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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第二章・血に染まるサプライズ
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2-15-2.謎の声【七瀬厳八】

「うーん、音質悪いなぁ。俺にはちょっと何言ってるか……。赤い、何だ? なんかそんな感じだな。さっきの『赤いチャンチャンコ着せましょか?』ってのとは違うのか?」


「ええ、それが違うんですよねぇ」


 溝口はこの声が何を言っているのかもう知っているのか、顔には俺達に対する優越感が少し浮き出ている気がする。まるで俺と九条はクイズを出されているようだ。


「九条は聞こえたか?」


「はい、僕は聞こえましたよ。自信があるかといったら微妙ですけど、赤い部屋がどうのって言ってる気がしますね。女の声と言うか、最近動画とかでよく耳にする機械音声みたいな感じですね」


 九条のその言葉を聞くと、溝口が別のファイルを開く。


「そう、九条さん正解! こっちが音声を明瞭化させた物なんですけどっ!」


「それがあるならもったいぶらずに最初から出せよ……時間は有限なんだぞ」


 そう言いながら不満気な表情を浮かべる俺の顔を見て苦笑を浮かべながらも、溝口が新たに開いた音声ファイルの再生ボタンを押す。

 グラフのような画面を一本の線が左から右へと流れていく。


『赤い部屋は コロセ コロセ コロセ コロセ スか?』


 綺麗に明瞭化されているとは言いがたい音質ではあったものの、確かにそれは言葉として聞こえた。 合間に早口で嫌な言葉が挟まれている上、文脈が変だ。暗くくぐもった女の声で、何処か生気を感じない声である。言うなれば、さっき九条が言った人工的に創り出した様な音声だ。


「この後、男児が血を噴出す前です……」


 再び先程の監視カメラ映像を前面に出す。そして、男児の首筋が切られる直前の処で一時停止が押され静止する。


「ここ、ここです。見てください」


 溝口が画面に映る男児の首筋から少しだけ離れた場所をを指差す。


「何かが反射して光っている様な光線が映ってますね。首を切った刃物か何かっすかね?」


 九条の言う通り、確かに画面に何かを反射するような光が複数見える。それも元々映っている家具や小物が光を反射したものではない。それはよく心霊映像などで見るオーブと呼ばれる光る球体の様に、明らかに宙で光っている。


「コマ送りするとこんな感じですね」


 溝口が映像を送っていくと、複数の光がそれぞれ一本の線を描くように左から右へと流れている。まるで鋭利な刃物が光を反射するように細長く弧を輝いていた。


「仮にこれが刃物だとしたら持ってる奴はどうなってんだ? ステルス迷彩か何か着込んでるのか?」


「いえ、実際に人を認識するカメラなら、方法によってはステルスで映り込まない事も可能ですが、これは売られている中でも安価な監視カメラですので……映像解析でも分からない程のステルス迷彩は……無理だと思いますよ」


「まぁ、そうだよな……」


 やはり目玉狩りの時の様な化け物なのだろうか―――いや、だろうかじゃない。間違いなく化け物だ。実際一度見てしまった俺には確信を持てる根拠があった。俺自身が根拠となりえる体験をし、その記憶を持っているのだ。


「最近こんな映像続いてて疲れますよ。頭が爆発しそうです。前に大量殺人があった食事処の監視カメラもこんな感じで被害者が惨殺されてましたし……この、何か分かりそうで分からない感じが余計イライラしますね。いっそ何も映ってなければ諦めも付くのに、こんな中途半端に証拠残してくれちゃって」


 画面に映り込むキラリと光る〝何か〟をじっとを見つめて、溜息混じりに落胆する溝口。その表情は固く、事件解決の糸口となる物が見つけられず不満が募っている様だ。


「廊下にあった赤い足跡……恐らく男児の血を犯人が踏んで出来た足跡なんでしょうが、それも足紋そくもんが滅茶苦茶でしたし、他に物的証拠って言ったら何もないですし……。確か、第一発見者は高校生でしたよね?」


「ああ。あんな所で何してたかはしらんが、あの状況の中で返り血とかを全く浴びてなかったし、……まぁ、なんだ、そう、シロだ。それに第一発見者は俺も知ってる人物だ。私情で捜査線上から外すような事をするつもりは無いが、こんな事をする奴じゃない……と思う」


「ですよねー、高校生がこんなむごたらしい事件引き起こすとも思えませんし」


 高校生が、か……。


「いやいや、最近は高校生だからって言ってどうか分かりませんよ」


 九条が不敵な笑みを浮かべそう言う。

 確かにそれはそうなのだが、彼等に限ってそういう事は無いだろう。


「うーむ……」


 テンテンテテンテンッテテテン♪


 不可解な怪奇現象が映っている画面を見て三人で唸っている時だった。俺のスマホが鳴り出した。

 取り出して画面を見ると、登録されていない知らない携帯番号からであった。もしかすると、あの二人のどちらかもしれない。俺は廊下に出て電話をとる事にした。


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