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54 発現は密かに

54 発現は密かに


「それじゃあ、魔術が上手くなったら、宝石もたくさん作れるようになりますね」


 属性鑑定で、あれだけの宝石を作る事ができたんだ。

 頑張ればもっとできるかもしれない。

 そうしたら、父上の役に立つかも。

 俺がそう言うと、父上は笑った。


「そうだね。じゃあ、やってみるかい?」


「はいっ」


 属性鑑定の時の感覚を思い出して、魔力を放出してみる。

 金塊になれと願って。


 だけど、ちっとも形にならない。

 地面の土がうねうねと動くだけだ。

 むう、集中が足りないのか?

 今度は手を叩いて、やってみる。

 ……土でできたボーリングの玉にしかならなかった。


「おかしいなぁ……」


「ふふっ、できなくて当たり前なんだよ。属性鑑定で現れた現象はね、あの黒い円盤が補助しているんだ。属性がはっきりわかるように、魔法陣が組み込まれているんだよ。だからどんなに魔力が乏しい子でも、土属性なら石が、水なら氷が、火なら炎が、風なら小さな竜巻が、光なら光の玉が、闇なら渦を巻く靄が、それぞれ出現するんだそうだ」


 と言う事は、あの黒い円盤がないと、金を作れないって事なのか。

 ちぇ、残念だ。

 お金に困らなくなると思ったのに。


「残念だけど、そんな都合のいい話はないという事だね。でも、宝石を生み出したのはのはすごい事なんだよ。私の時は真鍮だったからね」


 へえ、人によって、出現する石は違うのか。

 それによって能力の違いもわかるんだな。


「あれ? でも、他の属性ではそんな変化を見る事は出来ないんじゃないですか?」


「そうだね。大きさ等で判断するのかもしれないね。神殿はあまりそういった鑑定結果を発表する事はないから、推測でしかないんだけれども」


「でも、ちゃんと教えて欲しいです」


 自分の能力を把握する事は大事だと思う。

 そのために基準は教えて欲しい。


「……難しい問題なんだよ。面子の問題と言ってもいい。誰もが鑑定結果に納得するわけじゃ、ないんだからね。曖昧にしておくのがいい場合もあるんだよ」


 そう言って、父上は俺の頭を撫でた。


「君も四属性なんて素晴らしい力を得たけれども、この事で妬まれてしまう事もある。だから、気をつけなさい。無闇に自慢したり、奢ったりしないようにね」


「はい、わかりました」




「ところで、テオドール。その宝石だけれど、どうする? そのまま置いておくかい? 加工するなら口の固い職人を呼ぶよ」


 土属性の場合、生み出した石を加工して、お守りとして身につけている人がほとんどなんだそうだ。好きな人にプレゼントした人もいるらしい。


「父上の時はどうされたんです?」


「私の場合は真鍮だからね。このブローチの台座だよ。家紋を入れてあるから、私が死んだら、君に受け継いでもらえるね」


 襟カラーに留めてあるブローチを見せてくれた。


「こんな風に、ウチには先祖代々受け継がれた石があるよ。中には屑石としか思えない石もあるけど、きちんと加工してあるから、使えない事はないね。こういう点で、土属性は羨ましがられたりしてるよ」


 父上が苦笑する。


「君の場合、全部の宝石を別々に作ってもいいし、一緒にデザインしてもらってもいい。もちろんそのまま持っていてもいい。どうしたいか決まったら、教えてね。すぐに手配するから」


 そういう事なら決まっている。


「加工して、ミュリエルにあげたいです。構いませんか?」


 好きな人にあげた人もいるって話だしな。

 俺も記念にあげたい。


「そうか。テオドールは本当にミュリエル嬢が好きなんだねぇ……」


 少し呆れたように聞こえるのはなんでだ。

 父上だって、母上にゾッコンのくせに。


「構わないと思うけど、子供の贈り物としては石の価値が高すぎるのが問題かな。でも、今度の婚約式の贈り物としてなら大丈夫だと思うよ」


 そうか良かった。


「だけど、全部の石はやめておこうね。他人に送る時は属性がわからないようにしておかないといけないからね。金なら大丈夫。後は、もう一つくらいにしておきなさい。いいね」


「はい」


 じゃあ、どの石にしようかな。

 ミュリエルのイメージだと、青か緑なんだよな。

 よし、緑のエメラルドにしよう。金を半分こにして、ミュリエルに金とエメラルド。俺用に金とルビーとサファイア。

 父上に相談すると、賛成してくれた。


「明日にでも職人に来てもらおうか。デザインは相談すれば、いいアイデアをいくつも出してくれるよ」


 おおう。デザインか。考えてくれるのはありがたいな。

 とりあえず、金を半分にしておこう。


 金の玉を手の平に乗せて、半分になれと念じてみる。

 すると、綺麗に割れてくれた。

 割れた断面に、透明の石が見える。


 ……あれ?


 取り出してみると、水晶のようだった。エメラルドよりも小さな丸い水晶。

 慌てて魔力に意識を向けてみる。


 黄色が、動けなくて可哀想だから出してやった。と、サムズアップしてた。

 白は、出て来ちゃいました、テヘペロ。と、照れていた。


 ……なんで、お前ら感情があるんだ。


「父上、コレ……」


 見上げると、父上は遠い目をしていた。

 ああ、うん。わかる。


「……水晶は隠しておこうか」


 ですよねー。


 ホント、なんて事してくれたんだよ。

 この世界の魔力って、奔放なんだなぁ。

 俺の言うこと聞いてくれるようになるには、やっぱり習熟度を上げるしかないんだろうか。


「……テオドールの魔力は特殊なのかもしれないね」


 ポツリと父上が零した。

 普通は魔力が意思を持つことはないらしい。


 なんか不安になって来た。


 父上からは、何かあったらすぐに教えるようにと念を押された。

 まぁ、普通とは違う現象が起こっているみたいだから仕方ないんだけど、俺は俺で、どれが普通かわかんないんだよな。

 なるべく父上に相談しよう。




 ◇




 翌日、来てもらった職人と相談して、ペンダントトップを作ってもらうことになった。

 当然のごとく、贈り物だから愛の言葉を刻みますかと聞いてくれたので、了承した。


 ミュリエル用のペンダントトップの裏に、

『我が愛しのミュリエルに、テオドールより真実の愛を捧ぐ』

 と、小さく刻んでもらうことにした。

 もちろん、こちらの言葉でだ。日本語でなんてお願いできない。


 俺の方は簡単にした。

『テオドール&ミュリエル』

 ちょっと恥ずかしいけど、婚約式の贈り物だからな。うん。


 ……想いが重いなんて言うな。

 自分でもちょっとやりすぎかな、とは思ってるんだから。


読んでくださってありがとうございます。

ブクマありがとうございます。

評価ありがとうございます。

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