。先生が来てしまいますのでっ」


「……チッ」


 日和坂は機嫌が悪そうに舌打ちするも、状況が状況なので俺の言葉に従ってくれた。

 影姫も同等に、日和坂を一瞥すると、無言で足早に車へと歩を進める。


 そして俺達は車へと乗り込んだ。中には涎をたらして眠りこける蓮美。服装は制服ではなく地味目な外出用と思わしき私服を着ている。

 学校を休んだのだろうか。よほど疲れているのか、俺達が乗り込み、ドアを勢いよく閉めても蓮美の目が覚める事は無かった。

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