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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第1部・第三章・鬼の少女と赤マント
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3-18-1.探しに行くから【陣野燕】

「お爺ちゃん、私、お兄ちゃん探してくる」


 最近帰りが遅いと思っていたけど、時計を見ると今日はいつにも増して帰りが遅い上に連絡がない。

 学校であった変質者の通達の事もあるし、あまり好きではない兄であるとは言え心配だけが頭の中に募っていく。


 時間はもう二十時を過ぎている。お兄ちゃんも授業や部活が終わったらも早く帰って外出はしないようにって言われているはずなのに。

 最近部活に顔を出していると言うのはチラッと聞いたけど、それにしても遅すぎる。影姉かげねぇが何か警察と協力しているとか言う話もしてたし、何か事件に巻き込まれたんじゃ……。

 あの時は気分的にも人と話をするような気分ではなかったし、話の内容が内容だったので真剣に聞いていなかったが、今になってそれも心配になってくる。


「燕、今は学校から外出をしないように言われてるんじゃないのか」


「でも……電話しても出ないし……」


「まぁ、それは心配じゃが、卓磨ももう子供じゃないんじゃし、心配せんでももう戻ってくるじゃろ」


 そう言うお爺ちゃんは、その言葉通り心配している素振りはあまりない。

 何か知ってて隠しているんじゃないだろうか。影姉だって、帰りの遅いお兄ちゃんの事は何も気にしていない様子だし……。また、私だけのけ者にされてるんじゃ……。そんな別の心配も沸きあがってくる。


「私は子供だって言う事?」


 ぼそっとそう呟いた私を見て、お爺ちゃんが困った顔をしている。

 困らせたいわけじゃないし、私はまだ中学に上がったばかりで、自分がまだ子供と言われてもおかしくない年齢だって言うのは分かってる。でも、こう、年齢だけで区別されると胸がもやもやする。


「何か知ってるの? どこ行ってるとか、何してるとか」


「いや……んー、しかし今日はいつもより遅いな。どこで道草をくっとるんじゃろうか……」


「知ってるよね、お爺ちゃん。お兄ちゃんが何処で何してるか知っててとぼけてるよね?」


「いや、まぁ、なんというか……部活が長引いてるんじゃないのか?」


 私から視線を逸らし、とぼけたようにのらりくらりとかわそうとするその仕草は、見ていて苛立ちが感じられる。また、私だけ除け者。また、私だけ知らない。そんな事を思うと、苛立ち以上に怒りすら沸いてくる。


「もういいよ! ……私、探しにいくから! せめてお兄ちゃんが行きそうな場所くらい見てくる!」


「こ、これ! 待ちなさい! 心配だったら警察にでも……!」


「じゃあ警察に連絡しといてよ! それでも私行くから!」


 後ろでお爺ちゃんの慌てる声がする。お兄ちゃんはムカつくし、休日は時折臭い時もあるけど、家族だ。

 大切な家族に何かあったら嫌だ。お父さんもお母さんももういないんだ。これ以上、家族が減るのは嫌なんだ。寂しい思いをするのは嫌なんだ。


「分かった分かった! 一人でこの時間に出歩くのは危険じゃ! わしも一緒に行くから! 影姫! 留守を頼むぞ! もしかしたら何か連絡があるかも知れん! 何かあったらワシの携帯に電話してくれ。電話の使い方は分かるよな!?」


 慌てふためくおじいちゃんの言葉に「馬鹿にするな! 電話の使い方くらい分かるわ!」と返事をする影姉の声が奥から聞こえてきた。


 その返事を聞くと、お爺ちゃんは慌しく玄関を出る私の後を追いかけてきた。


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