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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第1部・第三章・鬼の少女と赤マント
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3-16-3.命名・両面鬼人【陣野卓磨】

「屍霊の行き先の事なんだけど」


「なんか知ってんの?」


 あからさまに不機嫌そうで俺は当てにならないという仕草の蓮美に対し、俺は伊刈の虐めの件についての経緯を説明した。

 それと、先程の怨霊が伊刈の両親で、伊刈早苗が虐めで自殺した事により両親も自殺したと。そして、先程屍霊が最後に発していたあの言葉。


「あー、あれか……」


 蓮美が何か分かったかのように宙を見上げる。


門宮市かどみやし市議会議員の天正寺明憲てんしょうじあきのりですね」


 日和坂も運転しながら一人の人物の名前を出した。若干聞いて見た事のある名前だった。

 友惟ともただと隣市のゲームショップに買い物に行った時に、駅に設置された選挙掲示板で見た事があるような気がする。天正寺恭子の父親である市議会議員の名前だ。


「あいつ、いろいろ黒い噂あるもんね。大方その虐めの真相を隠す為にチンピラ雇って両親脅して自殺に追い込んだんじゃないの。前にもアイツの尻拭いみたいな悪霊退治の依頼を受けた事あったしさぁ」


「可能性は、ありますね」


「となるとー、それに絡んだ奴等を殺りに行ったのかもしれないね」


「天正寺議員の家には、すぐに何人か見張りに回させます。派閥の人間も危険ですね、そちらも……あと、何箇所か議員の行きそうな場所も見張らせておきやしょう。夜だから家にはいるとは思いやすが念の為」


「あ、いいよ、運転に集中して。そっちの方は私がヤスの方に連絡しとくから。ひよひよは先輩を送り終わって家に戻ったら、天正寺の家の方に連絡して明日にでも約束を取り付けといてね」


「組長がいないのに会ってくれやすかね。あの議員さん、相当ひねくれてるみてぇですし」


「それを会えるようにセッティングするのがあんたの腕の見せ所でしょ」


 そう言うと蓮美はスマホを取り出し自宅の方に連絡を取り始めた。二人とも、俺から天正寺の名前を聞いて何かしら察して納得しているようだった。そんなに裏のある人物なのか。

 確かに、学園の校長達に虐めに関する事は一切ないというような会見をさせるくらいだ。何かしらはやっているのだろう。

 理事長はあの事を知っていたのだろうか……。知っていたのだとしたら少し軽蔑してしまうかもしれない。


 天正寺の父親に関しては、選挙掲示板の写真を見た感じは真面目そうな堅物といった顔だったと記憶しているが、政治家とはそんなものなのだろうか。

 まだ選挙権も無く、政治に全く興味が無い俺にはわからない事だった。


「しっかし、親子が揃いも揃って虐めと自殺なんてねぇ。子は親の鏡って言ったもんだね。しかも自殺した方がこれまた揃いも揃って屍霊になるなんて、何の因果かね。私には考えられないわ」


 連絡を終えた蓮見は、少し寂しそうに外を眺める。窓の外はもう真っ暗で景色という景色も見えない。


 車内が少し静寂に包まれる。聞こえてくるのは車を走らせるエンジンの音。時折車内を照らす街灯で見え隠れする蓮美のその寂しげな顔は、何を考えているのか分からなかった。


「あっ、そうだ」


 そのまま暫く走行していると、蓮美が何かを思いついたかのように手を叩いた。


「やっと思い出したよー。両面宿儺りょうめんすくなだよ両面宿儺りょうめんすくな。私もチラッと見たけど、あの屍霊の姿『両面宿儺りょうめんすくな』にそっくりだったわね。呼び名はさしずめ、そっから取って『両面鬼人りょうめんきじん』かな?」


「へぃ……ぴったりで」


 名前を考えていたのか……。名前なんか決めてる場合かよ。ただでさえ赤マントが近辺に出没してるって言うのに両面鬼人とか……。

 同時に二体の屍霊。だが、赤いチャンチャンコと赤い部屋の時とは違う。言うなれば今回のは二体ともいわゆるパワー系だ。でも、俺には戦う力が無いし、物の記憶を見ようにも、その〝物〟に関して、何を見ればいいのか皆目見当もつかない。どうすりゃいいんだよ……。

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