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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第一章・初めての怨霊
135/613

1-99-99.閑話

「ねぇ、カナ


「んー? 何?」


 今、私とカナこと兵藤叶ひょうどうかなえは私の部屋で二人並んでスマホゲームに勤しんでいる。

 喫茶店で陣野君と烏丸からすまさんと分かれた後、宿題を一緒にやろうという事だったのだが、結果遊びに興じてしまっている。


「目玉狩り事件の話どうすんの? どっか行くの?」


「え? ああ、今期アニメが豊作で、正直言ってあんまりそういうのに構ってる暇無いんだよねー。録画溜めちゃったら後がしんど……あ、あああああ! 撃たれた! 誰!? この私にヘッドショットかますとはどこの手練れ!? 迷彩つけてたのにエイム良すぎじゃない!?」


 やっているゲームでやられたのか、カナがスマホに顔を近づけて悲痛な叫びを上げる。アンタが言い出したんでしょうがという突っ込みは胸の内にしまっておき、心の中で溜息をつく。


「黒マスクの奴そっち行ったから、そいつじゃないかなぁ。他の人もやられてたから、黒マスクと青フードは要注意ね。……まぁ、陣野も霙月みっちょも乗り気じゃなかったしね」


「あ、でも、都合つけば何かやるよ。学生生活なんか思い出残しときたいじゃーん」


 そう言ってベッドにもたれかかりスマホを布団の上に投げ出す。どうやらヘッドショットを食らってやる気がなくなったらしい。


「んー、だからって言ってあんまり危険なところはねー」


「だって、七瀬ななぴょんのくれる情報そういうのしか無いじゃん」


「そりゃあお父さんの電話盗……いや、聞こえてくるのってそういうのしか無いんだもん」


「こう、胸がわくときめきぴかーってするイベント無いもんかねぇ」


「ないない。そうそうないよ。あっ」


 そして私もヘッドショットを食らって画面の中のキャラクターが倒れる。

 画面にでかでかと表示されるLOSEの文字。


『ザッコwwww初心者は大人しく初心者部屋へ行くでござるwwww所詮ボイチャも繋げれない小心者www』


『ぼくらコンビにかなう奴はいないんだなwwww敗北を知りたいんだなwwww草草の草』


『おいおい二人とも、相手がボイチャをオンにして無いからって好きなこと言うなって。結構良い試合してたじゃん。あんまり煽ってると通報されんぞ。お前ら前科あるんだから即BAN食らっても知んねーぞ』


『それは困るでござる! いい勝負でしたな! いやはや、大健闘! プッ』


『ウンウン、なかなか良い試合だったんだな。僕等じゃなかったら勝てなかったかもしれないんだな。プククのプ』


 そして流れてくるボイスチャット。音声だから見えないはずなのに『w』の文字が大量に頭に流れ込んでくる。

 こいつ等いつの時代の人間だよ。見ず知らずの人間のはずだが、どこかで聞いた事のある声だ。そして最後、笑ったな。暴言行為で通報してやる。


「ぐ……こいつ等……どこの誰か分からないからって煽りやがって……お父さんにリアルヘッドショットしてもらうぞこいつ等……特に黒マスク……チートでもしてんじゃないの……ぐぬぬぅ…………」


 ボイスチャットをオンにして女と分かったら一気に擦り寄ってくるくせに、こういう奴等はホント。


「もうやめやめ、やめよー。このゲーム、チートとか増えてきて面白くなくなってきたしー」


「そ、そうね。こんな煽りがいるゲームやもうやりたくないわ……」


 怒りを抑えつつゲーム画面を閉じる。


「暇ねー」


「そうね……宿題やらないとね」


「……」


 END

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