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絶望していたので猫耳奴隷少女飼いました 15話

 その日、フェルンの街にとある武装集団がやって来た。彼らはスケルトンナイトと名乗っている傭兵団だ。今回スケルトンナイトはフェルンの街の領主に隣の町の領主といざこざが起きるかもしれないと呼ばれた。

 スケルトンナイトは三年前に死神と呼ばれるA級の傭兵を失っているものの、成長した団長ザックスの息子ジックスがA級になったり、小さな傭兵団を吸収したりと、その力を三年前から増している。

 そう、スケルトンナイトはレキが所属していた傭兵団だった。

 死神の名の宣伝効果もあったのか三年前からスケルトンナイトは徐々に有名になり、今では雇ってるというだけで武力威圧効果がある。

 領主はスケルトンナイトを雇ったから、こっちは強い戦力を持っていますよと隣の町の領主を威圧しているのだ。

 そしてできれば相手の領主がビビって戦争が起きなければいいとフェルンの街の領主は思ってる。

 滞在するだけでも金が手に入るが、戦争になればもっと金が手に入るとのことで傭兵団は逆に戦争が起きないかと思っていた。

 スケルトンナイトたちは町に着くと取りあえず領主が用意した屋敷に荷物を降ろす。

 一通り荷物の整理がつくとリーダーであるS級の序列十一番のザックスは、仲間を全員庭に集める。

 

「では今から指示を出すぞ~、よく聞けよー」


 てきぱきと指示を出すザックスはさすが一級傭兵団のリーダーと言ったところか。

 指示を受けて傭兵団の面々が仕事に付いて行く。


「じゃあ、バズド、ゲール、デミ、の三人はいつも通り、ギルドマスターに冒険者の戦力を聞きに行ってくれ。ジックスお前は、俺と一緒に領主さまにご挨拶だ」


「了解だ、団長」


「分かったよ、父さん」


 B級の実力を持ち、観察眼に優れるバズド、ゲール、デミはその観察眼を生かし、冒険者の質を実際に見て確かめるという役割も持っている。

 バズド、ゲール、デミは早速冒険者ギルドに向かい、ギルドマスターと面会した。

 領主から話は通っているため、ギルドマスターとはすぐに面会出来た。

 一時間ほど、冒険者の数や、冒険者で強い人間の情報、冒険者の質について会話が行われた。

 

「とまぁ、こんな感じだな。他に聞きたいことはあるか?」


 ギルドマスターの中年の男がバズドたちに尋ねる。ギルドマスターは元A級の男だ。この世界では強さが求められるので、必然的にギルドマスターは強い人間になる。

 質問に交渉役のバズドはいつもしていることを話す。


「一番強い冒険者というと誰でしょうか? 戦争というのは戦うものの質も大切ですが、士気もかなり重要なのです。士気を上げる簡単な方法として、一番強い人間に先頭立って貰うということがあります。そうすることで、俺らには強者がついているとはっきり感じられ士気が上がるのです」


「なるほど、この街で一番強いと言うとアマヤだな。本名は、アズチ・アマヤっていうらしい。あいつはA級だが、確実にS級の実力は持っている。この街にS級はいないから、必然的にアマヤが一番強いという事になる」


 変な名前だなと思いながらも、それを顔に出さずバズドは話を続ける。


「ではそのアマヤに会わせて貰えないでしょうか。打ち合わせの様なものをしたいのです」


「残念ながら、アマヤは今朝に依頼で出かけてしまってな」


 そこでバズドはおかしいなと思う。町の中で一番強い奴は一番の戦力だ。戦争が起きようとしているのに、一番の戦力を手元に置かないとはどういう事なのだろうか。そのことをギルドマスターに聞いてみる。


「アマヤは変わった奴でな。力に執着しないんだ。Aランクの依頼はギルドマスターが処理することになっているから、あいつの強さは俺ぐらいしか知らねぇ。そのせいか、見た目も相まって今でもEランクの冒険者に間違われるぐらいだ。それに優しすぎる性格でな、人殺しとかするタチじゃねぇんだよ。人の上に立つ器でもないしな。だから平常運転してもらう事にして貰った」


 そんな人間がいるのかとバズドたちは思ったが、世界は広い。いるところに入るのだろうと思った。


「アマヤを除けば、レキかね。あいつは冒険者じゃないが」


「「「レキ!?」」」


 その言葉にバズドたちは思わず反応してしまう。バズドたちはレキとそれなりに仲のいい関係だったからだ。レキは三年前に突如として行方不明になった。依頼に出かけたっきり帰ってなかったのだ。傭兵団の中ではレキは依頼先で死んだものと思われていた。


「失礼、ギルドマスターも聞いたことがあると思いますが、うちの傭兵団には死神というあだ名で知られた団員が過去にいまして。そいつの名がレキと言うんですよ。猫の獣人でしてね。あいつの戦いはまさしく死神、戦場で幾多の命を刈り取ってきました。俺らはそこそこ仲のいい関係だったんで、少し驚いてしまいました」


「猫の獣人ねぇ。うちのレキも猫の獣人だよ。というのもレキはギルドの食堂で働いているウェイトレスでね。だが、実力は折り紙付きだ。この前来たS級の試験官相手に勝っていたからな。俺は見てないがうちのA級でも勝てなかった相手に、軽々と勝ってしまったって話題になったよ」


 そのとき、バズドたち三人は同じことを思っていた。


(((絶対うちのレキじゃねぇな)))

 

 理由は簡単、ウェイトレスなどレキは絶対にやらないからだ。むしろウェイトレスをこき使うほうだ。


「まぁ、レキは特殊な事情があってね。戦争には参加させるのには了承がいる。まぁ、隠してるものなんだけど、もうとっくに町の人間にはばれてるからそこら辺の事情は町の人間に聞いてくれ。俺が言うと約束破りになってしまうからな」


 レキがアマヤの奴隷という事はアマヤからのお願いで隠しといてくれとギルドマスターは言われている。と言ってもレキがアマヤの事をご主人様と呼んでいたり、首にスカーフを巻いていることで、アマヤの奴隷だということは周りに知られている。

 

「はぁ、良く分かりませんが聞いてみますよ」


 そこらへんで昼の時間という事で面会はお開きになった。

 三人はギルドの食堂で食事をすることにする。

 食事を取るという事も勿論の目的だが、冒険者の質などを直に見て判断するという事もあった。


「まさか、ここでレキの名を聞くとはな」

 

 この中で一番身長の高いゲールが食堂に向かう間に呟いた。


「まぁ、でも同一人物って事はないだろう。だって、ウェイトレスだぜ、ウェイトレス。ありえないだろ」


 それに一番身長が低いデミが応える。


「そうだな。もしレキがウェイトレスをやってたら腹抱えて笑い転げる自信があるぜ」


 バズドが冗談を言って、三人で笑い合う。

 しかし、その笑いはすぐに止まることになる。


「そうか、じゃあ腹抱えて転がってろ」


 食堂に着いた三人の前に、黒い髪の猫の獣人が立っていたからだ。

 整った顔立ちは何も知らない人には死神と知らない人には美しく見えるだろう。それは傭兵団にいたころから変わっていなかった。

 変わった部分は目がオッドアイになっている部分と、身長、胸の大きさなどだが、三年前の面影は残っている。

 美少女から美女になったレキを見て、三人は固まった。


「レ、レキ? マジでレキなのか?」


 少しの沈黙を得て、バズドが口を開く。


「そうだけど。後、そこにいるとお客様の邪魔になるから、椅子に座れ」


「あ、ああ。そうだな」


 レキに言われて三人は椅子に座った。座った後に、三人はレキに問いかかる。


「なぁ、レキ。マジでお前がレキだとしたら、この三年間何をやってたんだ?」


 その問いにレキは、黙って首に巻いていたスカーフをずらした。そこから見えるのは奴隷紋だ。それを見て、三人は即座に意味を理解した。


「なるほどな。いろいろあったんだな」


「まぁな。それにしてもこんなところでお前らに会うとは、数奇だな。もう私には関係のないことだと思っていたが」


 傭兵団の頃の口調で、レキが喋る。喋る相手が傭兵団の三人という事で、自然と過去の口調になってしまったのだ。しみじみと傭兵団のころを思い出すレキは、少し躊躇しながら、有ることを聞いた。

 

「なぁ、オーエンは今どうしてる?」


「オーエン? あいつは、傭兵団の資金を着服していることがばれて追放されたよ」


「そうか」


 答えたデミの言葉に、レキは何も感じなかった。奴隷を自分に落とした元凶であるオーエン。オーエンに恨まれることをして自業自得だとレキが反省したのは、自分が天笶に拾われてからだ。その前は、絶対にただでは済まさないと復讐の業火の対象だった。

 そんな思いをしていたのに、今は何も感じない。

 自分が精神的に成長したからだなと、レキは思う。

 

「オーエンがどうかしたのかよ。あいつとレキは仲良くなかったよな?」


「ああ、あいつが私を奴隷に落とした実行犯だからな。一応今どうなってるのかを聞きたくなった」


「「「ええええええ!!」」」

 

 三人が驚きの声をあげる。オーエンがレキを奴隷に落とした犯人だという事もそうだが、それをレキが平然と言ったことが驚きを加速させていた。

 以前の、三人が知ってるレキなら、絶対にこんな平然と、他人事の様には言えないはずだ。

 机でも蹴っ飛ばして、怒り狂いながら言うのがレキのはずである。

 

「お、お前、本当にレキなんだよな? そっくりさんとかじゃないよな?」


「私はレキだけど、どうしたんだ? そんなに驚いて」


「驚きもするだろ! 以前のお前じゃあり得ない、態度だぞ!」


「まぁ、私も成長したんだろ。それより、さっさと注文しろ。お前たちだけに構ってる暇はないんだからな」


 変わったレキに驚かされ続けながらも、バズド、ゲール、デミの三人は自分の使命を思い出し、食事をとりながら、冒険者の質を直に判断するのだった。


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