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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第一章・初めての怨霊
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1-33-3.ここで逃すわけには【七瀬厳八】

「い、いや、ちょっとわからないですね……なぁ、影姫」


「うむ、そうだな」


 陣野と影姫と呼ばれている白髪はくはつの生徒は、聞き込みの最中に言葉が度々どもる。

 その態度がすごく怪しい。何か知っているのではないかと勘ぐってしまう程にだ。


 一方の髪にウェーブのかかった女生徒は一言も口を開かない。ただただ俺から目線を逸らし「自分には話しかけるな」というオーラを醸し出している。三人とも全体的によそよそしく、すごく怪しい。


「ほんとに?」


「ほんとですよ。刑事さん、目を見てくださいよ俺の目を。嘘ついている様には見えないでしょう?」


 改めて聞いてみるが、陣野の返答は変わらない。目を見ると、すごく眠たそうだ。いや、元々こういう目なのか。横の二人の生徒の目も見ようとするが、すぐに視線を逸らされる。何か嫌われている様な気がして悲しくなってくる。


「このサイトの事だよ? えーっと……」


 危険かもしれないとは思ったが、確認の為だ。スマホを広げて例のサイトを見せようとする。

 が、おかしい。

 あれ? と頭の中に疑問符が浮かぶ。


 昨日の事件後までは見れていたのに、画面にはエラーの文章が英語でつらつらと表示され、今日は見れなくなっている。なぜだ。何か接続方法を間違えただろうか。しかし、昨日とやり方は何も変えていないし、どういう事だ。


「どのサイトですか?」


 陣野が俺のスマホを覗こうとする。俺は慌てて例のサイトが表示されない画面を隠し、スマホをポケットに突っ込んだ。


「い、いや、何でもない。何も知らないならいいんだ。呼び止めて悪かったな」


 おかしい、昨日の朝や事件後に見た時は表示されていたのだが……突然閉鎖されてしまったのだろうか。

 しかしまぁ、なんという絶妙なタイミングで……。怖い怖いなんて思ってないで、確認をしておくべきだったのかもしれない。とりあえず掲示板についての情報はここでは得られなそうだ。サーバーのスペースを貸し出していた会社の返答を待つしかないか……。

 とりあえず、伊刈早苗についても聞いてみるか。


「じゃあ、もう一つ聞きたい事があるんだけどいいかな?」


「なんでしょう」


「伊刈早苗さんという生徒についてなんだけど……」


 その名前を聞いて陣野が目線を逸らし、後ろのウェーブ髪の女生徒の表情が豹変したのが見て取れた。

 表情は暗いが鋭い目つきで俺を見ている。影姫はというと表情を変えることもなくまだ終わらないのかと言わんばかりに、顔に苛立ちが見て取れる。


「伊刈さんは……」


「私達急いでるんです。もういいですか!?」


 ウェーブ髪の女生徒がやっと口を開いたかと思うと、声を荒げ陣野の言葉を遮った。

 これは明らかに何か知っている態度だ。ここは少々粘ってでも聞きたいところだ。


「いや、重要な事なんで少しだけでも……」


「陣野君、行こ。警察とか信用できないから。刑事さん、これ強制じゃなくて任意ですよね!? だったらもう終わりにしてくれませんか!?」


 任意任意ってどいつもコイツも……。


「え? ちょっと、天正寺……」


「いいから……っ」


 ウェーブ髪の女生徒が陣野の手を掴み、入ろうとしていた部屋へと引きずり出した。

 というか、ちょっと待て。今、天正寺つったな。そうか、このウェーブ髪の女生徒が天正寺恭子か。

 そりゃ伊刈早苗について喋りたくない訳だ。しかしこれでこいつらを今逃す事が出来ない理由も出来た。何としてでも話を聞きださねば。


「すいません、刑事さん。俺達急いでる……みたいなんで。ははっ。また今度ということで……」


 引きずられる陣野が苦笑しつつ俺との話を締めくくろうとする。


「い、いや、俺もそんな暇では……用事が終わってからでいいから話を聞かせてくれないかな」


 慌てて後を追いつつ食い下がる。


「俺は構いませんけど……」


 返事をするのは陣野だけ。影姫はこちらを見てはいるものの口は開かず、天正寺はこちらを見ようともしない。

 だがしかし、このままおめおめと引き下がる訳にも行かず俺は彼等の後を付いていくことにした。


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