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相棒はツインテ美少女?

ついつい書きたくなって始めてしまいました。

11/22) 冒頭のみ三人称とし、以降は基本一人称視点に変更します。(やはり、こっちのが書きやすかったので……)

 それに伴い、内容も加筆しています。

~~~ 日本 とあるアパートの一室 ~~~


 部屋の窓から差し込む陽の光に照らされて、1人の中年男が目を覚ます。

 

 枕もとのスマホを手に取り時間を見れば、朝と呼ぶには遅すぎで、昼と呼ぶには早すぎる中途半端な時間帯だった。

 男は眠たげに立ち上がり、六畳間の扉を開けて廊下に出る。

 1Kアパートの廊下に設置された冷蔵庫を開け、野菜ジュースを一缶取り出し、一気に飲み干した。

 これは男が自身の健康のために、唯一継続出来ている習慣だ。

 

 野菜のえぐみに顔をしかめつつ、ユニットバスの扉を開け、中の洗面台で顔を洗う。

 その際、鑑で顔の下半分に生える無精ひげを見て「あと2、3日は大丈夫だな」などと呟くのを聞けば、誰もが社会人としてどうかと思うだろう。

 

 

 そうこの男、山城やましろ まもる35歳はダメ人間であった。

 10年以上務めた勤務先を、喧嘩別れのように辞めて以来、約1年もの間を自宅警備員として過ごしていたのだ。

 最初の頃こそ外に出て運動をしたり、旅行をしたりしていたものの、2ヶ月も経てば飽きてしまった。

 10年間毎朝続けていた朝の身支度も、いつの頃からやらなくなっていた。

 気づいた時には、部屋から碌に出ない自宅警備員と化していたのだ。

 

 とはいえ彼も、この1年何もしなかった訳ではない。


 資格取得のための勉強をし、実際にいくつかの資格に合格したり、

 自作ゲームを作ろうとして、自分の絵の下手さに絶望したり、

 小説家になろうと考え、Web小説にて執筆を開始したり、

 自分が異世界に行ったらどうしよう、といったシミュレートを行ったりと、

 

 それなりに知識を蓄えていたのである。後半は完全に現実逃避ではあるのだが……。

 

 とまあ、そんな何処にでも居そうな彼が、朝の習慣をこなしている時にこの物語は始まる。

 

 

 それは、彼がいつものようユニットバス内の小さな便器に跨り、考える人のポーズで力を入れた瞬間だった。

 彼の足元を囲むようにして、光る円形の模様が広がったのだ。

 

(えっ、魔法陣? ちょっ!? あと5分、いや1分だけ待って!!)

 

 一瞬、急いで済ませねばと焦った彼だが、さすがに間に合わんだろうと思いなおす。

 彼は取り急ぎ下着が汚れないようにと、トイレットペーパーをむしり取って尻に当て、下着ごとズボンをずり上げた。

 これは英断と言えよう。

 何故なら彼がズボンを履きなおした瞬間には、魔法陣は眩しいほどに光を放ち、今にを彼を何処かへと連れ去ってしまおうとしていたのだから。

 

 こうして、彼が最後の力を振り絞り、藁をもつかむ気持ちであるものを掴んだと同時に、魔法陣が発動する。

 彼が最後に掴んだのは、予備に置いてあった未使用のトイレットペーパーであった。





~~~ ????国 ???? ~~~


 目もくらむばかりの光が収まり周囲を見回すと、俺は見たことも無い石造りの部屋に飛ばされている事に気付いた。


 周りを見渡してまず目に付くのは、ファンタジーで言うとこの騎士の格好をした者達5名だ。

 あとは、神官らしき者が2名と、何故か制服を着た高校生らしき男女が3名。


 部屋の中心には、床に魔法陣らしき模様が描かれており、その上には部屋着にしているジャージを着ただけの裸足のオッサン(つまりは俺)が1人。

 右手には何故か、トイレットペーパーを1ロール掲げている。

 なんともシュールな光景であった。


「なっ、なっ、なんでオッサンが召喚されてくるのよぉおおおーーーっ!!」


 観察を続けていると、目の前でわなわなと震えていた少女が叫び声を上げた。

 

 もしかしてあれか? こいつが俺を呼んだってのか?


「ちょっ、これどういう事よ!? こんなの無効よね? ねっ、お願いだからそうだって言って~!!」

「いえ、そのぅ……残念ですが、やり直しは効きません。この方を貴方の守護獣とする他無いでしょうね……ですがご安心下さい! 異国の騎士様が召喚された前例もいくつかあります」

「そうじゃ、守護獣召喚では必ず守護に関連した存在が呼ばれると決まっておる。そうじゃろオヌシ? ここに来る前、何を守護しておったか聞かせて貰えんじゃろうか?」


 騎士と神官の会話に守護獣召喚とか初めて聞く言葉が出てきて、何が何だかようわからんが、取りあえず返事だけはしておく。


「えーっと……自宅の警備を少々?」

「ふっざけんじゃないわよ! それってただのニートって事じゃないの!?」


 俺の答えに少女は、黒髪のツインテールを振り乱し激昂する。

 彼女の言葉に聞き捨てならない部分が有った俺は、すぐさま反論を試みた。


「まってくれ、俺はニートじゃない! ニートと呼べるのは34歳まで、だから俺は正確には無職と呼ばれる存在だ!」

「尚の事悪いわっ!! と・に・か・く、私は嫌よこんな奴よ! あんたもあんたよ、呼ばれたからって出て来てんじゃ無いわよ、このデブ!!」


 言いたい放題言ってくれる……。

 ともあれ今そんな戯言を聞いてる場合ではない。

 ちなみに俺はデブじゃない。これはあくまでビールっぱらなのだ。


「自宅の警備にニート……ですか? つまり彼は、どういった存在なのですか?」

「家の中にずっといて守ってる気になってんのよ、つまりは無駄飯食らいの役立たずって事。ほら、そっちの子と一緒よ」

「なんとまぁ、それでは困りましたのう。それじゃと、戦いはやはり無理かのう」

「無理無理、戦いどころか何の役にも立たないと思うわ」


 辛辣な言葉で散々に罵倒され、そろそろ俺の我慢も限界だ。

 固く握った拳を震わせ、どうにか衝動を押さえつける。


「おいあんたら! いい加減にしてくれ!」

「なっ、何よ、なんか文句あるっての? ……もしかして私を殴るつもり? そんな凄んだって、こっ、怖くなんて無いんだからね!」


 強気の言葉に怯んだ少女の隙をつき、俺は自らの要求をズバッとつきつける。


「じゃくて! そのな…………お手洗い貸してもらえません? もっ、漏れそうで……」

「ちょっ!? さっさと行ってきなさいよ! ほんと汚いわね、これだからオッサンは」

「えーと、それでは私に付いて来てください。ご案内致します」


 オッサン関係無いし……つうか、トイレ中に呼ぶそっちが悪いんだぞ!


 まあ、俺の要求はすんなり通り、青年騎士の先導役もゲットした。

 これで取りあえずは、差し迫ったピンチは乗り越えられる。

 俺にとっては万々歳の結果だ。

 

 これからどうするかは、トイレに入りながらでも考えよう。

 そう考えながら、内股で歩いて騎士の後を付いていった。



 お手洗いに案内されて、用を済ませた俺は、トイレに置かれた尻拭き用の葉っぱを見て凍り付くことになった。


 すぐに右手に握りしめていた、現代から持ち込んだチートアイテム、その名もトイレットペーパーで事なきを得たが、これが無ければ転移初日で血を見る羽目になった事であろう。

 中年のお尻は繊細なのだ。


 用を済ませて冷静になった俺は、これまで見た物や聞いた会話から、現状の分析を試みる。


・俺は守護獣召喚とやらで呼ばれた守護獣である

・呼んだのは、ギャーギャーうるさかった黒髪ツインテ少女

・少女と契約して、何かと戦わねばならないらしい

・騎士の格好を見るに剣で戦うファンタジー世界、魔法があるかは不明

・尻は葉っぱで拭く、文明レベルは微妙っぽい


 と、こんなもんか。

 召喚されたのは別にいい、1年前に天涯孤独の身となって仕事も辞めた。向こうの世界に未練も無い。

 契約についてはどうか? 確かにあの少女は可愛かったが、性格がなぁ……。

 二次元のツンデレはご褒美だが、現実でああいう子がデレるのは想像すら出来ない。

 

 まあ、なるようになるか……。


 あとはやはり日本の製品はチート級だと言う事、日本とこちらの生活水準の差を想像すると恐ろしくなる。

 いずれこちらの世界に慣れなきゃいけないかと思うと、先が思いやられる。


 ほんとどうしよう、これ……。




次回、お豆腐コンビ結成まで書く予定です。


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