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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第二章・血に染まるサプライズ
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2-6-5.古びた長椅子の記憶【陣野卓磨】

「まぁ……ゆっくりしていって……」


 そう言うと部長はパソコンのある席に戻っていった。いつも何のサイトを眺めているのだろう。

 俺が前に、後ろからこっそり覗いた時は、シャットダウンされたパソコンの消えた画面に映った自分の顔をずっと眺めていた。映った自分に見とれているナルシスト……というわけでもなさそうなのだが。


 不思議な人だ。

 前の一件の事もあり、そう言う印象がより強くなった。


「私はちょっと調べ物をしているから気にしないで……寝るなら寝ててもいいから……」


 部長はそう言うとまたパソコンの画面を眺め始めると、マウスを動かし何かをし始めた。


「あ、はい、すいません。ありがとうございます」


 俺はそう言って席を立つ。

 影姫はそんな俺を見つつ頬杖をついた。


「卓磨は寝るのか。折角の空いた時間にもったいない。少しでも資料を見て今後の為に勉強でもしたらどうだ。向上心の無い奴だな」


「前よりは部活に参加してるし、それなりに勉強してるよ。そもそも何をしていいのかよく分からないし」


「手につけてる物の特訓でもしたらどうなんだ」


 そう言って俺の手元に視線を移す。手首には爺さんに貰った数珠がついている。だが、今の所これと言って役に立っていない。前に少し奇妙な光を放ったくらいか。


「それこそわかんねーよ。影姫が何か知ってんのなら教えてくれよ。そしたら何かできるかも知んねーだろ」


「私は……教えるのが下手だから無理だ」


「んならどうしようもねぇだろ。っつー訳で俺は寝る。―――影姫はどうするよ。俺はそっちの長椅子で寝るけど」


「私は少し本を読ませてもらうよ。この部屋には興味深い本が多い」


「そか。じゃあまたあとで」


 そう言うとスマホのタイマーをセットし長椅子に横になる。

 影姫はというと、部室にある本棚に向かい、指をさしタイトルを確認しながら何やら本を物色している。

 確かにこの部屋には図書室には無いような本ばかりが置いてある。字ばかりの本は俺には手が出しづらいが、影姫は好きなようだ。家にいる時も、何処から持ってきたのか難しそうな本を本でいる事が多いし。


 にしても、あと二時間半ほどか……部長と話をしていて少しは時間が潰せたと言っても、まだ先は長いな。 まぁ、寝たらすぐだろう。


 長椅子に寝そべり目を閉じる。すると、不意に強い睡魔に襲われてすぐに眠りにつく事ができた。


 ………………。

 …………。

 ……。


 そして眠りについた俺は夢を見た。場所は今俺が寝ている部室。数名の男女の生徒が仲よさそうに資料を持ち寄り冊子を作っている。


「今回のテーマはこれよー。〝赤いチャンチャンコ〟!」


「えー、何か古臭くない? 今だったら怪人アンサーとかさとるくんとかいろいろあるじゃん? 古い奴の方が深掘りしていくと以外にしんどいかもよ? もうイメージとか固まっちゃってるのもあると思うし」


「いーのいーの。なんでもいーの。アミダクジで決まったんだからこれでいーの。さっと調べれてさっとまとめれてササッと終わらせれるのがいいんだから。だったら知名度高い方がいいでしょ? 終わったらどっか遊びにいこ」


「お前はいつも適当だなー。何でこの部に入ったんだよ」


「部活は内申! でもしんどい部活はいや! となるとここじゃん!? 何か、この部は差し入れのお菓子とかしょっちゅう置いてあるし!」


「まぁ、違いないけど……な。あはは」


「まったく……は……」


 どこかで見た事のある面影の持ち主もいた。だが、夢の中ではっきりとは思い出せなかった。

 もしかしたらまた何かの記憶なのだろうか。でも、記憶を見るような不可解な事態は起こっていない。ただの夢、ただの夢なんだ……。


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