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雪と花  作者: 朝舞
4/5

事実と真実




「彼女は高貴な方を殺し、処刑された。それは事実」


伯爵は静かに、少女を見つめた。

その瞳は悲しみに陰り、彼女を捉えて離さない。


「だが君は、真実を知らないようだ」


予想外の言葉に、少女は息を詰まらせた。


真実。


これ以上に、一体何があるというのか。

これ以上に、何を背負えというのか。


ーー知りたくない、こわい。


そんな想いは伝えられることなく、伯爵は彼女の目の前から姿を消した。


それから幾許かして


彼は、一冊の日記帳を手に戻ってくる。

その間、少女はその場に縫い付けられたように動けずにいた。


「君の母親のものだ」


恐怖で動かなかったはずの身体が、無意識にそれに引き寄せられる。


そして、彼女の意識を置き去りにしたまま、ぱら、ぱら、と(ページ)をめくり始めるのだった。


毎日のように綴られているたわいもない言葉。


それが前触れもなくふと途絶え、日付が数日後に飛んだ箇所。そこを境に、日記を読み進める少女の動きは重くなる。




★★★★★




ーー夫が亡くなった事。


馬車で移動中の、事故死だと聞かされた。


ーー公爵に言い寄られた事。


彼は身分だけはいいが、悪名高さで有名であった。


ーー領民が何者かに殺された事。


犯人は、分からずじまいであった。


ーー公爵に迫られ、再び拒めば悪夢を見るだろうと脅された事。


「お前の領民を殺す」と。


「お前の家族を殺す」と。


「お前の娘を殺す」と。


()()()()()()()()()()()()()()()()



公爵が、夫を殺した。


領民を殺した。


従えば、大切な者には手を出さないという。信じられない。


しかも、それは罪になる。彼は妻子持ちなのだ。


どちらも破滅の道ならば。


ならば、自分は脅威を消そう。


大罪を犯してでもーー




★★★★★

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