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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第一章・初めての怨霊
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1-3-3.御厨家との関係【陣野卓磨】

最終更新日:2025/2/26

 一昨年おととしに、母さんが病気で死んだ時以来だろうか。あの時の食事も、しばらくはみんな静かだった。母さんは家のムードメーカー的な存在でもあったからだ。父さんが死んでから、母さんのおかげで明るかった家も、母さんが死んだ事により一気に暗くなった。


 今では、燕が明るく振舞ってはいるが、無理しているのではないかと時々思う。病気なのに元気そうに振舞っていた母さんの事を思い出すと、燕は母さんに似たんだなと時々思う。


 皆が食事を食べ終わり、爺さんは後片付け、俺と燕はそれぞれの部屋に戻る。


 その後、少ししてから、先ほど隣家に来ていた刑事が色々と聞きに来た。面倒くさそうにしかめっ面をした刑事と、その部下の若い刑事。もちろん、俺は事件が起きた時間は寝ていたから何も知らないし、爺さんや燕も叫び声を聞いてからの事だったので、犯人の姿らしき影すら見ていない。その刑事の厳しい視線が、冬の夜の暗闇に浮かぶ影と重なり、俺の胸に冷たい不安が広がった。


 刑事たちは、自分たちが求めている答えが得られないと分かると、残念そうな顔で引き上げていった。その後ろ姿が、冬の夜の静寂に溶け込み、かすかな不気味さが残った。


 御厨家みくりやけは、数年前に隣に引越ししてきたばかりで、ウチともそんなに交流が深いわけでもない。顔をあわせれば挨拶をする程度の関係だったので、隣の家庭事情も一切知らない。


 俺は亡くなった御厨緑みくりやみどりとは、同じ学校の同級生で、去年は同じクラスではあったものの、ちょっと関わりたくないグループにいたので、会話と言う会話もした事がなく、彼女の事は何も知らなかった。ただ、いつも難しい顔をしていて、御厨が笑った所を見た記憶がない。目にしたと言えば、そのグループである天正寺恭子てんしょうじきょうこ洲崎美里すざきみさとと話している所か、しかめっ面でスマホを覗き込んでる姿くらいだった。いや、それ以外にもあったか……。あまり思い出したくない事をしていた奴でもあった。その記憶が、冬の夜の冷たい闇に溶け込み、血まみれの部屋の不気味な気配を呼び起こした。


 母さんが生きていれば、門前で御厨の母親と話をしているのを何度か見たことはあるので、何か知っていたかもしれない。でも、その母さんはもういないし、それも数年前の事だ。御厨家に関して何か知っていたとしても、事件の有力な手がかりとなるような事は知らないだろう。警察の力になりたいというわけでもないが、何の手がかりも情報も提供する事はできなかった。


 刑事は「また何かあったら聴取しに来るかもしれないので、その時は宜しくお願いします」と、言い残して後頭部をさすりながら車に乗って走り去っていった。外を見ると、夜の景色を照らしていた赤色灯の数も減っている。野次馬もほぼ解散しており、時折警察官と思われる声が、冬の夜の静寂に響き渡った。その声に、かすかな不気味さが混じる気がして、俺の心がざわついた。


 その夜は、なかなか眠れなかった。明日は始業式だというのに。目を瞑れば、あの血まみれの部屋の光景が、まぶたの裏に浮かぶ。しばらくは、ゲームの事など無理矢理考えて布団にうずくまっていたが、いつの間にか寝てしまっていた。その夢の中で、冬の夜の冷たい闇に浮かぶ影が、俺の心を冷やした。


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