植物転生 5話 生後一年、天敵現る
俺の意識が芽生えて一年。
俺はかなり成長していた。
大きさは一メートル以上になり、枝が七本生えて、葉っぱは三十枚以上生えている。
それもこれも栄養を独り占めできるようになったからだろう。
俺はあれから雑草をから魔力を抜き出す、雑草狩りを続けた。
その結果、半径五メートルから雑草は死滅した。
雑草が死滅したことになり、この辺の栄養は俺が独り占めできたのだ。
とはいえ、半径五メートルの中には大木が二本生えている。
こいつらは強い。魔力を引き出そうとしてもうんともすんとも言わない。
空気からがレベル1だとしたらレベル1000ぐらいの難易度だ。
ちなみに雑草は10ぐらい。
ともかく生存競争を有利に進めた俺は、それなりの木に成長したのだ。
魔力の使い方も分かった。地面に流すと何故か地面から吸い取れる栄養が上がるのだ。
何かミミズが土の栄養を豊富にするみたいに、魔力にも土壌をよくする効果があるのだろう。
俺が土を育てた!
と言う訳で今日も今日とて、魔力を吸い取る行為をしていた。
その時である。
角がらせん状になっている鹿が現れた。
別に珍しい光景でもなんでもない。
動物はいろいろ見てきた。どれも知識とは違っていたが……。
だが鹿は俺に近づくとあろうことか、葉っぱをむしゃってきたってではないか。
一枚、また一枚と葉っぱが喰われる。
結構な勢いだ。すでに三分の一が喰われた。
痛くはない、だが感覚はある。不快だ。
だが植物の俺には何もできない。
ただ喰われるだけなのか……。
いや、俺には魔力を吸収するという雑草ハンターとしての武器が……。
効かねぇ! これ大樹よりも拒絶感が高い。レベル3000ぐらいか。
なら逆だ。俺の魔力をお前に注入していやる。
葉っぱをむしゃろうとした瞬間に、魔力を鹿にねじ込もうとする。
くらえ、魔力キャノン!
魔力キャノンが鹿に命中すると、鹿はびっくりしたのか、小さくマェ!っと鳴いた。
ふるふると首をふり、もう一回葉っぱを食べようとする。
繰り返す、くらえ、魔力キャノン!
何回かやると、鹿は俺の事を不気味だと思ったのか、注入される魔力の拒絶反応が痛かったのか、離れていった。
葉っぱを半分くらい食べられたが何とか撃退した。
畜生鹿め、いつかぶっ殺してやるぜ!




