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相棒はあれにワンパンされるくらい

11/27) プロローグの追加を行い、5話⇒6話になってます。ご注意ください

3/17) パラメータのアルファベット表記を管理のしずらさとか諸々の事情により数値表記に変更し、ついでにパラメータ値の微調整とかスキル名の変更とか色々してます。

それに伴い、話の流れ自体はあまり変わりませんが、台詞等も多少変更いたしました。

 ついさっき真っ赤な顔で部屋に戻ってきた小森ちゃんは、毛布を頭から被って「あうぅ」とか「えぐぅ」とか仕切りに呻き声を上げている。


 どうやら先ほどのやり取りが、思いのほか恥ずかしかったらしい。

 きっと、さっきは切羽詰まっていたため、そこまで頭が回ってなかったのだろう。


 こういう時、どう声を掛けてやれば良いのだろうか?

 「トイレを我慢する小森ちゃん最高だったよ!」とか言って慰める自分を想像して、どんな特殊趣味の変態だよと想像を打ち消す。


 まっ、ほっときゃそのうち出てくるだろう。


 彼女をしばらく放置し、ベッドに横になって微睡んでいると部屋のドアを叩く音がした。


「夕飯持ってきたよ! ちょいと開けておくれ」


 どうやらこの宿では、食事を部屋に届けてくれるようだ。

 まあ、食堂らしきものも無かったしな。


 ドアを開け、礼を言ってから女将さんから食事の乗ったお盆を受け取り、ベッドと脇のサイドチェストの上に乗せた。


「しばらくしたら回収にくるから、さっさと食べとくれよ」


 そう言って女将さんが立ち去るのを確認してから、俺は溜息を一つ吐いた。


 想像以上に質素な食事だ。

 お盆の上には、固そうな黒パンが二つと、野菜くずと茶色い干し肉らしき物が浮かんだスープが二皿。

 量的には足りそうだが、問題は味だ。


「ご飯だぞー、小森ちゃん。一緒に食べようか」

「…………お先に、どうぞ」


 ピクリと毛布が揺れ、返事だけが返ってきた。


 仕方が無いなと俺は、まず黒パンを手に取り口に入れてみる。


 感想は味以前に、ただただ固いという物だ。

 その固さは、煎餅とかのパリッとしたものではなく、例えるなら木の皮に近い物だった。

 すぐに嚙み切ることは許されずに、噛めば噛むほど苦さとほのかなかび臭さが口の中に広がる。


 これに比べれば、日本でスーパーで売っている安物の食パンだって極上の一品だろう。

 

 二口目以降はスープに浸し、ふやかしてから食べた。

 スープも薄い塩味しかしない、出汁とか何それ美味しいの?ってレベルであったが、だいぶマシであった。

 どうにかパンを処理して、最後にスープで口直しをして完食した。

 泥を口にした後、泥水で口を漱いだようなものだが、それでもなんぼかマシだ。

 

 これを毎日食う羽目になるのか……無理だな。


 とはいえ、栄養摂取は必須である。


「ごちそうさまでした。小森ちゃんも早く食べちゃいなよ、なかなかの味だったよ」

「はい…………では、頂きます」


 声を掛けると、もそもそと寝床から這い出してきた小森ちゃんが、ベッドに座って食事を始める。


「…………うぅ、不味いです。騙しましたね……?」


 パンを咥えて暫くの間もにゅもにゅしていた小森ちゃんだが、すぐに諦めてパンを皿の上に戻してしまった。


 騙したというのは言いがかりも甚だしい、俺は美味しいとは一言も言っていない。

 まあ、俺だけ不味い物を食うのも癪だからな。


「まあまあ、食事は大事だよ。出来るだけは食べな、せめてスープくらいはな」

「あうぅ…………ならスープだけで」


 「えぐっえぐっ」とえずきながらスープを不味そうに啜る小森ちゃんを見てると、嗜虐心が鎌首をもたげてくるが、慌てて心に蓋をする。

 いかんいかん、これだけは駄目なやつだ。


「うぅ、せめて『通販生活』さえ使えれば……」

「さすがにそれは無理だろう。この世界に通販なんて無いだろうし」


 しかも通販生活をするなら良いけど、使うってのは日本語としてどうなんだ?

 小森ちゃんの呟きにツッコミを入れると、きょとんとした顔で何でもない事のようにこう返して来た。


「いえ、その通販でなくてですね……コンビスキルの『通販生活』ですよ」

「は? 何それ、どゆこと!?」

「ひうっ!? …………えと、その……言ってませんでしたっけ?」

「聞いてないよ……まあでも、聞かなかった俺も悪いよな。改めて教えてくれるか?」

「はい……では、えと……『ステータス表示』って、念じてみてください」


 ふむふむ、『ステータス表示』か。


┌─────────────────────

│【小森 陽雪】引きこもりLv1

│[パラメータ]

│ 筋力:1(+0) 耐久:1(+0) 敏捷:2(+0)

│ 器用:5(+0) 魔力:7(+3) 精神:1(+0)

│[クラススキル]

│ 内弁慶

│[コンビスキル](SP:0)

│ 通販生活Lv2

├─────────────────────

│【山城 護】自宅警備員Lv1

│[パラメータ]

│ 筋力:3(+0) 耐久:2(+0) 敏捷:2(+0)

│ 器用:6(+3) 魔力:5(+0) 精神:3(+0)

│[クラススキル]

│ 内弁慶

│[コンビスキル](SP:2)

│ 拠点設営Lv1

└─────────────────────


 言われた通り念じると、俺と小森ちゃん、2人分のステータスが表示される。

 表示順を見るに、小森ちゅんが主で俺が従の扱いのようだ。

 一言モノ申したい、責任者は何処か。


 文句を言っても始まらないので、ステータスを順に見ていく。

 まずは小森ちゃんの『引きこもり』を見て思わず「ブフォ」っと噴き出してしまった俺だが、


「『自宅警備員』ってなんでやねん!?」


 とツッコミを入れてしまい、


「それ、もうやりましたので…………心の中でですけど」


 ツッコミのツッコミも入れられてしまう。


「ゴホン、そうか、まあいい。このパラメータの括弧の+3とかは補正値か何かなのか?」

「はい……今付いてる補正値はクラス特性による補正値らしいです。私の場合は魔力が+3されて、実質10になるそうです」

「なるほどね、ちなみに小森ちゃんのパラメータだとどれくらいの強さになるんだ」

「えとですね…………恥ずかしながら、その…………ゴブリン…………」


 良く聞こえなかったけど、ゴブリンレベルって事か?

 小森ちゃんのほうに耳を傾けて聞き返す。


「悪いもう少し、大きい声で頼めないか?」

「えと……ゴブリンに…………けるくらい……」

「すまん、もっかい頼む」

「だから! ゴブリンにワンパンで負けるくらいですって!」

「あぁ、そっか……すまんね。ワンパンかぁ……」


 ゴブリンと言えば、ファンタジーでは人型魔物で最弱の代名詞だ。

 この世界でも同じだとするなら、小森ちゃんの強さはお察しだ。


 まぁ、常識的に考えて1は最低値なのだろうし、それが筋力・耐久・精神と3つもある彼女のパラメータは、世間一般と比較して相当に低いはずだ。

 駄目人間を自称する俺でさえ、彼女に比べて幾分高いのだ。とはいえ、ドングリの背比べな訳だが。


「いやでも、高い魔力を活かして魔法とか覚えれば良いんじゃないのか?」

「それなんですが、魔法って魔法系のクラスじゃないと覚えられないらしくって……」

「うわぁ……」


 もう何も言えねぇ。

 完全に無駄ステータスじゃないか。


「ち、ちなみに、一般成人男性の平均はどれくらいなんだ?」

「えーっと……3か4くらい?って言ってました」


 器用は魔力は高めだが、それ以外は平均以下ってことか……。

 自分が優秀だなどと自惚れるほどには若くは無かったが、こうして数値を突き付けられるとここ最近の不摂生な生活を恨まずにはいられない。


「俺も平均以下だなぁ、これってゴブリンに勝てそうか?」

「えーとゴブリンは……たしか、普通の男性が、1対1で倒せるくらいらしいですので……」

「じゃあ、かなり厳しそうだな。俺もゴブリンにワンパンされんのかぁ……」

「うふふ、仲間ですね♪」

「嬉しそうに言わんでくれ……。こりゃ冒険者ギルドは諦めたほうが良さそうだな」


 俺達って、予想以上にポンコツだわ。

 こんなんでほんとに異世界でやっていけるんかねぇ……これってもしかして詰んだんじゃね?


 いやまだだ、まだスキルがある。

 そう言い聞かせて、スキル欄を見ると2人に共通するあるスキルが、


「『内弁慶』ってなんやねん!?」

「あっ、それもやりましたので……ほんと何なんでしょうね、私達への当てつけでしょうか……効果も不明ですし」

「くっ、しかもスキルってたしか守護契約で共有できるようになってんだよな? せっかくのスキルが被りとか……もうね、ほんとにもう」

「ですねぇ…………あ、でも、コンビスキルなんてのも有りますよ」


 確かにそうだ、きっとチートなスキルに違いない。

 よし、気を取り直して、小森ちゃんにスキルの使用法を確認だ。


「だな、ちなみにそっちの『通販生活』ってのは、どんな感じで使うんだい?」

「えと……これ、発動しないんですよ……何か条件があるみたいで…………もしかしてそちらもですか?」


 試しにステータス表示内のスキルを意識してみたりしたがサッパリだった。


「……やっぱり駄目そうですか? 私もスキルレベル上げたりしてみたんですが、サッパリでして……」

「そうみたいだね、俺の『拠点設営』も……って、なんか出た!」


 俺が『拠点設営』と口ずさんだ瞬間、目の前に「拠点購入画面」なる物が出現した。


 画面にはレベル1で購入可能な拠点の数々が並び、それぞれの横には値段らしき数値が記されている。

 そして右下部に57012ジェムとの表示。


 はたしてこの数値が何を意味しているのか……まっ、現在の所持金?なのは確かだろうけどね。

 ただなんで最初っから有って、しかも中途半端な値なのか。


 なんか見覚えがある数値な気もするけど……いや、まさかな。




長くなりそうなのでこの辺りで切りました。

ちなみに57012ジェムの数値に、伏線とかは有りませんので気にしないでください。


11/25) 台詞が丸々抜けてたので加筆修正

やっぱ読み直してから投稿せんと、駄目っすね……

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