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14 ズルは俺

14 ズルは俺


 俺の従者はやりたくなくて、やる気がないのかな? と、ちょっと心配に見ていると、リチャードは、はっと何かに気づくと、急に顔を真っ赤にして、


「す、すみま、じゃない、も、申し訳ありません、テオドールたまっ、さまっ、わ、わたちっ、わたしはっ、そのっ……その……あの……」


 慌てたかと思ったら、声が段々萎んでいく。

 緊張して、あがってしまったのかな? 泣きそうな顔になってるよ。

 ひょっとして突然従者の仕事をしろって言い渡されて、戸惑っているのかも。まだ子供だもんな。遊びたい年頃だろうに、俺の為に厄介な仕事を押し付けられて大変だな。


「ええと、私の従者が嫌なら、言ってくれていいよ? 誰も怒らないから。まだお仕事するのは早いもんね。私もお仕事するのは嫌だし」


 すると、リチャードは顔を真っ青にした。

 ええっ!? 何、何がどうした!?


「わ、わたしは、テオドール様の、お、お眼鏡に、かなっ、叶い、ませんで、したでしょうか……? や、やっぱ、僕みたいな落ちこぼれは、ダメなんだ……ひっく……」


 ぼろぼろ涙を流して、自分はできない子だと責めはじめた。


「いやいやいや、誰もそんな事言ってないよ!? ただ、俺なんかの従者になるのは嫌なのかな~って、ちょっと、泣くなよ、泣かないで! ち、父上、どうなって……って、何、笑ってるんですか!?」


 父上に助けを求めると、くすくす笑ってる。母上もだ。ちょっと、笑ってないで、何とかしてよ!


「いや、君の慌てる顔なんて初めて見たからね。いやあ、可愛いな。いつも澄ました顔しか見てなかったから、新鮮だよ。君もそんな風に慌てる事もあるんだね」


 ちょっ、親父! 何、人が慌ててるのを見て喜んでんだ、今は親馬鹿してる場合じゃないだろ!

 ああああ、お願いだから、わんわん号泣すんな! 赤ん坊ならともかく、ガキのあやし方なんて知らねー!


「あああ、もう、泣くな! 俺の従者なんだろ! だったら、こんな事で泣かないでくれ!」


「うわぁあああああん!」


 俺が叫ぶと、ウェンディが泣き叫んだ。起きたみたいだ。


「ああ、もう、お前が泣くから、ウェンディが起きちゃったじゃねーか! ウェンディ、ごめんな、大きな声出して。お兄様が悪かった。ほら、お前も謝れ!」


「ううっ、ぐすっ、う、ウェンディお嬢様、ぼうじわげありまぜんー!」


「わぁああああん!」


 カオスだ。

 慌てる俺に、泣きながら謝るリチャード、泣きわめくウェンディ。なのに、父上と母上は笑っている。


 結局、母上の侍女のマリアが飛んできて、父上と母上と一緒にウェンディを落ち着かせ、マーサがリチャードを落ち着かせて別室に連れて行ってようやく混乱が落ち着いた。



 ◇



「申し訳ございませんでした!」


 スライディング土下座する勢いで、セバスが謝っていた。

 リチャードの醜態は自分の責任であり、責は自分が負うと言い張っている。


「いや、そんな事聞いてなくて、どうしてリチャードがあれだけ自分を責めているのか、理由を知りたいんだ」


 俺は父上に頼んで、セバスに会いに来ていた。会った瞬間、謝り倒すセバスはなかなか理由を話してくれなかったけれど、しつこく聞いてみると、どうやら、俺が原因らしい。


 リチャードは元々、俺の従者として育てる予定だったそうだ。

 年齢が一番近く、セバスのひ孫でもあるから。

 けれど、ひとつ年上で先に勉強していたにもかかわらず、俺が勉強を始めればすぐに追い抜いてしまったり、礼儀作法でも、何回も練習してモノにしたものを、俺が一、二回でモノにしてしまったりして、いつも比べられていたらしい。

 坊っちゃまはできたのだから、従者のお前はもっと頑張らなくてはならない、と。


 そりゃ、嫌になるよ。

 最初にやる気がみられなかったのは当たり前だ。

 俺だったら、すぐに放り出している。


 はあ、チートなんてないと思ってたけど、子供にしたら、チートそのものだよな。

 そのうち大きくなったら平凡になるから、気にしなくていいのに。

 でも、そんな事、今のリチャードにはわからない。

 俺みたいなズルをしたヤツと比べられて、辛かっただろう。


「父上、リチャードと話して来ます」


「うん、行っておいで」


読んでくださってありがとうございます。


ブクマありがとうございます。

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