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おんりょうめもりー ~死人達の記憶と刀の少女~  作者: ぎたこん
第一部・第一章・初めての怨霊
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1-32-1.学園としては【中頭水久数】

水久数みくず様、宜しかったのでしょうか? 警察組織に園内を嗅ぎ回られるのはあまり宜しくないかと思われますが……」


「森之宮さん、ここで変に断ればいらぬ勘ぐりをされる事もあるでしょう。学園ぐるみで虐めを隠蔽していたなんて噂が広まればそれこそ、だわ。まったく……校長と教頭は揃いも揃って私に無断で余計な事をしてくれて……」


 そう、伊刈早苗の自殺に関しての会見は、私が出張でいない間に校長と教頭が許可無く勝手に開いたのだ。

 相談があればもっと別の方法が取れたかもしれないというのに。

 先程電話で受けた連絡によると、どうやら警察は伊刈早苗の自殺と目玉狩り事件を紐付けようとしている節がある。実際にはそうなのだが、知らない者にあまり首を突っ込まれても面倒臭い。


「それはそうなのですが……どうも校長も教頭も門宮の天正寺に裏で手を回され急かされていたようでして……どちらにしても早い対処を行いませんと、暁の方にはいい印象を与えないかと」


「早い対処と言ってもやり方があるでしょうに。あんな学生の寸劇みたいな台本通りの会見、誰が見ても不快にしか感じないでしょう。自殺に関しては、一部匿名で騒いでいる人間がいますが、今回は思ったほど騒ぎが大きくならなかったから良かったものを……」


「世間的にはそうですが、今来ている警官がそれを……」


「そうね。掘り返されたら面倒臭いわ。でも、いくら嗅ぎ回った所で彼らに解決できる事ではありませんよ。彼らはあくまで〝人〟の起こした事件事案に対処する組織ですから。彼等が仮に屍霊の姿を目撃していたとしても、どうにか出来るものでもないでしょうし」


「はぁ……」


 執事である森之宮の困り顔が視界に入る。彼は要らぬ心配をする事が多い。だが、そうなる気持ちも分からないでもない。


「困ったものね。問題を起こすのはいつも一般入試枠の生徒。特能枠で入学した生徒は皆大人しいというのに」


「教師達も一般枠の……いわゆるモンスターペアレントを恐れて揉め事には深く関わろうとしませんものでして……天正寺の件に関しても、解決を試みていた担任に対して親がかなりこっぴどく言ったらしく」


「学園の裏の事情を知る教師が少ないのも問題ね。もう二、三人増やした方がいいんじゃないかしら」


「その点については水久数様のご判断になりますので……私としてはなんとも」


「生徒に関しては学園の運営の為とはいえ、軽く幅広く合格させすぎたのかもしれないわね。もう少し面接を厳しくした方がいいのかしらね。うちの学園だけの問題かは分からないけど、特に親との関係が疎遠がちな富裕層世帯が問題をよく起こすと報告を受けているし」


「しかしそういう世帯を受け入れていかないと学園としての評判も……それに、天正寺に関しては入学当初は問題のある生徒であったような話は聞いておりませんし、子供ですから何がきっかけで変わってしまうかまで先を読む事は非常に困難かと」


「ホント、困ったものね」


 淡々と書類に判子を推しながら、執事の進言を軽くいなす。

 新年度初頭は忙しいのだ。彼ら生徒に構っている暇など無いというのに。


「今の影姫を見るに、〝目玉狩り〟の対処ができるのかどうかは少々の不安は残りますが、千太郎さんの選んだ人物の元で目覚めたのですから、それを信じる他ありません。森之宮さんが心配する事ではありませんよ。貴方は貴方の仕事を全うしてください」


「承知いたしました」


 森之宮はそう言うと一礼し部屋を後にした。


「ふぅ……」


 今回の目覚めは或谷組にも不信感を抱かせてしまっている。千太郎さんも強引な事をしてくれたものだ。

 今の状況では目玉狩りの対処を彼等に頼んでも引き受けてくれるとは思えない。となると万が一、影姫が目玉狩りに負けるような事があれば、私が責任を取って対処しないといけないかもしれない。

 出来るのだろうか、この力を奪われ衰えた体で。


挿絵(By みてみん)

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