レボリューションカードダス 4話 天空の昇華とプレミアム
空を飛ぶ邪竜LV10の足に捕まる俺が、地面に立っている邪竜ミラージュの頭にいる白仮面を見下している。
邪竜ミラージュが頭の上を払うように動かす。
それを白仮面はジャンプして避ける。
そして空中に立っていた。
いつの間にか手札が二枚になり、白い靴を履いている。
白い靴は羽が生えており、これにより宙に立っている様だ。
白仮面が空中を歩いてこっちに向かって来る。
「縦回転して、尻尾で叩き落とせ!」
俺を足に掴ませたまま邪竜LV10が縦に回転する。
まるで安全装置がないジェットコースターのような気分を味わいながら、俺は邪竜LV10の尻尾が白仮面に躱されるのを見ていた。
だが、風圧で体勢が崩れた、そこに邪竜ミラージュのパンチが炸裂する。
そのまま白仮面は地面に叩き付けられ、転がっていく。
だが転がっている間に、ドローの時間が来たようで、器用に転がりながらドローする。
しかも、天雷の槍を手放していない。
俺はその様子を見ながら、カードをドローした。
「来たか! 俺は進化の鼓動を発動する!」
進化の鼓動……名前は知っている。アキラから貰ったメモに優先的に手に入れろと書いてあった、ゲームで必須のカードだ。
それを白仮面が発動する。
効果はレボリューションカードを手札に加えるという効果だ。
デメリット無しのサーチは単純に強い。
だが、白仮面の手札は増えない。
ドローで四枚に増えたカードが進化の鼓動を使ったことで、三枚になるだけでカードは増えない。
「な、何故だ!?」
「それはな! 俺が邪竜の舌でドローした時、お前のレボリューションカードを引いたからなんだよ!」
「何だと!?」
「俺はレボリューションカード、天空の昇華を発動! 使うのは、邪竜ミラージュ!」
邪竜ミラージュが邪竜LV10の姿から、白いドラゴンへと姿を変えていく。
コウモリのような羽は天使の羽になり、色は純白となって目は赤く光る。
『RM 白邪竜LV15
出てきた瞬間、敵に中ダメージを味方を中回復する依怙贔屓ドラゴン。テラ強い』
「馬鹿な! 相性の悪い進化は大半が自滅するはず! 俺が未確認のモンスターだと!」
キーカードを奪われたことと、邪竜ミラージュ進化したこと、驚きの連続で、足が完全に止まっている白仮面。
そこに白邪竜LV15の咆哮が襲いかかる。白と黒の波動が広がり、俺のHPが回復すると同時に、白仮面にダメージが降り注いだ。
その場で後ろに吹き飛ばされ、さらに俺がここぞというタイミングで使ったせいか、やりを手放してしまった。さらに衝撃で履いていた白い靴が粉々に砕け散る。
「よし、行くぜ! 邪竜ブレス!」
白邪竜LV15の口元に青白い光と赤黒い光が収束していく。
そして辺りの地面を吹き飛ばしながら、白邪竜LV15がブレスを吐いた。
その瞬間に、俺は邪竜LV10の足を離す。
大の字で落ちていく俺は、空中でくるりと回転する。
そこには白仮面がいた。
手札が三枚から二枚に減っている。やっぱり、咄嗟にお前はそうすると思ったぜ。
「な、何故ばれた!」
「お前が転移できるのはバレてるんだよ!」
俺は白仮面を踏みつけて、白仮面を絶賛吐かれ中のブレスの中に突き落とした。
「ぐぁあああああああああああああああ!!」
地面に白仮面が背中から落ち、俺はきちっと着陸する。
相手のライフポイントは残り24で、俺のライフポイントは871だ。
「まだ……だ! まだ終わって、ふぎゅ!」
白仮面が何か言っている内に、その上に邪竜LV10がドスンと降り立った。
それでライフが0になり、俺は勝利した。
やったぜ。
***
フリー対戦で手に入った報酬は7万DPと魔黒石という破格の報酬だった。
7万DPがあれば、もっとデッキを強化できるかもしれない。
俺はもっともっと、ロマンを高めてギャンブルも高めて、かっこいいデッキを作りたいんだ。
俺のゲームの中の運は抜群にいい。
ひとまず、アキラに1万DPは返すとして、残りの6万で俺の運命力に任せて強いカードを手に入れよう。
これもあの白仮面のおかげだな、わはは。
さて俺はカード売り場にやって来た。
そこは役所みたいな場所だった。受付があり、そこでDPを支払ってカードパックを買っている様だ。冒険者ギルドみてぇ。
俺は最新のパックを買って、デッキを強化することに決めた。
なので俺はここにパックを買いに来たという訳だな。
壁に買えるパックが表示されているが、どれがいいか分からない。安いものは100DPで一番高いのでも10万DPだ。
俺がどれを買っていいか悩んでいると、お得情報と書かれたポスターを発見する。
『スーパープレミアムパック エンド・オブ・ザ・ワールド 普段10万DPの所を今日だけ5万DP!』
パッケージは隕石が落ちていく様子だ。いかにも厨二っていう名前のパックだが、嫌いじゃないぜ。
スーパープレミアムパックはカードが一枚しか入っていないらしい。本当にゴージャスっていうか、特別だな。
だが、入っているのは強力なカードが多くて、売り切れも度々あるらしい。
データの世界で売り切れとか何言ってんだって感じだが、このゲームでは売られるパックは逐次変わり、在庫とかも決まっているらしい。
それによる色んな効果があるらしいが、詳しくは知らない。
とにかく売り切れが多いという事は、早くしないとダメだな。
俺は売り切れにならないか、ドキドキしながら列に並ぶ。
俺の番がやって来たので、受付のフェアリーに話しかける。
「エンド・オブ・ザ・ワールドのパックって売り切れてないですか? 1パック買いたいんですけど」
「余ってますよ、むしろ余りまくってます。今なら半額で提供していまして、10パックで1パック付いているというサービス中です」
うーん? 何で人気のはずのスーパープレミアムパックが余りまくってんだ? 良く分からないが、ラッキーなのか?
「すいません。俺7万DPしかないんで、1パックでいいです」
「そうですか、では提供しますね」
そういった次の瞬間フェアリーの手にパックが握られていた。
俺の画面端にある、所持DPから5万DPが引かれ3万1000DPになっている。
俺はエンド・オブ・ザ・ワールドのパックを一つ受け取り、受付から離れる。
そしてカード売り場の奥の開封スペースへとやって来た。
「あ~、もう300パックは開けてるのに、魔女っ子シリーズが揃わねぇ!」
頭をガシガシとして、テーブルの上に山盛りのパックを乗せている人の隣に座る。
前の方で開いている席がそこしかなかったからだ。
別にすぐ開封は終わるし、そのためにわざわざ奥の席に行くつもりはなかった。
「ちょっと、失礼」
そういって俺は頭ガシガシ君の横に座る。左に頭ガシガシ君が座っており、右は席がない。
「ん? ああ、気にせずどうぞ。ってお前それ買ったの?」
俺が今から開けようとしたスーパープレミアムパックを見て頭ガシガシ君が尋ねてくる。
「おう、エンド・オブ・ザ・ワールドのことか。さっき7万DPを運よく手に入れちゃってね。1パックだけ買ってきたんだ。俺はこれでデッキを強化するんだ!」
「あちゃー、お前初期服のままだし、なけなしの金をはたいて買った感じ? 半額に騙されちゃって買っちゃったんだなぁ。……ああ、失礼なこと言ってすまん」
この言い方、何かあるのか? もしかして外れのパックでも買った?
「いや、別にいいんだけど。これって外れのパックとかなの?」
「簡単言うとそうだな。使いにくいカードばっかりはいっているんだよなぁ、それ。ウルトラレアのカードしか入ってないのに、安い奴じゃ1000DPとか売られてるぜ」
マジかよ。安すぎだろ。これは失敗したか?




