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恋の罠を仕掛けましょう~  作者: 瑚ノ果
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その声の誘うものは

 王城の一室で、街の一角に上がる炎を見つめる少女が一人。


「ローラ様、お疲れ様でした」

「そうね。これでやっと全部終わったわね。長かったわ… 」

「お楽しみになられましたか?」

「うーん、どうかしら? みんな何の疑いもなく、あっさりと乗せられて破滅しちゃたものねぇ。一応マトモだったころはそれなりに優秀だったはずなのに。

ナルキスなんか、送り主は偽ってたけどロースタスからの毒薬入りのお酒を何の疑いもなく…。

やれやれ、自分は相手を殺そうと思っていたのに、相手はそうだとは思わなかったのかしら?

まあ、その分手がかからず、全員完全に排除できたわね。

ふふ、これだけまとめて、というのは初めてだし」


正直、必要な処理は完全に片付きましたけど、愉しむという点においては不完全燃焼…。

ああ…、せっかくだから誰か一人くらいは攻撃されているということに気付いて足掻いてくれれば愉しかったのに。


 やれやれ、世界を違えて生まれ変わってもこうだなんて、我ながら業が深いと言うべきかしら?



といっても、あちらで生まれてしばらくは、ただぼんやりと周囲の人間を眺めていただけの地味な子供。

他人の感情を正しく推察することに長けてはいたものの、それでどうするということもなく。


だけど、あれは小学生になって何年か経った頃。

 ふふ、今は懐かしきあの子。

声高に周囲を引っ張り、他人を攻撃し、悦に入って笑ってたあの子。

同じクラスになって ある日、アンタ辛気臭いんだけど! って攻撃してこられて、最初はただ不思議に。

だって言うことは何の正当性もない言いがかり。私にだけでなく、みんなにもそうやって大声で無茶を押し通そうとして。

でもそんなことしながら意地悪そうに笑ってとっても楽しそうで。


とっても楽しそう…

どこが楽しいの? 何が愉しいの? うーん、同じことしたら私にも分かるかなあ?


今は貴女の声が大きいだけで、不愉快に思ってる人嫌ってる人多いよ? 気付いてない?

ねえ、貴方も貴女もあの子のこと不愉快に思ってるよね。貴女も貴方もこんなことに付き合わされるの嫌だと思ってるよね。

目立たないおかげで、さりげなくそれぞれの性格に合わせて、彼女の意見に反発して否定する気持ちが大きくなるよう囁きかけてみたら… あれ、あっという間に、その子が何を言おうとどうしようと反発してあげつらい、馬鹿にするように。まあ、途中からは勝手に加速していったんだけど。


しまらく前までの態度が嘘だったかのようにおどおどしたその子の姿を見て…


変われば変わるものかなぁ。前はあんなに自信満々だったのに。

にしてもこれは何かな? お湯を沸かした時に下から湧き上がってくる泡みたいに、胸の内から湧き上がってくるこの感情は。


ああ… 水たまりに映った私の顔は晴れやかな笑みを浮かべていて。 すぐに波紋と共に消えていったけど。

そう、きっとこれがあの子が味わっていた。 

そう、これが愉しいということ。


とはいえ他の周囲をの人間を見渡しても、他にやりたいとは思わない。 なんでかな?



数年後。

「きゃはは、バッカじゃねーの? あいつの顔に虐めて下さいって書いてるんじゃん。うちらに遊んで下さいって~」

「だよね~、そうして下さいってさ~。きゃははは」


いつも通り何となく眺めていた目に留まったのは… ふうん。 ああ、これだったのかぁ。

貴女達、その通りよね。

破滅が前提に高く高く積みあがったモノ。まるで崩して下さいって言わんばかりに。


くすくす。 ねえ、貴女達。ずうっと他人の上に立っていられると思ってる? すぐに倒壊する足場の上なのに気付きもせず。

私はそうできると理解し(わかっ)ている。 いいえ、ぜひそうしたい。 そうしてその様を眺めたい。

ふふ、貴女達 いいでしょう?  ねえ、愉しませてちょうだいね。



ああ、歪に積み上がったモノを崩壊させるのは愉しい! それを眺めゆくのも楽しい!


とはいえ、そもそも高くなってないモノはね。真っ当に積み上がってるモノもあんまり。

高くゆらゆらと積み上がったジェンガの足元からパーツを抜き取って、揺らがせて崩し去る。

長~く並んでいるドミノの間を繋いで、突ついて全~部倒れさせる。


ふふっ。 ある程度まで注意しながら崩していくと、あとは足掻きながらも止められず、派手に崩壊していく様は、とても爽快。 しかも私がちょっと囁くだけでそうなっていくのが。 



ああ、ヒロインたちもとても素敵だったわ。足元の不安定さに気付きもせず、高く高く積み上がった幻想。

崩す時をとても楽しみにしてたのよ。

 


窓に映った今の姿を眺める。

見た目はずいぶん昔と違ってしまったわね。はっきりしないガラスの映像からですら分かる、煌めく銀髪に水色の瞳の精霊めいた美少女。

まあ、中身を窺わせない、という意味では同じかしら。


「あ、そうだわ。今回のことで少々目立ったから、メルは消えるわ。ドーラも変更しないとね」


ドーラは昔の私の姿をベースに、こちらでも違和感のないように整えてね。

メルはこのために作ったのだけど、ドーラもヒロインたちと親しいふりをしていたから、顔が知られてしまって。懐かしい姿だったのに残念だわ。

名前はハーメルンとパンドラから。どちらも破滅へと誘い災いをもたらすモノ。今回の役柄にはふさわしかったでしょう? 今の私ともお揃いですしね。

次はどうしようかしら。 ハル? ルン?



(わたくし)? 親しいものはローラと呼びますけど… 正式名はローレライ。その声によって人々を惑わし、破滅へと引き込む精霊の名。

この国の第1王女にして、公爵家子息リースリーンの婚約者だった者。


ええ、なぜか癒しの姫巫女と称えられたりもしておりますけどね。この外見と美しい歌声、水魔法の最高レベルの能力と付随する癒しの力で以って。

知らないっていうことは幸せですわね。


やれやれ。もし私を生まれ変わらせた神などがいるとすれば、ずいぶんと皮肉なことですわね。一体私にどうさせたいのやら?


まあリクエストが無い限り、好きにさせていただきましょうか。 ふふっ。


こちらの転生者も全開で趣味に走ってるだけだったり。

ざまぁ? まあ結果的に…



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