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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第一章・初めての怨霊
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1-33-1.はち合わせ【七瀬厳八】

「うーん、あまり人がおらんな……」


 思わずため息混じりに言葉が洩れる。

 授業終わりの放課後、教師達に話を聞いていた時間もある為、生徒達は皆、帰宅したか部活に精を出しているかだ。校舎内に残っている生徒はほぼ見かけない。

 先程何人か見つけて事情を説明して、何か情報は無いか聞いたのだが、掲示板の件について話されるとパソコンの用語をならべられて俺はチンプンカンプンだった。その上、伊刈早苗の名前を出すと皆がみなして口を噤み立ち去ってしまう。


 食事処で見たあの化物の手がかりがやっと見つかりそうな状況で、九条の「あの掲示板サイトが関係している」という推測と伊刈早苗の交友関係を洗うという目的を達成するにはかなりの骨が折れそうだ。


 さっきの職員室での聴取でも、何人かの教師に話を聞いたが横文字を並べられて、正直よく分からなかった。メモには取ったが、聞いた言葉が合っているのかもよく分からない。ドメインだのURLだの、日本語を使えってんだまったく……。


 そして思い返す。食事処の大量殺人時に目玉狩りは事を終えるとスマホの中に吸い込まれて消えた。

 店内に突入してから見た、被害者が握り締めるスマホに映っていたのは案の定、例のサイト。

 あながち九条の推理も間違っていないのかもしれない。

 伊刈早苗の虐めにいつも表示されているこの学園の掲示板サイト……簡単に繋がりそうで繋がらない事がもどかしい。

 俺達警察がそのサイトにアクセスして直接調べれば早いのだろうが、俺もあんなのに襲われたくはない。サイトを開いて見たりはしているものの、深くは調べていない。情報を集めて確信を得てから行動したいのだ。


 とはいうものの、部活してる奴らの邪魔しちゃ悪いし、練習している中に横槍を入れるのも気が引ける。校内でぶらぶらして残ってる奴の方がいいだろう。

 案外そう言う奴の方が何か知ってるかも知れんし。と思って探しているのだが、放課後の校舎というのは案外中々見つからない。


 そんな事を考えつつ校内を散策するが、新たに発見した生徒達には警察手帳を見せる前にそそくさと足早に逃げられてしまった。どうも不審者扱いされている気がする。


「うーむ……」


 いったん九条と合流しようかどうしようかと、足を止めて唸って考えている時だった。


「あ」


 不意に後ろから声がかかる。


「ん?」


 振り返ると見知った人間が立っていた。見知ったというか自分の娘だ。


「おとーさん、何やってんのこんな所で」


 そう言う娘の顔は、不信感丸出しであった。


「おう、菜々奈か。お前こそこんな時間に校舎内で何やってんだ。部活はどうした」


「忘れ物取りに来たのよ。って、私がいるよりお父さんがここにいる方が不自然でしょうに」


 菜々奈は明らかに俺が霧雨学園内にいる事を不審がっている。その視線はまるでけだものを見るかのような冷め切った視線だ。年頃の娘というのは難しい。


「俺は仕事でだな……ちゃんと許可は取ってるぞ」


 そうだ、灯台下暗しとは言ったものだ。菜々奈に聞けばいいじゃないか。確か学年も件の奴等と同じ学年だったから知っている事があるんじゃないだろうか。


「なぁ、お前、伊刈早苗さんって人の事知ってるか?」


 俺の質問に対して明らかに表情が曇る。何か知っているのだろうが口には出したくない、そんな表情だ。


「え、うん、まぁ……去年同じクラスだったし知ってるっちゃあ知ってるけど……伊刈さんがどうかしたの? まだ自殺の事で捜査とかしてんの?」


「そんな所なんだが……彼女の交友関係を調べててな。伊刈さんと仲良かった人とかいなかったか?」


「それ聞いてどうすんのよ。学校の会見で自殺の話はもう終わってんじゃないの?」


「いや、理由は捜査情報だから、いくらお前でも詳しくは言えんのだが……」


 それを聞くと菜々奈は肩を落とし俺から視線を逸らした。


「あのさ、やっぱその手の話って皆話したくないと思うんだ。関わりたくないって言うの? ちょっと前もマスコミとかウロウロしてて聞きこみしてたみたいだけど、皆無視してたみたいだし。私も学園生活で嫌な事あんまされたくないし、お父さんとはいえ警察に喋ったってなるとちょっとさ」


「そこを何とか、無理か?」


「無理無理。皆そうだと思うよ。だから聞き込みしても無駄なんじゃないかなぁ。お父さんも娘に嫌われたくないなら、これ以上その事に関して詮索しない方がいいんじゃない?」


 娘に嫌われたくないなら、か。そこを言われると頭が痛い。仕事と家庭のストレスで両挟みに会うのは御免被りたい。


「しかしなぁ、俺も仕事が。……お前、まさか……」


「あ、私は伊刈さんに何もしてないからね。何もしてないし、何も喋ってないから」


 普段、家でもっと会話をしていれば事前に何かしらの情報が入手できていたかもしれないと思うと悔やまれる。だが、職業柄家にいる時間も多いとは言えないのでコミュニケーションをとるのが難しい。


「そうか? ならいいんだが……じゃあ、別件でちょっと聞かせてくれ」


「何、まだあんの? 部活に戻らないといけないから手短にお願いね」


 そして俺はとりあえず、伊刈早苗の件は置いておいてインターネットの掲示板について聞く事にした。


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