植物転生 18話 VS黒竜
「緊急! 緊急事態だ!」
冒険者ギルドにてそんな声が響く。
声を発しているのは一つのパーティのリーダー。
彼はこの町から五キロ地点にある、暗黒大樹林へと続く森に調査に行っていた者だ。
最初は黒竜をみたという言葉から始まり、それを調査しに行ったのだ。
結果、彼らは眠っている黒龍に遭遇した。
大きさは五十メートルを超える化け物。
おそらく五百年以上生きている固体だ。
町一つぐらい簡単に滅ぼす。
事情をギルドマスターに彼らは話した。
「それはマズいな。黒竜となると魔砕鱗があるだろう。ヴァ―レル様では敵わないかも知れん」
魔砕鱗とはその名の通り魔法を砕く鱗だ。
黒竜種と呼ばれる竜は全てがこの魔砕鱗を備えている。
魔法を魔力に分解してしまうのだ。
それ故に魔法を通さない鎧の材料になったりするのだが、今はただただ厄介。
町に在住する三百余りの冒険者ではおよそ勝ちの芽はない。
「ひとまずヴァ―レル様に報告だ! ギルド員は冒険者に緊急招集をかけろ!」
ギルドマスターは、その足でヴァ―レル子爵の屋敷に向かい、事情を話した。
「黒龍か、この町には私がいるがあいにく魔法使いだからなぁ。だが、上手くいけば誰も犠牲を出さずに倒す方法がある」
「な、なんと! それは如何様な方法で!?」
ギルドマスターはヴァ―レル子爵から作戦の内容を聞いた。
簡単に言うと、魔物をおびき寄せるための匂い袋などを用意し、黒竜をある地点までおびき寄せる。
そのあと興奮剤などで攻撃的させ、あるものに攻撃させる。
「それで、そのあるものとは?」
「大樹だよ」
Aランク冒険者であるネフォスは緊急依頼として、相棒のバロ共に魔獣をおびき出す匂い袋の準備をしていた。
彼らに与えられたのは黒竜以外の釣られた魔物相当という任務だ。
総勢、百五十人の冒険者がとある大樹の元に集まっている。
「こんだけの匂い袋が並ぶと壮観だな」
町中から集められた匂い袋が丘に集められ山盛りとなっていた。
「それで何でマリーがここにるんだ?」
「私がこの大樹と一番付き合いが長いからね。ほっとけなくてきたのさ。しかしヴァ―レル子爵様も大樹に竜をぶつける作戦を立てるなんて」
「正気を失ったか? ヴァ―レル子爵様も」
ネフォスには植物に竜の相手をさせる何て、正気には思えなかった。
「誰が、正気を失ったって?」
そこにはヴァ―レル子爵が立っていた。
「こ、これは失礼しましたヴァ―レル子爵様」
「まぁ、作戦どおりにいけば確実に勝てるよ。私が指示を出すから君たちはあぶれた魔獣を狩ればいい。では匂い袋を破裂させ、森の方へ風魔法で流せ!」
その合図とともに、匂い袋はたたっきられ。中から魔獣をおびき寄せる成分が溢れだす。
それを魔法使いたちが風魔法で森に流す。
三十分もすると魔獣たちが集まって来た。
どれも興奮しており、ただただにおいのもとに集まろうとしている。
草食の魔物、肉食の魔物、二足歩行の魔物、様々だ。
「取りあえず、殺すか」
ヴァ―レル子爵が呟いて。
風魔法で宙に浮き、風の刃で魔獣たちを切り裂いていった。
一瞬で十を超える魔獣の首が飛ぶ。
「あぶれた魔物は俺たちが仕留める! 迅雷のネフォスの俺につづけぇ!」
風の刃の猛攻を抜けた、魔物たちを冒険者たちが攻撃していく。
そうして一時間もしたころだろうか。
「黒竜だ! 黒竜が現れた!」
森の方角から出て魔獣を追って黒竜が姿を現した。
溢れ出る魔力、その体躯は見るものを圧倒した。
「作戦を続行する。総員、大樹の裏に移動せよ! 同時に風魔法で匂いを消せ!」
ヴァ―レル子爵の言葉で全員が大樹の裏に移動する。
黒竜が魔獣を喰らいながら、こちらへと向かって来る。
そして残ったのは、黒竜と冒険者達、大樹だ。
誘われた魔獣は幸い強い者はおらず、一匹残らず駆除された。
黒竜が大樹に迫る。




