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1-37-0.□□□□【伊刈早苗】
光が見える。
広がる闇の中に見える一筋の光。
誰かが見ている。
私の大切な物が見ている。
私を見ている。
忘れたい記憶、忘れたくない記憶。
私の大切な物を通じて誰かが覗いている。
私の心はここにある。
でも、その光はすぐに消える。
暗い。
どこまでも暗い。
何も見えない。
助けて。
誰か助けて。
『誰も助けてくれないよ』
『自分の身は自分で守らなきゃ』
『殺らなきゃ殺られるよ』
誰?
誰なの?
『私は伊刈、伊刈早苗』
違う。
伊刈早苗は私。
『人を呪わば穴二つ、あなたはもう元のあなたには戻れない』
いや。
『後は私に任せて』
いや。
『正直になって』
もういや。
『私は未来永劫、人を殺すの』
もういやなの。
『電子の世界に身を隠し、醜い色に染められた寂しい心を持った人たちを』
お願い、解放して。
『心の深くに刻み込まれた癒える事のない深い深い傷が消えるまで……』
こんな事になるなんて思っていなかった。
お父さん……お母さん……。
……ごめんなさい……。
………………。
…………。
……。




