表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第1部・第三章・鬼の少女と赤マント
279/613

3-17-4.毒刀・鬼蜘蛛について【陣野卓磨】

 改めて学校指定である緑色のジャージ姿になった影姫を前に話を聞く。

 先程影姫が出現させた鞘はと言うと机の上に置かれている。見覚えのある鞘、影姫が現れる前に俺が前に居間で触れた刀の鞘だ。中に納まっていた刀はアレ以来見た事がない。


中頭なかがみにどこまで聞いたのかは知らんが、一応説明しておく。私の『毒刀どくとう鬼蜘蛛おにぐも』は私の体内にある。鬼蜘蛛自身は私の月紅石能力ではないというのと、ある呪いが原因で、刀人かたなびとである私本来の刀と融合していて今は自在に取り出すという事が出来ない。だが、鞘は違うようで、融合して私が刀の本体となっているせいか、鞘も私を包む着物となってくれる訳だ。どういう理屈で、どういう原理かは知らんがな」


「へぇ……でも便利だな。着物になったり鞘になったり。別の物にもなるんじゃないか?」


 そう言って影姫を見ると、俺の間の抜けた返事に少しムッとしながらも俺の質問をスルーして話を続ける。


「普段私から出る弧を描く刀は刀人かたなびとの力でもあり、今は鬼蜘蛛の力の影響も少し受けている。契約者の力の加減で二本しか出せないが、本来ならば刀は同時に八本までは出せるはずだ。つまり、私の……というより鬼蜘蛛の月紅石は常に少し解放しっぱなしの様な状態なのだ。鬼蜘蛛自体は私の能力でもないので、今の状態で私が力を吸われる事もないが、鬼蜘蛛本来の力を使う事となれば私もそれなりに体力を削られる」


「その、鬼蜘蛛本来の月紅石の力ってどうやったら使えるんだよ。それがあれば戦況もかなり変わるんじゃないのか?」


 俺が理事長に聞いた能力であればかなりどころの物ではない。屍霊の治癒再生を防げるのだから、少しずつでも追い詰めていける。目玉狩りや赤いチャンチャンコで屍霊の体が再生する場面は何度も見た。それを妨害できるのだから有利にならないはずが無い。


「どうやったら使えるか。そう、それなんだ」


 言葉尻強くそう言うと、俺の方に視線を移す。


「私が卓磨やその血縁者から力を借りていることは分かっているな?」


「そうなの?」


 再び出た俺の真の抜けた返事に影姫が返る。


「言ってなかったか? 鞘の他に卓磨や血縁者が近くにいないとダメだと言った気はするが……まぁ、どっちでもいい。私は主に卓磨の力量によって力が制限されるのだ」


 最近色々ありすぎて、正直聞いたか聞いてないか覚えていない部分も多い。現実離れした出来事が続いているせいか、俺は植物状態で夢を見続けているんじゃないかと現実逃避してしまいたい気分になる事もある。


「私が契約によって卓磨から力を借りている以上、卓磨が月紅石を使えないとなると、私も月紅石の刀である鬼蜘蛛本来の力を使えんのだ。この世界で契約と言う制限を設けられている以上、共鳴する力がなければ鬼蜘蛛が出せん。そして、私が鬼蜘蛛を使える時間は、契約者が月紅石を使用できる時間に比例する、と分析している」


「そうか……まぁ、鬼蜘蛛についてはなんとなく分かった。その鬼蜘蛛ってのが影姫自身の持つ月紅石の能力でないのなら、影姫は別に月紅石の能力とかあるの?」


「……わからん。基本的に月紅石は一人で一つの能力しか扱えんみたいだからな。私自身の能力ではないとはいえ、鬼蜘蛛の能力を扱っているせいか、別の月紅石で試してみても、私自身の能力が発現することはなかった……と思う。ただ、どちらにせよ私が月紅石の能力を制限されて本来の力を出せないのは事実だ」


「そうなのか……」


 そう答える影姫の顔には何処か陰りがあった。力を出し切れない事に対する苛立ちや不安等といったものではない。どこか、嘘をついているように感じた。

 確か、理事長もそれに関しては何かを隠していたような言動が見て取れた。


「出せんと言う事は戦う力が大幅に削られている状態で常に戦わざるを得ないと言う事だ。それがどういう意味か分かるな」


 影姫のその言葉に、今まで殺されていった人達の顔が頭に過ぎる。俺が知っている人達だけじゃない。見た事もあったこともない人達も俺の知らない所で屍霊によって命を奪われているのだ。


「無関係な死人が沢山出る……」


「そういう事だ。それに、目玉狩りや赤いチャンチャンコ、それと赤い部屋は私の経験から言っても最下級の屍霊だ。今後、赤マントクラスの頑丈なヤツが出没するとなると対応が難しくなる。今回の両面鬼人のようにな」


 影姫の厳しい目が俺に突き刺さった。そう言われて両面鬼人の醜い姿が頭の中に浮かんでくる。そうなると俺がなんとしてでも使えるようになるしかないじゃないか。

 

「それに、今後対峙するのは屍霊だけとも限らんからな……」


「どういうこと?」


「言葉通りだ」


 影姫はそう言うと、それ以上その事に関して語る事はなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ