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恋の罠を仕掛けましょう~  作者: 瑚ノ果
2/8

ハーメルンの笛はひそやかに

恋(に溺れてるお花畑さん達に、破滅へ)の罠を仕掛けましょう~♪


全表示したタイトル…

「止めろ、何をする! うわぁーっ!!」


 王城の片隅にて惨劇が起こりました。


命を奪われたのはこの国の王太子だった者。それをしたのは、騎士団長子息のダンテリオン。


彼は学園を卒業後、結局騎士団には入れず、王太子の個人的な近衛のような立場になりました。

といっても彼が王太子の婚約者のはずのセルピナの取り巻きのままであるのは、王城に勤めている者達には周知の事実。


「はは、セルピナ。これで君を権力で縛り付ける者はいない。これで俺の手を取ってくれるだろう?」

「ひっ、いやーっ!」


あらあら。 ヒロインさん、倒れた王太子を見捨てて一目散に逃げ出しちゃいましたわね。

ここは腰を抜かして助けが来るのを待つのがお約束でしょうに。


庭園でいつものように王太子とお茶をしていたところにこの襲撃。もっともいつものお茶は、王太子を含む取り巻きの誰かと、ですけど。


「殿下!」「なんてことだ!」「貴様、確か団長の。なぜだっ!」

王城内ですからさすがに騎士たちも早いですわね。肝心な時には間に合いませんでしたけど。


「セルピナ、なぜだ…?」

あらあら、こちらは現実を認識できずに茫然と。

ふふ、なぜですかって? そもそもなぜ王太子を殺そうと思ったのでしたっけねえ?


 とある酒場にて_______

「あれ、ダンテリオン様?」

「ん? ああ、メルか」

セルピナとローズベルト様との婚約が決まってからの、とある日。

飲んでいるところに現れたのは灰色の髪の地味な容姿の青年。


学園で時々顔を合わせて話をする程度の顔見知りだったが、この日はなんとなく誰かと話したく、親しすぎない彼ならちょうどいい。性格も適度に気安く、でも意外と律義で真面目だから信用は出来る。

お互い無難な話をしつつ、酒が入るにつれ…


「でもダンテリオン様も、セルピナ様に求婚をなされてたんでしょう? それを見せつけるかのような配属なさるなんて。

そもそも王太子であるローズベルト様が出てきちゃったら、他の人間は譲るしかないし、断るなんてできないでしょうに。そんなのが当たり前と思っちゃってるんですかね?」

「セルピナ様だって育ちが市井なら、王宮なんて窮屈じゃないですかね。一応貴族の俺だって訓練場はともかく、王城に上がるだけで緊張しちゃいますよ。王妃なんて本当に望んでるんですかね?」


 セルピナとのお茶会にて______

「うわあ、ダンテリオン、会えてうれしいわ」

「もう、王城の人達、みんな意地悪なの。皇太子妃になるんだから、何をしちゃあいけない、これはダメとか。ローズベルトもお仕事だから会っちゃいけないとか、お話したくてもすぐ来てくれなかったり…」

「あーあ、ダンテリオンが旦那さんになるんだったら良かったかも」


 再び____

「うーん、それは彼女の幸せのためには助けてあげるべきでは。きっと嬉しいと…」

「いっそ攫えればいいんでしょうけどね?

ああ、でも攫われたからって王太子も黙って大人しくはしてませんよね。どうしたらいいんでしょうね?」


そうだ。セルピナはローズベルトに権力で奪われて言いなりにされているのか。俺が助けないと。そしたらきっと感謝して俺の手を…


 なのに、なぜ? 


「貴様、抵抗するな!」

「邪魔をするな! どけー」

 ザシュッ 「グッ」


「ここは危のうございます。あちらへ」「ええ」

かすみゆく目に映ったのは、この場から去ってゆく少女。


あれ? 彼女はなぜこの場に? そして去り行く前の一瞬、とても楽しそうな笑みを浮かべていたのはなぜ…?


 それが彼の最後の思考。



えーっ、ローズベルト死んじゃった。

ダンテリオンてばなんで余計なことしちゃったの? おかげでお城出て行かなきゃいけないじゃない。

え? ドレスとかアクセとか個人ではなく王太子妃へのもの? いやよ、私のものよ! 盗らないでよ!

あーあ、まあ他の攻略対象者のところに… え? オルキッドの家が犯罪して営業停止? 没落?

え? リースリーンがそれをでっち上げてて、ばれて逃亡? 下町で刺されて死んだ?

刺したのオルキッドで警邏に捕まった傷と体弱ってたのが元で死んじゃった?

ええーっ! 頼りになんない~。

もー、気楽で気前良かったのと王太子の次に偉い子だったのにー。なんで~?



 side:リースリーン

 とあるパーティーにて_____

「あれ、リースリーン様?」

「おや、メルですか」


とあるパーティーにて顔を合わせたのは灰色の髪の地味な容姿の青年。

彼とは学園で知り合ったのですが、地味な容姿に似合わず意外と仕事ができ、意見も的確なので評価しておりました。あいにく親族の手伝いをするとのことで、引き込むことはできませんでしたが。

口も堅いので、懐かしさもあり、安心して四方山話をしているうちに…


「なんだかセルピナ様、ローズベルト様と婚約したはいいですが、王城が肌に合わないようですね。居心地が悪いという話を小耳に。

元が気楽な立場でしたからね。ローズベルト様が望んだとはいえ、ずいぶん環境が変わりましたし。それに、いきなり重い責務を負わされて大丈夫なのでしょうか?」


 セルピナとのお茶会にて______

「うわあ、リースリーン、会えてうれしいわ」

「もう、王城の人達、みんな意地悪なの。皇太子妃になるんだから、何をしちゃあいけない、これはダメとか。ローズベルトもお仕事だから会っちゃいけないとか、お話したくてもすぐ来てくれなかったり…」

「あーあ、リースリーンが旦那さんになるんだったら良かったかも」


 再び____

「このままだと遠からず婚約解消して、王太子妃は他に立つのでは? そうなったセルピナ様を支えてあげられるとしたら、公爵家のリースリーン様が一番頼りになりますよね」

「あ、でも商家などの方が気楽でしょうか。手広くやっているところなら、安全でしょうしね。どういった立場を選ばれるのでしょうね」


冗談じゃない! 商人など、いつも金に物を言わせて歓心を買おうとする。王太子はともかく他の者になど…

そうか。なら、私しか選べないようにすればいいのだな。たかが商家が公爵家に楯突こうなど…

 

ふん、オルキッドはこれで終わりだな。次に邪魔になりそうな者は…

なに!? なぜ調査の者が!? 証拠など残していない筈なのに… くそっ!


 どんっ!


裏路地を足早に歩いている途中、誰かにぶつかってこられた。

 っと、邪魔っ…  どさっ。

あれ? 私はなぜ倒れて… 「リースリーン!」 聞いたことのある声と共にさらに衝撃。

声を出そうとした口からは、咳と粘ついた赤いモノが。 霞んできた目に映るのは、オルキッドの荒んで歪んだ顔と振り上げた刃。 そして衝撃。 暗転。



 side:オルキッド


なぜだ? なぜこんなことに…。

確かに商売をしている以上は危ない橋を渡ったこともあるが、密輸? 違法薬物? そんなバカな!

そんなデメリットの大きすぎることなど手は出さないし、やってたとしても俺が気付かないはずなど無い!

はめられた? しかしなぜ…


「オルキッド?」

「え、メル?」

「大丈夫、とは言えなさそうだが…。まあ、とりあえずこれでも飲め。食べられるか?」

「ああ」

 下町で顔を合わせたのは、灰色の髪の地味な容姿の青年。


彼とは学園で知り合って、それなりに付き合いが。外見は地味だけど人当たりは良く、新商品なんかへの意見はいつも参考になった。家の手伝いをすると言ってたが、商人になったらそれなりに大成したろうに。

ああ、でも俺みたいに訳も分からず路頭に迷うことにはならず、正解か。


「はあ、すまん、落ち着いた。しかし、どうしてこんなことに…」

「あー、それは…」

「何か知っているのか!」

「あくまで噂なんだが、リースリーン様が権力を濫用して追われていると…。名は出ていないが、商家への画策があったとか…」

「お前たちって、セルピナ様を巡ってライバルだったけど、ひょっとして…。

いや、すまん。単なる思い付きだ。とりあえず困った時はお互い様だ。この金と、ここに知り合いの店があるからよければ行ってみてくれ。俺は用事があるからまた後で。あ、念のため護身用にこれを」


セルピナ…。そういえば彼女、お茶に呼ばれた時の話では、お妃教育進んでないようだったな。妃になれないとしたら俺たちにもチャンスがくる…  そういうことなのか? まさか、それで? それで、うちの店ごと?

リースリーン! 許さない!


…… はあ、とりあえずメルの勧めてくれた店にいかせてもらおう。ありがたいな。ここで会えるなんて幸運だった。


ん? あっちから来る人間どっかで…

!?  リースリーン! 死ね! 




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