呪詛
★★★★★
雪と花
二つが交じることはない
凍える冬には花は咲かずに
緑が芽吹く頃
雪は、溶けてしまうのだから
★★★★★
「おはようございます、叔父様」
「あぁ、おはよう」
朝、少女の気分は最悪だった。
何もしたくなかったが、泊めてもらっている身としては、いつまでもふて寝するわけにもいかない。
重い身体を無理に動かして朝食を摂るが、ほとんど喉を通らなかった。
少女の叔父である伯爵は、この地のーーそして、この屋敷の今の主である。
昨日、彼は急な来訪にも関わらず、少女を快く歓迎してくれた。
そして夕食の後に、彼女にとある歌を聴かせてくれたのだ。
ーー雪と花
二つが交じることはないーー
それは、少女の母がよく歌っていたものだという。
まるで呪いのようだ、と彼女は感じた。耐えられずに席を離れたため、最後までは聴かなかった。
儚げで色白の女性が美しいとされている世間において、母は理想的な女性だったという。
雪、と評されるほどに。
しかし、大罪を犯した彼女の象徴は、雪ではなく毒となった。
そして、その娘は毒花となる。
ーー二つが交じることなんて、ないわ
交じりたくもない、と少女は思った。
「ところで、昨日は聞きそびれてしまったのだが……君は、どうしてここへ?」
当然のことだが、伯爵は少女が訪れてきた目的を尋ねた。
理由は、特にはなかった。社交界での一悶着で、衝動的に来たようなものだ。
だから少女は、ここに来るまでの道中で何をすべきかを考えていた。
「贖罪に」
それ以外に思いつかなかった。
いや、償うということ自体もできないかもしれない。
少女が罪人の娘であるという事実は変えられず、彼女が生きているだけで、迷惑にしかならない気がした。