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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第1部・第三章・鬼の少女と赤マント
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3-8-2.昼休憩【陣野卓磨】

「それはそうと陣野殿、最近付き合いが悪いのではござらんか?」


 昼休憩、昼食の時間に二階堂が突然切り出してきた。例の掲示板の一件は友惟が説明してくれた事もあり、最近は教室で二階堂や三島と昼食を共にしている。


「そうだよ陣野氏、いつもやってるゲームも最近ログインしてないみたいだし。何か他に楽しい事でも見つけたのかい?」


 三島もその話に乗っかり俺に質問をしてくる。

 目玉狩りにディスプレイを壊されて気持ちが萎えてしまったというのもあるにはあるのだが、正直、ここ最近は屍霊だのなんだのでネットゲームにログインしている時間などなかったのだ。だからと言ってそれをそのままこの二人に説明するわけにもいかない。

 ちらっと影姫の方を見ると、こちらの会話が聞こえていたようで、一瞬だけ目が合った。一瞬だが感じ取れた。余計な事は言うなという釘を刺すような視線。それは俺も分かっているが、どう説明すればいいのやら。


「い、いや、そう言う訳じゃないんだが……そう、なんというか、最近無性に眠くてな。家に帰ったら布団が俺を呼ぶんだ。今の俺にとって最大の親友は布団になってしまっている……」


 そう言うと、二人は真顔で俺の方を見ながら無言で弁当を口に運んでいる。あまり信用されていない様だ。


「陣野殿は授業中でも結構うつらうつらと居眠りをしているように見受けられるが、それでもまだ眠いのかね。一度病院へ行って見てもらったほうがいいんじゃないか。無呼吸症候群とか色々あるようだし」


「そうだよ陣野氏」


 二人に心配されるとは思っていなかった。それほどまでに俺がゲームにログインしないと言う事が想像の範疇を超えていると言う事なのか。


「流石にこの若さでそれは無いと……思いたいが。まぁ、忠告はありがたく受け取っとくよ」


 俺がそう言うと、二階堂は人差し指を突きたてて眼鏡をクイッとかけなおし、箸を置いた。


「近々公開予定のネトゲのクローズドαテストプレイヤーにも四人揃ってめでたく当選したというのに、この若さでネトゲを引退するとか言い出すんじゃなかろうかと。それが一番の心配でござるよ」


 そこまで言うと、二階堂の声が小さくなり、少し顔をこちらに寄せてきた。


「そうなんだな。パーティープレイありきのテスト枠で当選したんだから、陣野氏に抜けられると困るんだな」


 三島も箸を止めてこちらを見やる。俺としてもそのゲームは楽しみではあるのだが、αテストが開始された時に、果たして俺はゲームをしていられるのだろうか。


「いや、俺だってアレは楽しみにしてるから」


「そうでござるか? あの、影姫殿が転校してきてから様子がおかしくなったと推測しておるでござるが、やはり彼女が何か関係あるのではないのか? 二人で神妙な顔をして並んでいる事もしばしば見かけるでござるし。かと言って、恋仲であると言う風な雰囲気ふんいきにも見えないし」


 二階堂の推察力は高いようだ。三島はというと、大盛り弁当の白飯を貪り食っていてその辺は気にしていないようだが……。


「あ、ああ。それは特に……今日の晩飯は何にするとか、そう言う話してるだけだよ。うち、両親いないし、影姫が料理得意みたいだから……」


「そうでござるか? それならいいのだが……何でもするとは言えないが、さっきも言った通り手伝える事があれば一応言ってくれよ? 拙者等は数少ない友達なんだから」


「そうなんだな。この前みたいに気軽に頼みごとをしてくれていいんだよ。先日のポスターみたいに報酬が出るなら尚更だよ。デュフフ」


 三島も箸を止めそう言ってくれる。そう、友惟も含めていい奴等なんだこいつ等は。だからこそ、尚更三人を屍霊退治なんていう危険な事に巻き込みたくは無い。目玉狩りの時は他に思い当たる人物がいなかったので三島に頼ってしまったが、今後はよく考えてから行動しないと。


「ああ、ありがとう。二人に心配されるなんて思ってもいなか……」


「三島殿! そのから揚げ旨そうでござるな! 一つ譲ってはくれまいか!?」


「い、嫌なんだな! このから揚げは僕の血となり肉になるんだな!」


「ぬぅ、ならこの春巻きと交換ではいかがかね!?」


「……春巻き二個と、から揚げ一個なら」


 三島が弁当箱の中の一番小さなから揚げを箸でつまみあげる。


「ぐぬぬ、足元をみおってからに! それなら残っている中で一番大きなから揚げを差し出すのが筋というものであろうに!」


 俺の礼の言葉も余所に二人の話題は既に移り変わっていた。


 ……。


 そう、こいつ等だけじゃない。

 本当は一人でも被害者を出しちゃ駄目なんだ。

 それを阻止するための力が、俺と影姫にはあるのだから。

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