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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第一章・初めての怨霊
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1-35-4.異質な存在【七瀬厳八】

「ふおおおおおおはぁあ!」


 くそっ。恐怖も相まって情けない声が洩れてしまった。


 バールの様な物を大きく振りかぶり目玉狩りの頭めがけて勢いよく振り下ろすが、怖さも相まって目を閉じてしまう。デュクシッという鈍い音と共に、気持ちいいとは言えない感触がバールの様な物から手に伝わってくる。

 人を鈍器で殴るというのはこういう感触なのか。あまり味わいたくない感触だ。


「ヒイイイイイイ、イタイイイイイイイイイ!!!」


 目玉狩りの叫び声だろうか。痛みを訴える叫び声を上げているという事は頭にクリーンヒットしたのだろうか。だが、その声に違和感を感じる。聞こえてきた声が、先程から聞こえる声と違うのだ。


 目を開くと、俺の放った一撃は気持ちの悪い肉の塊にガードされていた。

 当たったのは無数の目玉が覗く目玉狩りの頭ではない。バールの様な物は、目玉狩りの肩から生え出た別の頭の様なものによって防がれていたのだ。


 当たった部分を見ると、それは見たことのある顔。目こそくり抜かれて真っ黒な空洞となっているが、そこにあるのは被害者である小枝の顔だった。その頭のど真ん中にバールのような物がめり込んでいる。


 小枝の顔は苦悶の表情を見せ、こちらに顔を向けて苦痛の言葉を発していた。


「ヤメロオオ! オレガナニヲシタアア! イタインダヨオオ! ヒイッ」


「ふあっへっ!」


 苦痛に歪むその顔のあまりの気味悪さと気持ち悪さに変な声がまた洩れる。

 マジでどうなってるんだ。


「馬鹿! 逃げろ! 普通の人間が相手できる奴じゃない!」


 影姫が俺に向けて叫んできた。普通の人間って何だ。だったらお前はなんなんだ。


「アホ言え! お前が何者かしらねぇが、子供が戦ってるってのに大の大人で、しかも、仮にも刑事である俺が、守るべき市民を置いてそそくさと逃げれっかよ!!」


 そうは言うが、汗と荒くなった息が止まらない。こんなに恐怖を感じたのはいつぶりだろうか。いや、これ以上の恐怖を感じた事など無い。初めてだろう。


「死にたいのか!?」


「死にたくねぇよ! 死にたいわけねぇだろ! 死にたくねぇから怖いの抑えて立ち向かってんだろ! 何もせずにおめおめ殺されてたまるかってんだよ!」


 再び振りかぶり本体の頭めがけて懇親の力を込めてスイングをする。今度こそ当ててやるっ。


「ヤアアアアアアア!!」


 だが、また同じだ。違う角度から攻撃を放ったものの、小枝の頭が飛んできてガードされる。そしてもう片方の肩から伸びてきた別の頭に脇腹を殴打され吹っ飛ばされ、しこたま床に背中を打つ。


「ヤメテエエエエエエ!」


「イヤハハハハハハ! ミンナイッショ! ミンナイッショオオ!」


 目玉狩りの方から複数人の声が聞こえてくる。


「いっでぇ!」


 影姫も隙ついて両腕から生えた刀の様な物で応戦するも、刃物のように鋭い爪や別頭の肉壁によってことごとく弾き返され防がれる。


 生える複数の頭がそれぞれの感情を叫び悶え、苦しみ、喜び、目玉狩りは一人で阿鼻叫喚の地獄絵図となっている。

 腕が四本、頭が三つ。肩の部分はまだボコボコと脈打ち別の頭がまだ出てきそうな勢いだ。気持ち悪い。こんな気持ち悪い生き物始めてみた。俺は一体何と戦っているんだ。


「今度は大貫おおぬきの頭かよ! 被害者を盾にすんじゃねえええ!! くっそ! どっか弱点とかねーのかよ!!」


 何回も隙を見ては殴りかかるが一向に当たらない。それどころか反撃を食らい自身の体にダメージが蓄積していく。


「手を出した以上、貴方ももう引けない!ここは卓磨を信じて耐えるしか……っ!」


 影姫も押されて疲弊している様に見える。部長はというとただ突っ立っているだけ。それはそうだ、ただの女生徒がコイツと戦えるはずも……このままでは長い時間は持たない。


「だああああああ!何でもいいから早くしてくれええええ!!」

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