植物転生 19話 黒竜死す
黒竜は千年を生きた古代竜ともいえる竜だった。
それ故に、ここに誘き出されたことも理解していた。
だが、百歳ぐらいの時ならいざ知らず五百歳を超えてからは竜に敵はいなかった。
どんなものでもすべて牙で破壊してきた。
しかし黒竜は大樹を前にして感じた。
大樹が内包する恐ろしいほどの魔力を。
何だこれは? まるで自分の持っている魔力がカスの様ではないか。
逃げ出したい。だが一度相対したのだ。どちらかが死ぬまで終わらない。
竜はそう考えていた。共存などという言葉ははなからない。
二匹が出会ったら一匹が死に、残りが生き残る。
竜の摂理はそうだった。
そしていつも生き残って来た。
逃げる選択肢も、共存の選択肢も存在しない。
黒竜は魔力を身体強化魔法に変えて、身体を強化する。
がばっと大口を開けて、亜音速で大木に近づく。
そして大木に噛みつこうとした瞬間。
重力魔法が体にかかった。
ビキビキと空間が割れるような音共に魔法が分解される。
何枚か鱗が負荷に耐え切れず割れた。
今まで魔法で一枚の鱗も割られたことなどなかった。
だが、この魔法は耐えれる。
歯が幹に接触した。
何だこれは、固い。
尋常じゃなく固い。
さらに自分に重力魔法がどんどん威力を増して、かかってくる。
鱗がビキビキと音を立てて割れる。
黒竜は一旦その場から離れた。
こうなったらブレスしかない。
一撃で決めなければ、こっちが潰される。
黒竜は全ての魔力を口に集中させ、放とうとした。
しかし、その次の瞬間重力魔法が解除され、ただの魔力が黒竜を襲った。
ただ圧縮された硬い質の魔力。黒竜の鱗は魔法は分解するが魔力は分解しない。
ぷちっと黒竜は虫けらのように潰された。
あー、あせった。
今まであの位の大きさの黒竜は何匹か栄養にしてきてる。七匹くらいだったかな。
だから油断してた、まさか魔法を分解する鱗を持っていたなんて。
途中でじゃあ普通に魔力でつぶせばええやん。という事に気付いて一瞬で潰したが。
噛まれたけど、傷はついていない。
むしろあっちの牙に傷がついていたな。
今はもうミンチ以下になって、俺に吸収されたが。
俺は団体の方を見る。
人間の団体は手を万歳にして喜んでいる。
あいつら俺に押し付けやがって、まぁ、利用されるのも自然の摂理か。
俺はお前らが攻撃しない限り攻撃しないよ。
したら一瞬で潰してやるがな。
今のところ共存していいかなって思っているのは火傷女ぐらいだ。
他に攻撃されたら一瞬で潰す。
火傷女には友好の証として、一枚葉っぱも上げたし、こっちもいろいろ貰っている。
取りあえず、火傷女の町を守れたってことで今回はいいかな。




