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剣聖勇者 4話

 腹痛が治った後、俺は聖剣に正座させられていた。

 白髪幼女の姿は誰にでも見えるらしく。まるで呪縛霊の様に俺の背後を付いてきた。

 で、自室に着いたとたん、正座と言われとりあえず正座したのだ。

 そして正座している俺をティアラ姫が何とも言えない表情で見ていた。


『お前分かってる? 儂聖剣だよ。それを腹痛いからってトイレの床に放置とか正気を疑うわ。せめて壁に立て掛けんか、壁に!』


「そう言わないでください聖剣様。覚醒したのがトイレの中だったから仕方ないじゃないですか。しかも凄い腹痛だったらしいのですよ」


 俺を援護するのは姫様である。

 お前のせいだけどな!


「いや、トイレに床に放置したのは謝るけど、そんな怒ることじゃ」


『ああん! だったらトイレの床に這いつくばって来るのじゃ!』


「嫌です。汚いし」


『お前なー! お前なー!』


 聖剣エクスカリバアア! に宿る女神ミルナーは怒りで語彙力がなくなっている様だ。

 まだこれが続くのか、そう思った時である。


『! これ「これは転移魔法の魔力!」』


『それも「それも三つの精霊の力を感じます!」まさ「まさか四天王の内三人が城に奇襲を!?」』


「次に聖剣様は儂のセリフを奪うんじゃないという」


『お前儂のセリフを奪うんじゃない……はっ!』


 何コントしてんだこいつら。


「とにかく四天王の三人がきたってやばいことじゃないのか。勇者の出番だろ!」


『その通りじゃ、儂を使い愚かな魔族を生きてきたことを後悔する位、血祭りにあげるのじゃ!』


「めっちゃ物騒なこというな、この聖剣!」


 俺は聖剣を手に取ると寝間着で部屋をでて走る。

 バルコニーに出るとそこには、無数の星がきらめく夜景ではなく、無数の魔族が飛び立つ光景が広がっていた。


「多い!」


 どんだけ来てんだよ。空が魔族で埋め尽くされてるぞ。まるで宙に浮かぶ軍隊だ。

 

『ほとんどが雑兵じゃ、今のお主でも十分に戦える! 飛び立て! 覚醒した儂を持つお主は身体能力が劇的に上がっておる』


「おおおおおおおお!!」


 テンションに任せてバルコニーから天に向けて飛び立つ。バルコニーにひびが入り、俺は一気に上空へと舞い上がった。


『さぁ、何かかっこいいことを言いながら剣を振れ! それで聖なる斬撃が飛ぶ!』


「まさかの必殺技自作!?」


 取りあえずかっこいいこと言えばいいんだよな。


「喰らえ! ディスカバリーチャンネル!!」


『ださっ』


 剣を振るうと剣から聖なる斬撃が飛んでいった。でもなんかショボい。ひゅー、と音を立てて飛んで行き魔族にぺしっと叩き落とされた。


「聖なる斬撃しょぼっ!」


『違うわ! お前のネーミングセンスがダサいから威力が下がったんじゃ! いいから続けろ! なるべくかっこいいのを言うのじゃ!』


「サザンクロス!」


『安直!』


 飛んで行った斬撃はまたしても魔族に叩き落とされた。


「エンドオブザワールド!」


『素直にかっこ悪い!』


 飛んで行った斬撃がまた叩き落とされる。


「ヨルムンムンガンド!」


『何か間違ってる気がするのじゃ』


 斬撃が(以下略)

 らちが明かない。こうなった黒歴史を開放するしかない。

 中学生時代に作った必殺技を。


煉獄炎撃超絶引力刃(マキシマックスバルボロス)


『うーん、5点、千点満点中な』


 だめだ。魔族に当たる前に消えてしまった。

 ちくしょうやけだ。


「ミルナーさんはかわいいやったー斬撃!」


『素晴らしい(エクセレント)』


 うん、思った通りだ、かっこいいかどうかはこいつが決めている。

 俺の放った斬撃は余波で雲が散るぐらいのものだった。

 当然当たった魔族もただではすまず、どんどん木っ端みじんになっていく。

 

「ミルナーさんは賢くかわいい剣撃!」


「超絶美幼女ミルナー斬!」


「スーパーミルナーさんビーム!」


 俺のお世辞によって魔族がどんどん切り捨てられていく。

 何かこっちに魔法で炎とか撃ってるけど全部斬撃で切り裂かれていった。

 敵わないと判断したのか魔族が踵を返して散りじりになっていく。

 

『よし、雑魚はこれぐらいでいいじゃろう。城の中に戻るのじゃ四天王の内三人が侵入してきておる!』


 俺は空中を歩き(というかいつの間にか立ってた)バルコニーから中に入る。

 

『急げよ! 城の兵では長くはもたんはずじゃ!』


「分かった!」

 

 

 

 城の中に三匹の魔族の姿があった。

 どれも尋常ではない魔力を身に包み、ムシ程度ならあふれ出す魔力の奔流で殺すことができるだろう。

 一人目はシネネ。死の精霊と契約した死魔法の使い手である。

 眼鏡をかけ二本の角を携えている男であった。

 二人目はジャママ。邪の精霊と契約した邪魔法の使い手である。

 髪をポニーテールにした、どこがとは言わないが絶壁の女である。

 三人目はウザザ。嫌の精霊と契約した嫌魔法の使い手である。

 顔がにやけていてなんかうざい男である。あと性格もうざい。

 彼ら三人は城の騎士に囲まれていた。

 誰もがAランク相当(なんていうか強い)の騎士である。そこら辺の魔族なら一太刀で真っ二つに出来る実力を持つ。


「ウッザッザ! 群がっちゃって、そんなに俺らが恐いんですか~、三人に対して五十人以上とか、恥ずかしくないんですかね~、へいへいお前らビビってる~」


 口火を切ったのはウザザである。うざい。


「うざっ、口とじろ」


 ジャママがウザザの方を向かずに言った。


「ああん。何か言ったか、お胸なしなし無し子ちゃん! お胸が小さすぎて存在に気付かなかったわ」


「何ですって! 殺すわよ!」


「んーんー、さすがになしパイ女にやられるわけにはいかないなー。俺巨乳の方がすきだし、豊乳してから出直しな」


 今にも仲間内で喧嘩を殺し合いをし始めそうな雰囲気である。


「どうでもいい。さっさと殺して俺は夜食のフレンチを食べる。死ねビーム!」


 そう言ったシネネのメガネから、黒いビームが放たれる。

 騎士の一人に向けて撃たれたそれを騎士は盾で受け止める。

 しかし受け止めたのもつかの間、盾が一気に黒く変色して砂の様に溶けた。


「くっ、アダマンタイトの盾だぞ。どんな威力してやがる!」


「俺の死ねビームは一撃必殺。どんなものも一撃で死ぬ」


「そういうこったぁ! お前らはここでちびりながら死ぬんだよ! お漏らせフラッシュ!」


 ウザザが紫色の光を放つ。

 その光を浴びたものは即座にトイレに行きたくなった。


「はぁ、とりあえず片付けますか。ジャマバインド」


 騎士の足元から黒い腕が現れ、足を掴む物凄い力で騎士たちは動けなくなった。

 トイレに行きたくなり、行動の鈍っていた騎士たちはなすすべもなく拘束されたのだ、


「死ねビーム!」


「くそっ、ここまでか」


 盾を失った騎士が死を悟る。その時である。

 突如魔法の障壁が彼の目の前に現れ、死ねビームを受け止めた。


「ひ、姫様! なぜここに!? 避難されてるはずでは!」


 障壁を作り出したのはティアラ姫であった。


「私参上!」


 腕を突きのばしポーズを決めながらティアラ姫が推参した。




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