3 魔法チートは保留
3.
三歳になりました。
俺ことテオドール・ゴルドバーグは三歳になったのです!
しかも聞いて驚け、侯爵家の嫡男ですよ!
お貴族様だ!
これで勝つる!
少なくとも、他人に間違えられて、してもいない告白を断られるなんてことは絶対に起こらないはずだ!
なんせ、イケメンで侯爵家嫡男なんだからな!
人生、九割は勝ったも同然だぜ、ひゃっほーい!
そして結論から言うと、異世界転生でした。
でもドキワクのステータスさんは現れてくれませんでした。
正しい発音でも言い方を変えても念じてもダメだった。
ちくせう。
いいもん。ステータスなくても生きていけるもん。前世はそれが普通だったんだから大丈夫だ。
それでもって、魔法はまだ使えません。
そう! 喜べ、俺! 魔法がある世界なのだ!
乳母のマーサが絵本を読んでくれた時、
「絵本みたいな魔法を使いたい」って言ったら、
「ええ、大きくなったら使えるようになりますよ」って、言ってくれたんだ。
子供に合わせて言っただけだと思うだろ?
けど、詳しく教えてくれたんだ。魔法の儀式のことを。
近くの神殿に行って神様に祈りを捧げれば誰でも使えるようになるんだそうだ。
俺は侯爵家の嫡男だから、王都の大神殿で行われる儀式に参加できるらしい。
でも十歳にならないと、魔法が使える儀式が行えないんだってよ!
子供が誤って使用しないよう、事故を防ぐための措置だそうだ。
まあ、わかるよ?
前世でも甥っ子の側にハサミとかライターとかボタン電池とか放りっぱなしにすんなって怒られてたから。理由はわかる。
こんな小さい、分別つかない幼少期に、ライターの火くらいの小さな炎でも使えるようになったって、大惨事になるのは目に見えている。
癇癪で大火事とか家が爆発とかしたら、世の中は大混乱だろう。
でもこのドキワクはどうしてくれる! あと七年も待たないとダメなのかよ。待ちきれないよ。フライングゲットさせろー!
いや、でもこう考えるんだ、努力して自力で魔法ゲットすればチート無双間違いないって事だ。
なんか魔力アップの訓練も手応えがなくていつの間にかやめてたけど、目標があるなら頑張れる。きっと。たぶん。
三日坊主なんて言われていたのは、前世までだ。
ふふふ。よーし、やってやるぜ!
結論から言うと、無理でした。
あれー? おかしいな?
異世界転生チート無双じゃないのか?
なんにも起こらないんだけど、どうなってんの、神様?
身体の奥底から力がとか、なんか妙な感覚とか、さっぱりちっともこれっぽっちも感じないんですけど。
……やっぱり儀式なしでは無理なのか?
マーサが言っていたように、儀式が鍵になっていて、無闇に使えないようロックされてるのか?
そーだよなぁ。そうなんだろうなぁ。
うーむ。魔法の方向性がダメなら、アレか。アレだな。
よし、剣無双だ、やったるぜー!