2 ステータスは皆無
2.
そんなわけで。
赤ん坊に転生していました。
その事に気づいたのは目が見え、耳が聞こえるようになった頃からだ。
抱っこされて鏡に映った顔を見たときは本当に驚いた。
なにせ、めちゃくちゃ可愛いのだ、俺が。
サラサラの金髪に、くりくりと大きな琥珀色の瞳。将来絶対イケメンになる事間違いなしの可愛らしい赤ん坊が鏡の中で手を振っていた。
ひゃっほい、ありがとう神様!
転生時に出会ってもいないけど感謝します。
これで人生八割は勝ち組決定だぜ。
しかも記憶ありで異世界転生なんて、それなんてWeb小説だよってカンジだけど、実際に身の上に起きたんだから受け入れないとな。
ん? なんで異世界ってわかったのかって?
簡単な事だよ、明智くん。俺がそう感じたからだ。
え? 理由になってないって?
ふ、わかってないな。
普通に輪廻転生を体感できているだけでもファンタジーだっていうのに、これだけ異世界転生が流行りまくっているんだから、これが異世界転生でないわけないじゃん。
間違っていたとしても異世界転生をドキワクで期待しない理由などないわ!
たとえ夢でも異世界転生を所望する!
そんでもって、チート能力で無双三昧だ!
まぁつまり、まだ異世界だと確信できる証拠を見ていないのですが……
だって赤ん坊なんだよ!
食っちゃ寝してるだけで一日が終わるんだよ!
部屋と庭しか見てないんだよ!
ついでにいま抱いてくれている乳母と世話してくれている数人のメイドさんしか毎日会わないんだよ!
父親も母親も何日か毎にしか会えなくて二時間くらいでさっさと帰るんだよ!
ヒマなんだよ!
乳母とメイドさんのガードが完璧で、ちっとも目を離してくれないんだよ!
あー、早くハイハイしてえ。動き回りてえ。
動きまくって、自分の能力を早く確認してえ。
あ……!
そうだよ! アレをまず試さないと。
馬鹿か、俺は。
そう、嬉し恥ずかしステータスだ。
能力や素質がわかってしまう優れもの、ステータスさんですよ!
ふふふ、早速やってやるぜ、
「うえーあうおーうぅん(ステータスオープン)!」
……何もでねぇ。あれー? 言葉か?
ちゃんと発音しねーとダメなのか?
赤ん坊じゃダメだって言うのかよお!
念じてみても、言葉を変えてもダメだった。
くそう、言葉を話せるようになったら再チャレンジだ!
異世界じゃないかもなんて思わないぞ。
ステータスがダメならアレだ。
魔法だ。
魔法とかあるなら、使ってみたい。
いや、魔法はきっとある!
信じてる!
だが、呪文とかわかんねーしな。この世界の魔法体系もわからない。
こういう時は、アレだろう。
そう、魔力アップだ。
今から鍛えて常人よりはるかに多い魔力量でチート間違いなしの人生を送るぜ!
ええと、確か、Web小説では臍だとか、丹田だとかに魔力がどうのこうのって……丹田ってドコだよ?
とにかく、集中だ、集中。
魔力が身体中を流れるイメージをすればいいとかなんとか……
目を瞑って、深呼吸して、よし、やるぞ!
……。
…………。
………………。
……………………スヤァ……
「あら、坊っちゃま、おねむですか? いつもより早いですねぇ」