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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第二章・血に染まるサプライズ
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2-3-4.刑事達の内緒話【長原康平】

「おい九条、馬鹿も休み休み言えよ。あの時の俺達は疲れてたんだよ。それで変なもん見ちまったんだ。もうその話はするな……あんまり思い出させんな……」


「でも先輩言ってたじゃないですか。霧雨学園に聞き込みに行った時にまた遭遇したって……僕も見たかったのになぁ。外の聞き込みに行ったことホント後悔してますよ」


「アホか。俺は逆に外に行ってりゃ良かったと後悔してるよ。……まさかその事、誰かに言ってないだろうな」


「言ってませんよ、誰にも言うなって言ったじゃないっすか。権藤課長も他言するような話じゃないって口止めしてましたし……」


「そりゃそうだろう、世間的には目玉狩り事件の犯人はだな……ん? あ、ゴホン。こんな所で急に言うから言い回ってんじゃないかと心配したぞ」


 チラリとこちらに顔を向けた先輩刑事が、聞き耳を立てている僕と金田に気がつき、苦虫を噛み潰したような顔になり頭を掻く。何かよっぽど嫌な事でもあったのだろうか。


「そんなことしませんってば。仮にも僕は刑事ですよ。秘密を漏洩する事なんて……」


「九条巡査長!」


 二人がコソコソ話していると、家の方から声がかかる。


「あ、向こう呼んでますんで。それじゃあ……僕はもうちょっとあっち見てきますね……」


 九条と呼ばれた刑事も少しバツの悪そうな顔をすると、そう言って家の方に戻っていった。家は電気が通っていないのか、警官達は懐中電灯を照らしながら中を捜索している様だ。


「すまんね君達。今日はもう遅いしもういいよ。また何かあったら連絡するから、その時宜しくお願いするよ。

住所や電話番号は教えてもらった?」


「はい、別の警官の方に言いましたけど……」


「んじゃぁ大丈夫だな。あと、あんまり夜中に出歩くなよ? 見た所、制服姿だし今日はまだ家にも帰ってないんだろ? 夜は色々と危ないし、不要な仕事を増やさんでくれ」


 先輩刑事はそう言うと、軽く手を振り現場の方へ戻っていった。


「怪しい、怪しいわね……」


 金田が刑事の背中を見送りながら何かを勘ぐっている。

 また何かやらされるんだろうかと思うとうんざりする。オカ研の他の先輩なら思いのほか見た目の良い人が多かったので従ってもよいと思うのだが、なんでよりにもよって僕に寄って来たのは金田なのだ……。僕はもう早く帰りたいのに。


 オカ研なんて入るんじゃなかったかなぁ。普段女子に話しかけられることなんてほぼほぼ無くて、部長に半ば強引に連れてこられて断りきれずに入部した感じだったしなぁ。明日にでも辞めてやろうか。


「これはお金の臭いがするわ! 長原君、写真! 写真撮っておきなさい!」


 やはり、こいつが口を開けば何かをやらされる。それも僕が嫌だと思う事が大半だ。そしてまたお金の話だ。現場の写真を売ってお金にするつもりだ。人が死んでいるって言うのにどこまでがめついんだこの人は。


「なんでぇ!? 嫌ですよ! 変なの映ったらどうするんですか! 自分のスマホで撮ったらいいでしょ!」


「私だって嫌よ! 私のイチオシのSNS映えする画像の中に心霊写真が混じったらどーすんのよ! それに、なんでもかんでもないでしょ! 部のデジカメ持ってるのアンタなんだから!」


「じゃあ金田先輩が撮ってくださいよ! 僕は警察の人に怒られるこ嫌だし、変なの映って呪われるのはもっと嫌ですから!」


「キィー! 先輩の言う事が聞けないって言うの!?」


「僕はアンタのためにオカ研に入ったわけじゃないです! 部長や副部長がいる時は大人しいくせにっ!」


 金田が撮影した画像はいくつか見せてもらった事があるけど、どれもしょうもない飲み物や食べ物の画像ばかりだ。

 自撮り画像はと言えば、先ほどまでかけていたドでかいサングラスをつけていたり、アプリで加工した詐欺写真ばかりだ。

 目とかの顔のパーツがでかくなっていて、物によってはお化けよりも怖い。そんな所に幽霊が混じろうがどうって事ないだろう。


 この場を離れて行った刑事も、口論をする僕等の声を聞いてこちらを見ると困り顔だ。そして再びこちらに歩み寄ってきた。


「はぁ……君等ね、幽霊だのなんだのっているわけないでしょ。無駄に事件に関わると怪我したりして危ないから、写真撮るのとかは控えてもらえるとありがたいんだがな」


「ほら、刑事さんもこう言ってるじゃないですか!」


 刑事の後ろ盾を得て大きく出る僕に対して、金田がまた悔しそうな顔をする。


「刑事さん、それは命令ですか!? 国家権力の横暴ですよ! 世の中には表現の自由と言うものが……っ!」


「いや、命令というか……とにかくだな、君等学生でしょ? だいいち、事件現場の写真なんて撮ってどうするの。後で見返してさ、気分悪くなるだけだよ?」


「そ、それは……!」


 金田が理由を聞かれてしどろもどろになる。金の為なんてとても言えた物じゃないからな。

 僕は意地でも写真を撮るのが嫌であった為に、頭に血を上らせた金田が刑事さんに食って掛かった隙を見てその場から逃げ出した。


「あ! ちょっと! 長原ぁ!」


 必死の形相で追いかけてくる金田を何とかまいて逃げるように走って家に帰った。

 追いかけてきた金田のその顔は、まるで狐憑きに合った化物のように恐ろしかった。

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