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聖剣勇者 3話

 俺は四天王の一人、ザココが囚われているという城の地下牢に向かっていた。

 腰には剣を携え、隣には姫様がいる。

 

「ザココはですね。四天王最弱と言われていまして、我々王都の騎士団でも捕らえられるかなーって思ってザココのいる城に突撃したところ、結構すんなり捕縛できたんですよね。四天王は精霊と契約していまして、雑魚いんですけど、並大抵の力では滅することが出来ないんです。それで王都の地下に囚われていると言う訳です。まぁ、頑張れば勇者様の力を使わなくても滅することは出来ると思うんですけどね」


 姫様に説明を受けた。真面目だな。ちょっと前まで○んこが一番気合いの入るときです。みたいなことを言っている人とは思えない。


「ところで、勇者様の付き人が私一人で大丈夫かと思っていません? 相手は仮にも四天王だというのに」


「確かに!」


 そう言えば、周りには騎士もいないし、俺の横にいるのは姫様だけだ。

 

「でも安心してください、私、天才何で」


「え? 天才? 聞き間違いかな?」


「聞き間違いではありませんよ、類まれない天才なんです。魔法の」


「ああ、一瞬頭の話しかと思いましたよ」


「む。何だかその言い方だと、私の頭が悪いって言っている様な口ぶりですね。私は魔法の天才ですが、頭脳の方も天才なんです」


「へぇー」


「何ですか。その気のない返事は! いいでしょう。証明して見せます。あなたがあっと驚くトリビアを教えてあげましょう! パンがなければケーキを食べればいいじゃない!」


「それダメなトリビアだー!」


 そうこうしている内に俺たちは地下牢へと入って行った。

 そしてその際奥、に一際厳重な牢屋がある。

 その奥にそいつはいた。

 でっぷりとした太った体つきに、牛の角、腹が三段腹で、牛の尻尾が尻から生えている。

 ねじれた牛の角は悪魔を思い出させた。


「面会か、この最強の四天王が一人、ザココ様に何の様かな? ぶふぉふぉ」


 臭い吐息を吐きながら、自己紹介するザココはいかにも小物だった。


「それは! 聖剣エクスカリバアアア! もしや勇者がこのザココ様をついに処刑しに来たのかぁ! ぶふぉふぉぉ!」


 ついにって生かされてる自覚あったんだ。


「まぁ、そうですね。あなたには聖剣の力を引き出す試験台になってもらいます。では勇者様頑張ってください」


 そういうと姫様は牢屋の鍵を開けた。鼻をつまみながら。

 え? 中に入るの? まぁ、仕方ないか。

 俺が中に入り、狭い空間にザココと二人っきりになる。

 そこでキィっと音がして牢屋の扉が閉められた。

 ガチャっとなって鍵が掛けられる。

 姫様?


「フレーフレー勇者様! 頑張れがんばれ勇者様!」


「あの、一対一とか聞いてないんですけど」


「気合です! 気合で倒すのです!」


 俺はザココの方を見る。足枷に重りが付いてあるようだがそれ以外は、普通だ。

 せいぜい臭い息を吐く口ぐらいしかない。


「ぶふぉふぉ、愚かな勇者よ。これがこのザココ様の策略とも気づかずに」


「ん?」


 ザココを見るとうって変わって余裕の表情を見せていた。

 さっきまでの焦る様子はない。


「仮にも精霊と契約した四天王であるこのザココ様が、勇者以外の人間に後れを取るとでも? 騎士団捕まったのは、この時、まだ勇者が覚醒していないときを狙うため! 今見せよう、真の力を!」


 ぶふぉふぉぉぉぉぉおおおおおおお!! と間抜けな叫び声が牢屋に木霊する。

 後息が臭い。

 しばらくすると、ぜいぜいと息を切らすザココ。

 はた目には何も変わっていない。

 むしろ息切れして、前より弱そうだ。

 

「ぶふぉふぉっ! 見たかこれがこのザココ様の実力!」


 見たも何もお前がやってたのは二酸化炭素を増やす作業と、臭い息の放出だけじゃねぇか。


「お前がやったの臭い息吐いただけじゃねぇか!」


 あ、言っちゃった。


「ふん、気づいていないようだな」


「何?」


 まさか次元が違いすぎて何も感じられないとか、そう言う感じなのか。


「こっそりそこの女がザココ様の息にまぎれてすかしっぺをしたという事実を……」


「ええ!?」


 思わず振り返る。そこには驚愕の表情の姫様が。マジなのか。


「ししししし、してませんよ! 私は何もしてません! 信じてください勇者しゃま!」


「いまじゃあ!」


 俺が姫様に呆気に取られていた瞬間。

 俺に隙が出来たと見たぶふぉふぉ、じゃねぇやザココが後ろから殴りかかって来たのだ。


「勇者様、危ない!!」

 

 振り返った時には、すぐそこにザココの拳が迫りくるところだった。

 やられる、そう思った直後。


「ぐべぁ!」


 上から謎の力に押しつぶされるように、ザココが地面に押し付けられ、地面にクレーターを作りながらザココがミンチになった。

 ぶしゃあっと血と肉が辺りに飛び散る。

 グロい。


「ふぅ、危なかったですね。私の重力魔法がなければ危ない所でした」


「ああ、ありがとう」


「あ、聖剣に黒いのがついてますね。たぶんそれ飛び散ったザココのう「それ以上言ってはだめだ!」え、はい」


 もし聖剣に飛び散った黒いのがザココのあれならば俺の頬についている黒いのもザココのあれという事になる。それは断じて嫌だ。

 その後、俺たちは外に出て、俺は水浴びをした。

 聖剣に触れるチャンスなのに、誰も触ろうとしないので俺が聖剣を洗う事となった。

 兵士さんに、「聖剣触るチャンスですよ」っていったら「汚ねぇものは触りたくないんだ」だと。確かに洗う前は汚かったが、仮にも聖剣に対してめっちゃ失礼じゃね?

 

「ではザココは何の役も立たなかったので、私たちだけで聖剣の力を引き出しましょう。と、その前にディナーですね」


 晩御飯か。次は何だろう。朝はフレンチ。昼はフレンチだった。

 晩御飯は、これは勘だけどフレンチかな?

 自分の個室で、ディナーを待っていると、姫様がお盆を持って入って来た。


「じゃじゃーん! ディナーは料理長に頼んで私が作りました! 女の子の手作り料理ですよ。喜んで食べてください!」


 そういわれて出されたのは黒い焦げたような物体だ。というか他にも黒いどろどろとしたのや、謎の物体が皿の上に置かれている。


「フレンチです。どうぞご賞味あれ」


「いや、これどうみてもゴミ「フレンチです。ひとまず食べてみればわかりますよ。騙されたと思って食べてください」ええー、じゃあ騙されてみます」


 とりあえず黒い物体をフォークでさして口に運ぼうとする。

 うっ、刺激臭が……。

 意を決して口に放り込む。これは女の子の手料理、これは女の子の手料理、決して劇物などではない。


「!!」


 口に入れた瞬間、俺に電流走る。


「めっちゃうまい!」

 

 何だこれは舌が痺れるほどのうまさというか、脳がマヒするほどの美味というか。


「そうでしょう、そうでしょう。まぁ、私の手料理食べた人は三時間ぐらいお腹壊すんですけど。それに比べれば些細な物でしょう」


「え……」




「ちくしょーめー!!」


 俺はトイレの中で気張っていた。

 やっぱりあれ女の子の手料理、じゃなくて劇物じゃねぇか。

 旨いと感じたのも、ご飯が美味しかったからじゃなく舌が破壊されて正常な判断ができなくなったからだろ、たぶん!

 ああ、お腹痛い。

 もう月が出始めるころだというのに。

 痛みが止まらない。

 かれこれ二時間はこうしてるぞ。

 俺は気張る。腹痛よ治れ!

 勇者何だから回復魔法の一つや二つ使えるはず。

 治れ、治れ、治れ、治れ。

 気合だー! 治れ!

 とその時である。

 俺の前に突如として聖剣が現れた。

 しかも刀身を光らせ、宙に浮いている。


『よくぞ、儂を呼び覚ました。儂こそは聖剣に宿る女神の意思』


 そういって目を瞑った白髪幼女の姿が聖剣の背後に移る。


『女神、ミルナーであ……ってなんじゃ格好そのかっこうは!』


「あの今トイレ中何で、後にしてくれません」


『あとってお前の気合で儂目覚めたんですけど、覚醒したのじゃけど』


「お腹痛いから後で」


 そういって俺は扉を開けてトイレから聖剣を放り出した。

 あー、お腹痛い。



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