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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第二章・血に染まるサプライズ
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2-7-1.夜の寝坊【陣野卓磨】

「うーん……」


 目が覚めて天井を見ると電灯の明かりが目に飛び込んできた。

 睡眠を取って体力が回復していると思いきや、古びて固くなった長椅子で横になったせいか、体が少し痛い上に倦怠感を感じる。前に物の記憶を見た時と同じ様なだるさだ。

 やはり、寝入ってすぐに見た夢はそれだったのだろうか。しかしなぜ今、何の夢だったんだ……。だるくなった体を持ち上げて窓の方を見ると、外はすでに真っ暗になっていた。


 寝ていた俺の上には唐草模様の風呂敷が掛けられており、横を見ると影姫も机に突っ伏して寝てしまっているようで、その背には毛布が掛けられている。

 部長がかけてくれたんだろうかと思い部屋を見回すも、部長の姿はすでに見当たらなかった。


「あれ?」


 ふと寝ぼけ眼に入った部室の時計が指している時間を見て、スマホを取り出す。


「おっほあ! 影姫! 起きろ!」


「んあ? まんじゅう……」


 饅頭の夢を見ていたのか、寝起きに何かボソボソ言っている。


 おかしい。タイマーはセットしたはずなのに。と思いスマホを取り出し画面を見ると電池が切れていた。

 鳴らない訳だ。あいも変わらず充電をサボっていたツケが来てしまった。昨日の夜に見た時はまだ七十%ほど残っていたので明日一日くらいは大丈夫だろうとそのままにしていたのが甘かった。


 慌てて飛び起き、付けっぱなしになっていた部長のパソコンの画面を見ると、部室の時計が指している時刻は間違ってはいなかった。

 部室の時計が壊れているのだと思いたかったが、それは見間違いではなかったのだ。


 十九時二十分。大丈夫、まだ二十分の遅刻だ……いやここからダッシュで行ってもあわせて二十五分程の遅刻か。無理矢理付き合わされるんだからこのくらいなら許されるだろう。そうでないと割に合わない。これで逆切れされようものなら俺が逆逆切れして帰っても許されるだろう。


「どうした卓磨、そんなに慌てて……アレだけ饅頭があるんだから取られても減らんぞ……」


「バカ! いつまで夢見てるんだよっ」


 寝ぼけ眼でまだ少しボーっとしている影姫の手を引っ張り慌てて部室を出る。ひょっとしてコイツの弱点は寝起きか。寝起きなのか。


 と、慌てて部室を出た瞬間、誰かにぶつかった。


「おっとー、危ないじゃない。どしたのこんな時間まで」


 ぶつかった相手、それは柴島くにじま先生だった。俺のクラスの副担任だが、オカルト研究部の顧問でもある。


「あらー、何かまだ電気点いてると思ったら、こんな遅くまで男女二人で部室で何やってたの」


 柴島先生が何かを勘ぐった様な顔でニヤニヤとこちらを見てくる。正直、今は先生と言えど構っている暇は無い。急がねば、あの五月蝿い二人に何を言われるか分からない。ギャーギャー騒がれてストレスを蓄積させるのも嫌なのだ。


「い、いや、そういうのじゃないですから! ちょっと急いでますんで失礼します!」


 そう言い残し、先生の疑念の眼差しを背中に受けつつ、その場を後にする。


「あーっと、廊下、危ないから走るなよー」


 後方から柴島先生の声が聞こえたが、急いでいるので申し訳ないが無視させていただいた。


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