2章 世界は表と裏でできている ②
ここから怒涛の設定大放出が始まります。
細かい部分を詰めながら書いてるところがあるので、
わかりにくいとかおかしな点とかあったらお知らせください。
在人は顔をしかめながらも、男について歩を進めていた。その後ろに観咲と環奈がついていて、特に環奈の表情はとても心配そうだった。
「本当にいいのか? 車椅子でも用意するぜ?」
男は振り返ってそう告げる。
「リハビリみたいなもんですよ」
「そうかい。ま、シンドくなったら言ってくれ」
男は過度の気遣いをしようとはしなかった。在人は別に見えを張っているわけではなかったが、こういう理解は男の方が心得ているものだ。
在人達が進む廊下は近未来的……いや、むしろSFチックな印象を与える場所だった。歩くたびにカツカツと音が響く。観咲が言っていた通りならここは地下にあるはずで、音の反響具合からもそれを窺わせた。
しばらく進むと大きな扉の前にたどり着いた。
「ここが目的地。うちの指令室だ」
「指令室……?」
在人達の疑問を置き去りにして男は進む。もう扉はすぐそこなのに、まるで止まる気配がない。
すると、扉横の壁に付いた装置からピピッと電子音がして、扉が開いた。そしてそのまま、止まることなく男は扉の向こうの部屋へと入っていく。
続いて部屋に入った在人達は、その光景に驚きを露わにした。
「うわ、なんだこれ……」
そこには巨大なモニターと各種計器類。それを操作しているらしき数人が席に座り、漫画で見たような指令室がそのまま出てきたようだった。
また、奥には冬華とアリシアが立っており、在人達を見ていたが、表情からは何を思っているかわからなかった。
「さて、それじゃ話をしようか」
在人たちが放心していると、男はゆっくりと語りかけてきた。
「まずどこから話そうか……。そうだな、じゃあここについてにしよう」
在人は無意識に喉を鳴らしていた。集中しようという気持ちが緊張となっていたのだ。
「俺たちは『Belonging to Research Organization and Solving the Mysterious Case with Psychic Demonstration』、通称『BeSPsyD』だ」
「『ビサイド』……?」
「そう。一般的には非公式な、日本国における能力研究のための組織。そこの所属の実働チームが俺たちだ。
俺は司令をやってる獅童富嶽ってんだ。よろしくな」
「……国家機関だって言うのか?」
在人の言葉に富嶽はふてぶてしく笑う。信じるかどうかを委ねているのだろうが、反応を楽しんでいるようにも見える。どちらにしても、中々意地の悪い笑い方だった。
「……昔から、歴史上でたびたび、特殊な能力を持つ者たちが確認されていた。いくつかの重大事件にも関与した可能性はあるが、まぁそれは置いておいて、そういった者たちは表舞台から姿を隠し、各国によって存在を秘匿された。
理由は研究や迫害だな。力を我が物にしようとするところもあれば、宗教的に存在を認められないなど、いろいろだ。
だが近年、国際的な協調が進んだことと、研究技術の発展によって、世界的に能力研究が盛んになっている。……きちんと協力体制が敷かれているとは言えないが、いくつかの共通認識ができた。そのうちの一つが、研究が進むまで一般には公開しないこと。よくわからねぇことを大っぴらにしても混乱を招くだけだからってな。なんでまぁ、ここは一応秘密組織なわけだ」
ここまでの説明で衝撃を受けたのは環奈だけであった。
「え? 何? 能力って何?」
彼女だけは不可思議な能力を目にしていない。戸惑うのも無理はなかった。
とはいえ、それを確認しておくことは在人と観咲にとっても必要なことだった。
「結局、この力って何なんですか?」
この力、という言葉に環奈はまた驚きを見せて観咲を見たが、観咲の問いかけに答えたのは富嶽ではなかった。
「それは、わたしが答えようじゃないか」
いつの間にか開いていた扉から入ってきたのは、とても理知的な雰囲気の白衣の男だった。
男は中指で軽く眼鏡を押さえてから、
「初めましてだ、諸君。研究チームの弧月という」
「主任だから偉いぜ〜。学会とかじゃあ、誰が呼んだかプロフェッサーアークってな。その筋じゃあ有名人だ」
富嶽が茶化すように補足を入れる。案外……という程でもないかもしれないが、随分と気さくなタイプの人らしい。
「ああ、そちらで呼んでくれても構わないよ。大した違いでもないしね」
対して、表情一つ変えない弧月の台詞は親しみなのかどうか、在人達にはわかりにくいものだった。
「さて、能力については、実のところわかっていないことがたくさんある。これは研究が最近進むようになったからというわけではない。偏に研究のやり難さ故だ」
「……どういうことですか?」
在人にはその可能性がいくつか推測できていたが、まずはおとなしく話を聞くことにした。
「そうだね、まずはわかっていることを話してしまおうか。
我々が言う能力というものは、一般的には超能力、と呼ばれるべきものだ」
「超能力?」
「そう。よく創作物の中で見かけるだろう? 念動力とか念発火、瞬間移動に過去視。そういうものと同質のものだと思ってくれていい。だから、超能力。世界共通の認識だ」
「超能力……?」
在人と観咲とは違い、環奈はまるで動揺を抑えられなくなっていた。無理もないことだろう。漫画に慣れている環奈であっても、それが実際にあると知らされて簡単に信じるのは難しいのかもしれない。
「え? もしかしておにぃちゃんたちも何かできるの? いいないいな、見せて見せて! ていうかわたしも欲しい! どうすればいいの?」
「落ち着け」




