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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第一章・初めての怨霊
136/613

1-99-99.閑話2

最終更新日:2025/3/12

『ザッコwwww初心者は大人しく初心者部屋へ行くでござるwwww所詮ボイチャも繋げれない小心者www』


『ぼくらコンビにかなう奴はいないんだなwwww敗北を知りたいんだなwwww草草の草』


 ブチッ……頭の中で何かが切れるような音がして、それ以降のボイチャなど聞こえなかった。

 それは恐らく、一緒にゲームをプレイしていたいつものゲーム仲間も同じ事だろう。


「うっぜええええええええええええええええええ!!!!こいつら絶対チート使ってんだろ!!私がスナイパーで負けるとかありえないからっ!!!!」


 ゲームをするために手にしていたスマートフォンを思わ放り投げてしまう。しかし、投げたスマートフォンはその先で偶然ドアを開けた私の同居人、アンゲリーカ・グリムの右手に見事に収まった。

 私は彼女のことをアンジーと呼んでいる。長い髪を後ろで三つ編みで束ねており、鋭い目つきが印象的だ。


「レーテ、すぐにものに当たるのは良くないわよ。そもそも、いくらネットワークが直に繋がってないからと言って、組織から支給された備品でゲームなんてするんじゃないわよ」


 開いたドアを閉じつつ、困ったような顔をするも、私のスマートフォンを私に投げ返し、ベッドの上で喚いて頭に熱の登った私を冷静に窘める。


「だってだってぇ~!コイツラ超ウザいんだもん!」


 投げ返されたスマートフォンを受け取ると、身振り手振りで言い訳する私。だが、それに対して、アンジーの視線は少し冷たい。


「そんなことより、任務の事…」


「ああ、昨日言ってた電脳型の自縛屍霊?なんつったっけ……」


 そうである。ゲームに熱中していて忘れていたが、私達は昨日、所属する組織より現在滞在している街に発生した屍霊を殲滅するよう指示を受けていた。元々はとある人物の監視目的のために滞在していた街であったが、現在この街にいる人間で対処できそうな人間がいないという事で私たちに白羽の矢が立ったのだ。


 まぁ、それも表向きの言い訳だろう。実際は「ヒマそうなのが私たちしかいない」と言ったところだろう。監視業務とはいっても相手は一般人。今の所組織が危惧しているような行動も何もない。対象はだらけた生活を送っているだけだ。


 そして屍霊のことである。昨日の今日ということもあるが、情報も少なく電脳型ということもあり、所在が掴めずにイライラしているところゲームでストレス発散しようとプレイし始めたものの、負けてこのざまである。


「目玉狩り、よ」


 そう、そんな名前だった。なんでもターゲットの目玉をくりぬいていたぶり殺すとかいうえげつない屍霊だと聞いている。素体は付近の学園でいじめによって自殺した女子生徒らしい。私も生前はそういう経験をした事がある。自分と重ね合わせてしまう部分もある。なので、不憫であると思うし同情の気持ちは沸いてくるが、だからといって人を大勢殺していいという訳でもない。


「見つかったの?なら、さっそく……」


 ゲームに負けたことよりも嫌な思い出がよみがえる。それを振り払うように頭を振ると、アンジーの方に向き直った。

 そんな私を見てアンジーも何か感じ取ったのか少し暗い顔になる。


「いえ、まぁ、見つかったといえば見つかったのだけど、すでに誰かの手によって殲滅されたらしいわ。よって、私たちはこれからまた監視任務に逆戻り」


「え!?マジ!?久々の大きめの任務だと思ったのに……もしかして或谷組の連中?」


「いえ、組織がまだ把握していないみたいだから或谷組ではないみたい。ま、そもそもとしていくら人がいなかったって言っても電脳型じゃ私たちとは相性が悪かったし、よかったんじゃないかしら。それにレーテ、あなた……」


 アンジーの視線が私の心を見透かしているようで怖い。


「大丈夫、私は、どんな屍霊でも、手加減するつもりは、ないから……全ての屍霊には二度目の死を……」


 祖国で目に焼き付いた、血に塗られた教室、血に塗られた恩人。

 それらが頭の中にフラッシュバックし、先ほど沸いた同情という名のいらぬ感情はどこかへ吹き飛んだ。

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