1 告白は斜め上
1.
「ゴメンなさい。その、手紙くれたのは嬉しいんだけど、友達だと思っていたから……付き合うってのはちょっと……」
こうして俺はフラれてしまった。
告白すらしていないのにだ。
もちろん、手紙なんてものにも覚えがない。
いきなり放課後に呼び出しを受け、脈があるかも!? なんて喜んでついて行ったら、校舎裏に着いたとたんこれだった。
あの、ちょっとワケガワカラナインデスガ。
同じクラスになったこともなく、見かけたことがあるなぁ、程度の顔見知り。確かに可愛い部類に入るが、中の上くらいだから、そんなに意識したこともない。
そんなほぼ初対面の人に突然呼び出されてフラれるってドウイウコトデスカ。
なのにその女子はモジモジとしてから、
「そういう訳だからゴメンね! 御手洗!」
と、言い捨てて走り去ってしまった。
ふ……なるほど、そういう事か……
「俺の名前は、小金井だ、バカ女ぁぁあ!!」
最後の『い』しか合ってねえ!
どんな勘違いしたらこんな人違いなんかできるんだ!
さてはあの女自身、御手洗ってヤツの顔知らねぇだろ!
こうして俺の初めての告白イベントは、他人に間違えられるという、実に悲惨なものだった。
くそう、絶対にあんなバカ女よりもっといい女と付き合ってやる!
そう心に誓ったその日の帰宅途中、俺は暴走車に跳ねられた。
◆
――どこだここは?
目を開けたつもりだったが、ぼやけて何も見えなかった。耳も聞こえない。おまけに手足も思うように動いてくれない。
事故で半身不随にでもなったか……? それとも死んでしまったのか?
じわじわと不安が心に広がっていく。ヤベ、泣けてきた。
堪えることができなくなって、大声で泣き喚いてしまった。俺ってこんなに堪え性がなかったか?
なんだろう、近くで赤ん坊の泣き声も聞こえる。俺が泣かしてしまったのだろうか。ゴメン。でも俺もマジ泣きなんだよ。
泣いていると、ふわりと暖かいものに包まれた。
背中をさすられ、慰められる。うん、だいぶ落ち着いてきた。誰かは知らないけれど、ありがとうございます。
落ち着いてくると、なんだか眠くなってきた。暖かいものに包まれたまま、睡魔に抗うことができずに意識は遠のいていった。
転生したとわかったのは目が見えるようになってからだった。