3.やだ、やだ、やだ、やだ。さあ、牢屋へゆこう。
No, no, no, no!
Come, let's away to prison.
――
わたしの拒否の返答に、男爵さまは持っていたグラスをテーブルに力いっぱい叩きつけました。グラスは粉々にこわれて、中のカクテルは床にこぼれてしまいました。
『ここまで強情ならば、仕方ない。おーい、アルフレッド』
『はい、ご主人さま。何事で?』
『この小生意気な娘を、地下牢に閉じ込めてしまえ!』
『分かりました』
信じられない素早さで、アルフレッドがとび込んできました。彼は、わたしの口もとに布を押し当ててきて、わたしの口はふさがれてしまいました。布にはなにか甘い匂いがしみこんでいて、それを吸ったとたん、わたしの意識はとおのいていきました。
気がつくと、わたしは地下牢に閉じ込められていました。
ぼんやりとしていた視界が、徐々にはっきりと見えてきました。
格子の向こうにポツンとランプのあかりが見えます。
だれかが椅子に座って、こっちをじっと見つめているみたいです。
『あなた、誰?』
思わず声を出して、わたしは相手の名前をたずねました。
『俺かい? 俺さまは、このお屋敷の衛士、レックスだ。ご主人さまの命令で、お前を見張っている』
やせ気味で、ひ弱そうに肩をすくめた男が、にやにやしながら、こちらに向かって返事をしました。
『つまり、牢屋の番人さんなのね?』
『番人じゃねえよ。衛士だ。
お嬢ちゃん、呼び方にはくれぐれも気をつけるこったな。そんなんじゃ、命がいくつあっても足りねえぜ』
『それじゃあ、衛生士さん。お願いだから、わたしを牢屋から出してくれない?』
『あのなあ、衛生士じゃなくて、衛士だ。鵺鳥邸の警備を担当する、由緒正しき仕事なんだよ。
それにさ、せっかく捕えた獲物を、簡単に逃がすわけがねえじゃんか?』
『獲物……?』
『おおっと。俺さまとしたことが。おしゃべりは禁物だ』
牢に閉じ込められたわたしの前には、番人のレックスがいます。
Q9 さあ、あなたはどうする?
1.主人について訊ねる。
2.牢から出してくれないか、頼んでみる。
3.このような仕打ちをする目的を訊ねる。
――
「どれもしてみたいよね」
「そうですね。どうします?」
「順番に行ってみよっか」
私たちは、Q9に対して、1を選んだ。
――
『男爵さまって、どんなお方なの?』
『ご主人さまは、俺たちの頂点に君臨される偉大なるお方だ』
牢に閉じ込められたわたしの前には、番人のレックスがいます。
Q9 さあ、あなたはどうする?
2.牢から出してくれないか、頼んでみる。
3.このような仕打ちをする目的を訊ねる。
――
「次は2を行くよ」
私たちは、Q9に対して、2を選んだ。
――
『ねえ。お願いだから、ここから出してもらえないかしら? わたしは弟のアリエルをさがしているのよ』
『ふふふっ。そいつは無理なおねがいだな。もっとも、俺さまに牢を開けることなど、実は、できはしないのだけどね。おおっと、またまた、しゃべり過ぎちまったかな?』
牢に閉じ込められたわたしの前には、番人のレックスがいます。
Q9 さあ、あなたはどうする?
3.このような仕打ちをする目的を訊ねる。
――
「残りはこれしかないね……」
私がチイに確認すると、チイもこくりとうなずいた。
私たちは、Q9に対して、3を選んだ。
――
『決まっているじゃねえか。お前さんは、ご主人さまの餌となるんだ。
実をいうとな、ご主人さまは、偉大なる人狼閣下なんだよ』
人狼閣下――、どういうことかしら……? そうだ、アリエルのことを訊かなくちゃ。
『わたしの弟は?』
『弟だって? さあね、そいつは知らねえな』
どうやら相手にならないみたいです。わたしが話すのをやめると、レックスは逆につまらなそうにしていましたが、しばらくすると大いびきをかいて寝込んでしまいました。
Q10 さあ、あなたはどうする?
1.ここはじっとおとなしくしている。
2.牢屋の脱出を試みる。
――
「えっ、なになに、この質問? 答えは自明なんだけど……?」
「どっちなんですか?」
「決まってるじゃん。2の『脱出を試みる』だよ。このまま無抵抗なんてあり得ないでしょ」
「そうですよねえ。どう考えても、この手のゲームなら、みんなそっちを選びますよねえ」
「えっ、チイちゃん。なにか気になることでもあるの?」
「いえ――。なんで、こんな質問なのかなあって、ちょっと……。
あっ、気にしないでください」
「うん。じゃあ、2で決まりだね」
「はい」
私たちは、Q10に対して、2を選んだ。
――
衛士レックスが居眠りをしたすきを盗んで、わたしは牢屋からの脱出をこころみましたが、鉄格子はとても頑丈で、どの行為もむなしく失敗に終わりました。
ああ、わたしはここから一生出られないのかもしれません。弟のアリエルもゆくえ知れずだし。こんなおそろしい屋敷になんて来なければよかったと、いまさらになって後悔をしたのですが、それもあとのまつりです。
ゲームエンドです。お疲れさまでした。
――