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10 結果はシークレット

10 結果はシークレット


「な、なな……」


「ああ、いまのかぜがおこったげんいんをおさえたんだよ。じゃましてごめんね。つづきをどうぞ」


 狼狽えているオバサンに、続きを促してみる。

 これでまだ芝居を続けるなら大したモノだけど。


「どうしたの、オバサン? おれからあくりょうをはらうんだよね?」


 冷や汗をだらだら流しているオバサンは答えない。

 もう、いいかな。


「ちちうえ。わたしはおなかがすきました。ははうえを、ウチのちゅうしょくに、しょうたいしてよろしいですか? よろしければ、ちちうえもいらしてください」


「おや、もうそんな時間かい? 長く付き合わせて悪かったね。セリーナ、息子の初めての招待だ。せっかくだからご招待に与るといい。私は後で――そうだな、夕食にお邪魔させてもらおうと思うんだけど、それでいいかな?」


 父上が話しを合わせてくれる。うん、通じたみたいだ。


「わかりました。では、あとで」


「ああ、ケヴィンを貸してくれるかな? ちょっと手伝って欲しいんだ」


 えーと、極力外部に知られないよう、ここにいた者達だけで収めたいのか。了解。


「ケヴィン、よろしくね」


「はいはい、わかりましたよ。他ならぬ坊ちゃんの頼みですからね」


 ケヴィンは楽しそうだ。


「じゃあ、いきましょう、ははうえ。ははうえのじじょたちは、ちちうえのようじがすんでから、きてくださいね。マーサがいるので、だいじょうぶですから」


 そう言って、母上の手を引いて、部屋を出る。


「え? テオドール? オーウェン?」


「ゆっくりしておいで、セリーナ。私も後で必ず行くから。久しぶりにみんなで食事をしよう」


 困惑する母上を連れて、さっさと玄関へ向かう。玄関にはすでにウチの馬車が待っていた。さすがセバス、仕事が早い。

 母上を馬車に押し込み、俺とマーサが乗り込むと、すぐに出発した。

 護衛は三人。一人は先にウチへ伝達に走ったようだ。



 ◇



「あの、テオドール? 母には何がなんだかわからないのだけれど、いったいどういう事なのかしら?」


 馬車の中、ようやく事態を把握し出した母上が尋ねた。


「ええと、わたしのやかたでおしょくじかいをするのです。それよりははうえ」


 先に気になってた事を聞きたい。


「あかちゃんができたけど、いなくなったのですよね? おいしゃさまには、みていただきましたか?」


 本当に妊娠して流産したのならちゃんと医者に診てもらうべきだ。ひょっとしたらあのオバサンと侍女がいた環境では医者も呼んでないんじゃないか。


「お医者様に……? でも妊娠は産婆がいれば充分だって……」


「奥様。発言をお許しください。テオドール様の時にも、お医者様に診て頂いたあと、産婆も含めて、皆、総出で出産に臨みましたよ。今回のお話は私達には何も知らされておりませんでした。ご懐妊のお話も、流産のお話も。奥様、今回はどなたからお話を聞かれたのでしょう?」


 マーサ、ナイスフォロー!

 そこなんだよな。おめでたい懐妊の報せが俺まで届いていないってのがおかしいんだ。


「ターラと、ミラから……」


「ミラというのは、先ほど風の魔導具を用いた侍女ですね」


「ええ、そう。……私、愚かだったわね。ごめんなさい、テオドール」


「ははうえ……」


 何も言わず、静かに泣く母上をぎゅっと抱きしめた。

 きっと自分を責めてるから。

 騙した方が悪いんだから、気に病まないでほしい。


 騙されたって事だけ自覚してくれればそれで充分。

 それだけで周りは動けるんだから。

 後は父上が全部してくれる。



 ◇



 お昼ご飯は母上と二人で食べた。

 給仕してくれた人の中にマーサはいなかったから、さっきの馬車内での話を父上に報告しに行ったのだろう。


 午後はリバーシをして遊んだ。母上は弱かったので勝ちまくりだ。

 ずっと負けっぱなしだったから、嬉しかったけど、母上が拗ねたので、最終的には負けてあげた。


 いつものお昼寝の時間になったので、母上と寝たいって駄々をこねてみた。なんか母上も最近寝てなさそうだったし。少しくらい役得あってもいいだろー。

 うん、母上の胸はふかふかでした。


 お昼寝から起きた時にはマーサは帰ってきていて、おやつを食べた。

 それからお勉強の成果を少し見せて、夕飯だ。


 その頃には、父上もケヴィンも一緒に来ていた。

 夕食時には他愛ない話をして、オバサンの話は一切しなかった。

 ただ、もう安心していいとだけ言われた。


 夕食後にも、今度は父上とリバーシをした。

 父上はケヴィンと違って大人なので、ちゃんと負けてくれた。うん、わかりやすすぎて逆にヘコむ。


 夜も父上と母上の三人で寝たいと駄々をこねた。

 だって父上もお疲れだったしな。

 幼児の笑顔と寝顔って、気持ちがささくれ立っている時すげーよく効くんだ。

 俺も甥っ子に癒された事は何度もある。

 天使()の寝顔で癒してやんぜー。


 翌日、二人とも元気になってた。よかった。


 父上はすでに医者の手配もしていて、午後には母上の検診があった。

 やっぱり懐妊してたというのは嘘だったようで、ただ体調が悪くて月経が不順になったところをつけ入れられたようだ。

 母上は涙を流して喜んだと同時に、騙されていた事を悔やんで、父上と俺に迷惑かけたって謝りまくった。なので父上と二人で母上を慰めた。家族なんだから迷惑かけてかけられては当たり前なので、気にしないよう、言い含めるのは大変だったけれど。


 この日の後も、母上は父上の勧めで俺の館で生活するようになった。侍女も父上が厳選したであろう人達で、俺に遠慮して少数だ。

 多分、母上の館の掃除をするんだろう。人も含めて。


 父上もほとんどここに帰って来るようになった。

 朝、みんなで食事をして、本館へ出勤して、夕飯には帰って来るという生活。

 ダメージは思ってたより相当大きかったようだ。


 俺は楽しいからいいけどね。

 父上も母上も見る間に元気になったし。

 一週間後には二人ともツヤツヤしてたよ。

 弟か妹ができるのはそう遠い先の話じゃない。




 くそう、俺だって可愛い娘見つけてやるんだからな!

 そんでもって、あんなことやこんなこといっぱいしてやる!


読んでくださってありがとうございます。

ブクマありがとうございます。

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