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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第二章・血に染まるサプライズ
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2-7-3.オカ研入部の理由【陣野卓磨】

「とりあえず、もう門も閉まっちゃうし早く帰ろ?」


 霙月が靴箱を開け、靴を取り出す。


「そうだな。いつまでもうだうだ言ってても仕方ないしなっ」


 苛立つ心中を抑えつつ、俺も影姫と霙月に続き下駄箱へと手を伸ばす。


「よかったな。今日もさやを持っておらんのだ。学校がある時は駄目だな……いちいち刀の鞘を持ち歩いていると奇異な目で見られるし、いい加減なんとか対策を考えないといけないんだが……この間みたいに突然の強襲があると最善の対処ができん。学生は不便だな……」


 小声で影姫が囁いてくる。


「だったら剣道部にでも入れば竹刀しない入れる袋とかあったし、そっちの方がよかったんじゃないかよ……よりによってオカ研とか」


「運動部は出席に厳しいだろう。剣道部だと七瀬に無理矢理連れて行かれる可能性もある。無下に断れば怪しまれるし……それと、日頃常に竹刀を持ち歩いている剣道部を見たことあるのか? 短い期間しかまだ登校してないが私は見たことないぞ。それに、私が剣道部なぞに入ったら他の者を圧倒してしまうからな」


 自慢げにフフンと笑みを浮かべる。確かにそうなのかもしれないが、鞘を裸で持ち歩くよりは言い訳がつく。


 他で考えると音楽系の部活に入って楽器のケースに入れるとか……。いや、影姫が楽器をやると言うと和楽器しか想像できない。和楽器であの長さのケースと言えば三味線しゃみせんになるだろうか。


 うーん……。


 いらぬ考えが頭を駆け巡り一人悩んでしまう。


「それに、何処かしら部活に入っておかないと勧誘がうざったいからな。オカ研なら卓磨も居るし、サボってもとやかく言ってくる輩もいなさそうだったのでな」


「まぁ、否定は出来ないな……出欠に関しては後で部長にネチネチ言われるぞ。俺がそうだしな……影姫もさっきチラッと言われただろ」


「そうだったか? 耳に入ってなかったな。気がつかなかった」


 正直、オカ研は校内一ゆるい部活だろう。

 人数が少ないし、大会とかそういうのも無いと言うのもあるが、顧問が滅多に顔を出さない上に今はあの部長だ。前からそうだったのかどうかは知らないが、部室には常に茶と菓子が用意されており、もはやお茶会となっている日もたまにあるくらいだ。


 他の部員はと言うと、皆多少なりともオカルトに興味があるようだが、ネットで見るだけとか、写真を撮って金儲けだとか、方向性が全く違う。それっぽいのは部長と副部長の紅谷さんくらいか……。

 それぞれの意識がバラバラで部活として成り立っていないような気もする。唯一の一大イベントと言えば夏休みに行く合宿くらいか……俺は去年サボっていかなかったが……。


「何してるのー? 早く帰ろー」


 色々考えて足を止めてしまっている俺達に向けて霙月が扉の方で手を振っている。


「ああ、悪い」


 靴を履き替え霙月の元へ向かう。


 影姫の部活の事はさておき、兵藤と七瀬の事だ。

 次は兵藤と七瀬の誘いには乗らないと心に誓う。この間も当然の如く奢らされて礼も言われず、今回はすっぽかしで俺への謝罪はなしだ。いくら気の長い俺でも腹に据えかねる事もある。

 とは思うけれども、何かあったら無理矢理連れて行かれそうな気もする……。


 俺も霙月も断れない性格だからなぁ……。

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