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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第1部・第三章・鬼の少女と赤マント
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3-7-2.卓磨と【霧竜守影姫】

「卓磨、お前は家の事はそんなにしないのか? 確かにあまり家の用事をしている所をあまり見かけないが」


 燕との話が終わり卓磨の部屋に戻ると、卓磨もベッドの上でスマホを弄りながら背中を向けて横になってふてくされていた。なんだかんだ言っても、心の片隅では卓磨は自分が悪いとは思っていないのだろう。

 考えを改めさせるのは難しい事だとは思うが……その姿を見るとこういう所は兄妹なのだなと思ってしまう。


「いや、俺だって色々しようとしたさ。ただ……なんて言うかな。自分で言うのも嫌なんだが、ドンくさいって言うか要領悪いって言うか……ちょいちょいミスっちまうんだよ。それで燕に『もういいからあっち行ってて!』とか言われるとさ。それを間に受けてそのままズルズルとやらなくなっちまうんだよ」


 やはりか。誰かに言われて、が言い訳。出来るようになる努力をしようとしない。

 月紅石に関してもそうだ。身につけてはいるものの、私や千太郎に使い方すら聞いてこない。空想話の様に、あるとき突然ピンチに光り輝いて助けてくれるとでも思っているのだろうか。私は今後、卓磨と一緒にいて目的を果たす事が出来るのだろうか。


「そこは慣れだろう。誰だって最初から何でも出来るわけじゃないし、その言い分だと燕のせいだと言う風にも取れる。そう言われても自分がすべき事はやるべきなんじゃないのか」


「そんなこと分かってるさ。でもなぁ……」


「喧嘩したからといって、意固地になっていると余計に仲が悪化するだけだぞ。出来る出来ないは別として、やる気があるという意志を見せる事が大切だ。今すぐにやれと言いたいところだが時間も時間だしやる事もないだろう。明日からでもやれる事はやるんだ。分からない事があれば私が教えてやる」


「そんなもんかねぇ……」


 ゴロリと転がったかと思うとその勢いで起き上がる。


「燕もまだ中学生になったばかりなんだ。やりたい事も沢山あるだろう。普段からゲームだの漫画だのアニメだの、やりたい事ばかりしていて家の事をしない兄を見ていれば、幼心の中にも鬱憤が溜まって腹に据えかねるのも当然の事だ。皆で家の事は分担して、皆で皆の時間を作りあわないと……」


「うーーん」


 卓磨は私が喋っているのを余所に立ち上がり、ドアの方へ歩き出した。


「おい、話の途中だぞ。どこへ行くんだ」


「風呂掃除だよ。今日は俺の当番。俺が唯一完璧に近くこなせる家事。言う前に行動だろ? とりあえずやることはやらんとな」


 そう言うとそのまま卓磨は頭を掻きながら肩を落として部屋を出て行った。説教中に逃げ出す様にげんなりした顔で行くさまを見ると、私の言っている事が分かっているのか分かっていないのか……。


 ドアが閉まる直前、卓磨が少し顔を覗かせる。


「影姫」


「なんだ?」


「お前、説教してる時、オバハンくさいな」


「うるさい! そういう一言が余計だと言っているんだ! 一言言う前に、よく心の中で考えてからモノを言え! だから結果として駄目な方向に物事が動くんだ! 行くならさっさと行け!!」


 おばさんなんて言う年齢はとうに過ぎてはいるが、改めて言われると腹がたつ。どうしてああいう余計な事を軽々と言えるものか。


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