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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第1部・第三章・鬼の少女と赤マント
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3-1-2.月道商店街理髪店放火事件【】

 九年前、霧雨市と隣接する門宮市かどみやしで、連続児童殺害事件が世間で騒がれていた頃、霧雨市の月道商店街で一つの店が燃えた。


 その店は理髪店であった。

 店主は家族思いで、気さくでいい人だと近所でも好かれていた。その延焼はすさまじく隣家へも燃え移り二件先の商店の壁をも丸焦げにした。火元である理髪店は当然の如く全焼。


 幸いな事に延焼した他の商店の住人は無事だったものの、火元となった理髪店の上にあった住居で暮らしていた一家が焼け焦げた遺体で見つかった。一階で過ごしていた父親も、足が悪かったせいか、家族を助けようとしたのか階段があったであろう場所の焼け焦げた跡で遺体として見つかった。


 家族は皆丸焦げで、人物の特定には困難を要した。


 亡くなった家族の名前は、店主の一色正造いっしきしょうぞう、妻の一色真白いっしきましろ、娘の一色青依いっしきあおい、店主の義父である一色赤人いっしきあかひと


 家族の体と共に彼等の全ては燃えて無くなった。思い出さえも。


 近所の者達も次々に口にした。


「なぜあの家が」


「恨みを買う様な人じゃなかったのに」


「信じられない」


 原因は放火である。商店街にある監視カメラには、犯人と思われる小学生高学年か中学生くらいの子供が、夜中に理髪店の前でうずくまって、灯りを点しながら何かをしているのが映っていた。


 だが、その犯人と思われる子供の特定は進んでいたにも拘らず、未だに捕まっていない。行方不明なのである。街から忽然と姿を消してしまったのだ。


 現在の理髪店跡は駐車場となっており、その家族の事を口にする者ももういない。悲しい事だが九年も経てば他人の事など忘れてしまい、記憶から抜け去ってしまうのだ。

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