類は友を呼んだりしていた
ちょっと蛇足的な…
なんか増えた…
王城にて。王女は友人とお茶をしながら。
「ローラ様。そういえば新公爵家へと嫁ぐことになったそうですわね。 おめでとうございます」
「ええ。エリスも次の話は決まったそうだけれど、いいのかしら?」
ちなみにエリスとは、ロースタスの婚約者だった子爵令嬢。
「はい。至らぬこともありますが、あちらも気を使って下さっておりますし、微力ながらお役には立てるようですので」
うふふふふ。 おほほほほ。 麗しくも空々しい会話が続きます。
いえ、本当に仲良しではあるのですけどね?
「おや。楽しそうな場ですが、私達も参加させて頂いても?」
「ええ。あら、貴方もいらっしゃったの。ご一緒にどうぞ」
やってきたのは互いの婚約者たち。私の婚約者は新公爵にして従者として仕えていた者。
そう、あの大叔父の子供。そういえば王族の血筋でしたわね…
念のため騒ぎとは距離を取らせていたら、その間にいくつか功績を立てて、褒美に私との話を願い出たそうね。
いえ、なにやらやっているとは思っていたのだけど…。害は無さそうだったから後回しにしていたら…
王も、このたびの騒動で上位の家がいくつか消えてしまっておりますからね。何かめでたい話題が欲しいところですわよね。
まずダンテリオンの侯爵家。王族殺しはさすがにねえ。騎士団長は職を辞し、家は取り潰し。
リースリーンの公爵家も、息子がつまらない犯罪を犯したせいで、当主は地位を返上して地方に引っ込んで。 頭にお花が咲いてるのに見捨てず甘やかすから悪化したんですわよ。
オルキッド? まあ、公爵子息の殺害はいたしましたけど、家からは勘当されておりますしねえ。
あら元公爵夫妻、ご不満ですの? 自業自得ではありませんこと?
そういえば、誰かさんが私との婚約を身勝手に破棄なさった賠償、まだ頂いておりませんわよ?
さすがに噂もありましたから、実家は一時的に傾いておりましたけど、代替わりして若夫婦が頑張っておりますので、今は私が贔屓にしておりますわ。皆さんにも声をかけて。
若夫婦の妻は、婚約破棄仲間でしたから、これもフォローですわね。
今後のますますの発展とご健勝を、いたさせますわ。
ナルキスの伯爵家は、セルピナは所詮平民でしたし、無理心中のようなものと認識されてそれはお咎めなしだけれど…、医療や合成獣の禁忌とされている部分へと手を出していたのが知られて、父親は筆頭魔道士の役は解任となって。
side:とある影___
俺はこの国の影の部分を担う家の人間として生まれた。
幸いそこまで突出してはいないが、同輩や配下を統べるには十分なだけの能力は持ち合わせており、我らの力を以ってしてこの国は守られているのだと自負していたのだが…
目の前の光景を眺める。
うららかな日差しの下、微笑み合う、銀髪の清楚そうな女性に、ふんわりした金髪の天使のような少女、そして赤茶の髪の見目麗しい美青年。
まるで宗教画に描かれていそうな、美しく穏やかな光景だ。 しかしながらその中身は…
コレらと関わってしまった時のことを思い出す。
ある夜。 定例の見回りに出ていると、先王の弟の屋敷から人影が出てくるのを見つけた。
なんだ? そのまま何かを足がかりに屋根の上を… 跡をつけていると、え? この先は王城しか…
「そこの貴方。出てらっしゃいな」
若く聞こえるが恐ろしいほど落ち着き払った声がかけられた。視界には入っていないし気配も殺していたはずなのに何故だ?
どちらにせよ誘導かもしれないし、言われたからと言って従うわけには…
!? 周囲の空気が変わった。
俺の周りの空気の密度が増し、物理的な圧力すら感じさせて動きを制限してくる。
動けない俺の前に彼女? が近づいてきて…
「貴方、この国の影や暗部といった存在かしら。先王弟も護衛の対象だったのかしら?」
確かにそうだが… 口に出して返答はしていないが、何か納得したように、
「そう。でもあのような者が野放しになっているなんて。せめて周囲に迷惑をかけぬようにしておくべきでしょうに。とりあえず、アレが今後騒ぎを起こすことは無いけど。
そうそう屋敷に子供が一人いたわ。せめて身を立てらるくらいまでの面倒は見てもらえるようになさいな」
「はい…」 絞り出した声は情けないほど掠れていて。 しかしせめて少しでも情報をと「貴女は?」
「そうね… では、セイレーンと。 また縁があればいずれ」
彼女が姿を消して、問題なく動けるようになったのを確かめて、全身の冷や汗を意識した。
なんだアレは…。とにかく先王弟の状況を確認して報告。子供とやらもどうにかせねば…
その後は先王弟が死んでるのが見つかって、多少の騒ぎに。見た限りでは不審な点は無かったが…。
子供。王族の血筋のはずなのにガリガリで。でもその割には元気そうな?
騒ぎの中でもどことなくぼうっとしているが、あのような父親でも死んだのはショックだったのだろうか。
昨夜のことについて聞いてみたが、何も知らないと。しかし何かを隠している?
この話題が出ると、無気力であった瞳に熱が宿り、どこか焦がれるような色も。
何が? 知りたいような、しかしアレと関わることになるのは…
そう思っていた迷いはしばらく後の彼女からの連絡に打ち砕かれた…
また別の夜。
確かあの時もこのような夜だったと思いながら、見回りに出たところで二度と聞きたくなかった声が…。
そして、あの子供を第一王女付きにするように、との指示。ぎくしゃくと承諾の意を示して。
あらゆる伝手を使って、そうなるように働きかけたが… それなりにうまくいっているふうの主従を確認して、疑惑は出てくる。
なぜアレは王女にへと? まさか? さすがに…?
「!?」 こちらを視た王女が、俺の心を読んだかのように微笑んだ。
それからは、遠慮なく、巧みに職務と相反することは持ちかけられなかったが、いろいろと、本当いろいろと使われた…
いきなり、とある国に行って来いとか、こうするように進言しろとか…
まあ、いろいろと手伝って?くれてもいたが。
先王弟の子から鍛えてほしいと? それくらいはかわいいお願いだなあ。
本人、見違えるように強い目をして、貪欲に力を身に付けていった。
最近は王太子が妙な小娘に籠絡され、愚かとしか言えぬ状態に成り果てて。
王女は直接対処することはせず、周囲を守ることを選び。
卒業してからも変わらぬ王太子と小娘、その取り巻きに、とうとう王も切り捨てることを選ばれた。
どこで知ったのやら、指示を受けた後直ぐに、王女が非常に楽しそうに傍観を指示してきて… みな破滅していった…
まあ末路は変わらないからいいんだが… 騒ぎにはなったが、その分自然なふうに片付きはしたんだが…
え? 先王弟の子、王女を手に入れるのを協力しろとか?
まずは地位や権力だが、それは手段、と。
確かに実力は付いているが… 多少根回しをすればいけそうだが… アレを? …正気?
二人が上手くいったのを見て、それに関われたことで、多少なりと溜飲を下げられた気分だな。
王女があっけにとられて目を丸くしている姿など、非常に珍しかった。
え、俺に縁談? 王女、非常ににこやかに… あれのお礼かなぁ…。
いや、一応伯爵家ではあるが仕事が仕事だし…
この子が? ずいぶん若いし、非常に見目麗しいんだが、なんで俺なんかに?
俺は醜くはないが、そこまで良くも…
え… 王女と「とても仲良し」なお友達…?
脳内で警報が鳴り始めてるんだが… 拒否は… 却下orz…
side:エリス______
わたくしはとある子爵家の娘として生まれましたの。家族は愛情深く善意に溢れ、末娘のわたくしも皆さんに可愛がっていただきましたわ。
なのにどうしてこうなのでしょう?
我が家は信心深くもありましたから、折に触れて教会に参り、孤児院や救護院に差し入れやお手伝いをしておりましたの。
わたくしも大きくなって一緒に参るようになったのですが…、そこで目にしたのは、みすぼらしかったり、ちょっとの怪我なら放っておく子供たち。
具合を悪くして寝込んでいたり、酷い怪我で唸っていたり、命を取り留めても怪我の痕を残す大人たち。
今までわたくしの生活の中では見たことのない光景でしたわ。
十分な食事と気遣い、清潔さの保たれた生活であり、怪我人や病人すら身近にはおりませんでしたもの。
なのに、なぜか目が離せませんでしたの。
特に、酷い怪我の状態や、苦しんでいる人の有り様に目が惹かれましたの。それを近くで見たさにせっせとお手伝いしたりして。
皆さん、感謝したり褒めて下さったりしましたけど、そんなのどうでもよかったんですの。
ローラ様とも、たまたまそんなお手伝いに廻っている最中にお会いして。何度か話すうちに親しくなりましたの。
初めて会った時から、なんだか親しみを覚えるとは思っておりましたのね。今となってはとてもよく分かりますけれど。
そのうち、そういった状態を見るために、自分で作れないかと思うようになりましたの。
ふふ、お恥ずかしい。今となっては子供の浅知恵でしたわね。
我が家では、一部薬草も栽培しておりまして、救護院などへ差し入れたりもしておりましたの。
わたくしも手伝っておりましたから、使いようによっては害になるものをクッキーに混ぜて、孤児院への差し入れに。
ドキドキしながら渡そうとしたその時、ローラ様にその手を押さえられまして。
「ダ・メ・よ」と。
一瞬目の前が真っ暗になった気がいたしましたわ。欲望に負けたとはいえ、善悪の判断は付いておりましたもの。
ふらふらしながら連れられて行った所で、拘束されるでもなく、告げられたことは意外で。
場所は選びなさい。人も選びなさい。薬草の栽培や提供してくれるのなら、その使われた様子などを見させてあげる、と。
拒否権ありませんでしたし、そのまま頷きましたけど… ふふ。ローラ様の言ったことは本当でしたわ。
いくつも興味深い状況、見させていただきました。
背後関係も教えて頂きますので、さほど心の痛むことも?
そのうち、私の評判、相変わらず良かったようで、教会の方から教皇の息子さんとの縁談が来ましたの。
ローラ様の勧めもありましたし、お受けしましたわ。 基本的にどうでもよかったですし。
ロースタス? ええ、わたくしの家族のように善良で理想家な方でしたわ。
とりあえず当たり障りなく交流しておりましたら、学園に入ってからあんなことに。
婚約解消はローラ様の口添えもあって恙無く。教会って男性であってもそれなりに貞淑さ?が求められますもの。
それからは見事な舞台でしたわ。
わたくしも、思考を鈍らせるものや興奮作用の有るもの、眠るようにいくもの、など提供いたしましたけれど、皆さん面白いように。
ダンテリオン様、公共の場でローズベルト様を襲って切り捨てられましたわね。
うふ。セルピナさんのお茶、美味しかったでしょう?
オルキッドさん、リースリーン様と鉢合わせさせたらちゃんと襲い掛かって。
ローラ様からの差し入れはいかがでした? 遅行性だった効果も出ましたわね。
ロースタス、共同で面倒を見ていた薬草園から毒性の有る物をこっそり持って行きまして。
ナルキス様が夜間に火遊びしたのは見逃しましたけど、ロースタスの贈り物やセルピナさんへの慈悲は拝見できましたわ。
こたびの縁談もそれなりに気に入っておりますのよ。
夫となる方、少々厳めしい見た目ですけれど、わたくしそういったことは気にしませんし、かえって負った時にはひどかったであろう、傷の痕とかいいですわね。
今までやっていた薬草の栽培も、嫁ぎ先で引き続き。
今でもそれなりの規模があるそうですし、ローラ様もいくつか珍しいモノ下さると。
また、怪我する方多いそうで、その手当や看病もさせて頂けると。近くで存分に見られるなんて素敵ですわ。
うふ。 わたくしけっこう幸せです。
side:とある影 再び~
エリスと結婚してからしばらく経つが… まあ、うまくいっているのかな…。
見た目は文句無しに可愛らしいな。ある意味 言動もか。
身体能力自体は普通というか 我ら基準ではか弱いから、荒事には関わらず、基本楽しそうに薬草園の世話をし、怪我を負った者たちの治療をし、時々見学…
部下からの評判も悪くない。怪我を負った者たちは、手当されて慕っている。
まあ見た目はああだし一生懸命だしな。冗談交じりでやっかまれているんだが… お前ら気付いてるか。
怪我してるとこ、妙にじっと見ているの。 ひどければひどいほど嬉しそうに張り切ってるの。
薬草園、普通のハーブもあるが、問題の有る物も。
ローラ様のお祝いというやつ、かなりレアなんだが… 効果もな。
エリス、緑の手だって? 植物栽培に才能の有る者のこと?
確かにかなり扱いの難しい筈の物も他のも元気に育っているな。
普通に考えれば良い能力だな。育ったモノの用途を知らなければ…
そして、我が家の稼業に関わること。
うん。キラキラした目で見てるな。 何をとは言わないが。
ある程度選択して見せてはいるが。 うん、夫婦で共有し分かち合えるのはいいんだろうが…
ある意味申し分のない現状なんだが… はて、俺は今幸せ、なんだろうか…?
王女様のお友達と 下ぼ、いや、配下
偏見かもしれないけど、貴族ってなんかこんなのがいるイメージ…
まあ貴族には限らないだろうけど
専門家が一番マトモかつ苦労人…